ハンターが大任町と田川市に行った情報公開請求の内容が、武田良太元総務大臣の事務所に漏れていたことが、裁判によって認定された。法廷で武田氏の秘書S氏は「情報公開請求をかけるということを、事前にハンターの記者から聞いていた。大任町や田川市から聞いたのではない」という趣旨の証言をしたが、裁判長の目は節穴ではなかった。ハンターの代理人弁護士による追及に苦しい言い訳を繰り返していたS秘書に、裁判長が止めを指す格好となる。
■秘書の証言、裁判長が否定
6月30日に福岡地裁の法廷で行われた裁判長とS秘書のやり取りを以下に示す。
裁判長:裁判長の方から何点かお尋ねします。いま、あなたはお仕事、何をされてますか?
S秘書:武田良太の秘書です。裁判長:あなたが先ほど聞かされた録音データなんだけど、あなたと中願寺さんのやり取りだというお話なんです。あまり記憶にないのかもしれないけれども、結局ね、先ほどあなたのお話だと、この電話より以前にまず“情報公開請求をするよ”ということを中願寺さんから聞いたと。それから、その後“したよ”ということも中願寺さんから聞いたということなんですかね?
S秘書:そうですね、結果的には電話のやり取りで、はい。裁判長:その本件、この電話ではなくて、その前の電話で知ったということなんですかね?
S秘書:情報公開請求をするというのはですね、はい。裁判長:“する”というの、“した”というのは、この電話で知ったの。
S秘書:その後の電話だったと思います。“する”というのは、その電話で聞いてますけども、その後の電話で“した”ということを知ったということですかね。裁判長:あなたの記憶なんですかね。
S秘書:はい。裁判長:ただね、この録音を聞いてるとね、そういうふうによめないんですよね。
S秘書:ん?裁判長:例えばね、あなたのほうで『大任町とかに情報開示請求をしてます?』と聞いてるんですよ、この電話で。先ほど(法廷で)聞かれた電話で。それで(中願寺が)「してます」と。『田川市と』と、もう一回あなたが聞いて、「してます、昨日しました」と(中願寺が)言ってる。ここで確認したんじゃないの、したということを。
S秘書:はい。
S秘書の“情報公開請求をやると、事前にハンターから聞いていた”という趣旨の証言について、裁判長は「この録音を聞いてるとね、そういうふうによめないんですよね」と指摘。「あなたのほうで『大任町とかに情報開示請求をしてます?』と聞いてるんですよ」「ここで確認したんじゃないの」と突き放した。大任、田川両自治体の「負け」が決まった瞬間だった。
このあと、裁判所側と大任町の代理人が別室で協議。そのあと呼ばれたハンターの記者と代理人は、裁判長から「大任町の代理人は(和解に向けて)検討させてもらいたいと言っている」との説明を受け、条件が整えば同意する旨を伝えた。大任町側の弱気は意外だったが、最終的に7月14日にハンター、大任町、田川市の意思確認が行われ、3者が和解案に合意。8月7日に正式な和解となった。ハンターは以下の二つの理由で金銭の請求を放棄している。
1 訴訟提起は、大任町と田川市に、情報漏洩があったことを認めさせるのが目的。《被告(*大任町と田川市)らは 、原告(ハンターの記者)に対し、原告が被告大任町及び被告田川市に情報公開請求をした事実が、原告ではなく被告大任町又は被告田川市から本件で問題となっている第三者(*武田氏側)に伝わった可能性が否定できないことを認める》という和解の内容によって、その目的が達成された。
2 情報公開制度の所管庁である総務省の大臣の事務所が、請求自体をなかったことにするよう圧力をかけたという事実は極めて重く、制度の否定につながりかねない。武田事務所の秘書がハンターの記者に電話をかけたことを認め、関与が証明されたことで警鐘を鳴らすことができた。
■絞られた大任町の漏洩実行者
残されたのは「だれが情報を漏らしたのか」という疑問だ。武田事務所側にハンターの情報公開請求について漏らした人間がいるのは事実。この点について、真相究明を行う義務があるはずの両自治体議会の対応はまったく違うものになっている。
田川市議会では、一部会派が百条委員会を設置すべきと主張しており、二場公人前市長時代に起きた事件の真相究明が進む可能性がある。しかし、現職10人中9人が永原町長派という構成の大任町議会は、相変わらずの機能不全。松下太町議会議長は、宮地篤町議が通告した“情報漏洩”と“町長選における永原派の買収事件”に関する質問(*下が、却下された宮地議員の質問通告書)を、「終わったことだ」などと断定し、却下したという。大任町議会は、町の信頼を失わせた「情報漏洩」や「現金買収」という違法行為について、議論する意思さえないということだ。しかし永原町長は、情報漏洩と買収事件の両方について説明責任を負っている人物。議会の場で明確な答弁を行わせるべきだろう。
全国どこに行っても、自治体や首長の疑惑について議論することを止めるような議会はあるまい。議会での議論を封じるということは、議会制民主主義の否定。それが理解できていない大任町議会の議員たちに、税金を原資とする給料をもらう資格はない。
こうまでして永原派が避けたいのは、議会での議論を通じて、情報漏洩や買収事件が蒸し返されること。町の失政や自身の不適切行為が表面化するのを極端に嫌う永原町長の意向が働いている可能性が高く、これまでも、そうした質問は議長によってことごとく却下されてきた。今回、永原派が情報漏洩に関する質疑を嫌がったのは、“大任町の誰が漏らしたのか?”という疑問に対する答えが、一定程度出ているからに他ならない。
情報漏洩について否定してきた永原氏は、地元テレビ局の取材に「ハンターが情報公開したことを知っているのは自分と総務課の職員の2人だけ。職員は漏洩を否定している。自分は特別職なので守秘義務違反には問われないらしい」といった発言をしており、その時の映像もニュースで流れている。つまり、職員がシロなら、永原氏以外に情報を漏らす人間はいなかったということだ。
一方、法廷で武田氏の秘書S氏は、「情報公開請求のことは事前にハンターの記者から聞かされていた」と主張したが、これは報じてきた通り裁判所からも否定された。その結果が《被告らは 、原告に対し、原告が被告大任町及び被告田川市に情報公開請求をした事実が、原告ではなく被告大任町又は被告田川市から本件で問題となっている第三者に伝わった可能性が否定できないことを認める》という和解内容だ。大任町の誰かが情報を漏らしたということは、裁判所も認めた事実。ならば、永原町長と総務課の職員に問い質すのが議会の努めだろう。永原町長自身が、情報を漏らす立場にいた関係者を自分と総務課の職員に絞っているのだから、話を詰めるのは簡単なはずだ。
ここで整理しておくが、ハンターの開示請求に関する情報が武田氏側に漏れたルートは、以下の三つに限定される。
・大任町から武田事務所
・田川市から武田事務所
・大任町か田川市のいずれかが相手方自治体に情報を伝え、まとめてどちらかの自治体から武田事務所
いずれのケースであっても、両自治体から情報が洩れなければ、武田事務所の秘書によるハンターへの「なかったことに」という圧力は不可能だ。「うちから漏れたんではない」という言い訳が通用しなくなったということを、大任・田川の両自治体、特に大任町の関係者はしっかりと認識するべきだろう。
漏洩があった2021年、大任町のトップは永原氏。田川市の市長は永原氏の義弟でもある二場公人氏だった。両自治体に、大臣の事務所を動かしてまで隠さなければならないものがあったことは、「非開示」あるいは「一部開示」という形で数々の隠ぺいが行われたことが証明している。
(中願寺純則)















