猟銃所持許可訴訟、謝罪から逃げた敗訴の北海道公安委員会|ヒグマ駆除の1挺は未返還

すでに複数の報道大手が繰り返し伝えている通り、北海道・砂川市で起きたヒグマ駆除をめぐる裁判で3月下旬、最高裁判所が「破棄自判」の結論に到り、駆除を担ったハンターの猟銃所持許可を取り消した公安委員会の処分を違法とする判決が確定した(⇒こちら)。同判決を受け、北海道公安委は地元警察を通じて押収した銃の返還をハンターへ申し出たが、ハンター側は機械的な返還を拒み、改めて公的な場での謝罪を要求。これを受けた公安委は4月上旬、道警に代読させるという無責任な形で謝罪したが、肝心の1挺は未返却。公安委員らは最後まで謝罪の場に姿を見せなかった。

■憤り隠せぬ池上さん

8年越しの猟銃返還・謝罪が実現したのは4月9日午前。裁判を起こした池上治男さん(77)の自宅=砂川市=を北海道警察の保安課長が訪ね、立ち会った報道陣を前に池上さんへ頭を下げて謝罪の辞を述べた(以下に全文)。

「北海道公安委員会といたしましてはですね、今回の最高裁判決を重く受け止めております。池上様にご不便・ご負担をおかけしたことに対し、深くお詫び申し上げます。今回の最高裁の判決の内容を精査し、適正な行政処分の実施に努めて参ります。市町村や猟友会と連携しながら引き続きヒグマ対策に適切に対応し、道民の安全・安心な暮らしを守るよう、北海道警察を指導して参ります。また道警、北海道警察としてもですね、池上様にご不便・ご負担をおかけしたことに対してですね、お詫び申し上げます。本当に申しわけございませんでした。市町村やですね、猟友会と連携しながら、市街地に出没するヒグマ等の被害から道民の安全・安心な暮らしを守れるよう、適切に対応して参りたいと思います。今後も活動を続けていきたいと思いますので、引き続きですね、よろしくお願いします。またあの、池上様はですね、ヒグマ対策のほうでかなり、警察のほうにもご協力いただきました。これからもですね、私たちのわからないところもありますので、ご指導のほうをお願いしたいと考えておりますし、引き続き連携してですね、住民の皆様が安全で安心な暮らしができるようにヒグマ対策を推進していきたいと考えておりますので、今後ともあの、一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします」

この謝罪の直前、池上さんが「公安委員会でなく、代理で来たんですね」と保安課長に確認を求め、同課長が「代理といいますか、公安委員会の事務をやっておりますから……」などと応じる一幕があった。つまり、約7年間にわたってヒグマ駆除の功労者から銃を奪い続け、最高裁判決でその処分の違法性を指弾された道公安委はこの日、1人の委員も謝罪に現われず、猟銃返還の手続きを含めて道警にすべて「丸投げ」したのだった。謝罪後、改めて全国紙記者からこれについて問われた池上さんは、強い口調でこう答えた。

「やっぱり、公安委員会が直接来るのが当たり前だと思うよ。代理の人というか事務方を寄こすっていうのは、ほんとの意味で公安委員会が反省してるとは私は思えないね」

そもそも、「謝罪には応じたが必ずしも謝罪の内容自体を受け入れたわけではない」と池上さん。銃返還が実現するまでの時間を「今になって思えば貴重な7年間だった」としつつ、同時に「時間を返してもらいたい」とも話す。銃が戻った感慨を問われても、喜びの表情を見せることなく「当たり前の状態に戻っただけ」と冷静だ。今後のハンターとしての活動についても「市の意向もあり、ヒグマを銃で駆除することはない」としており、昨年に引き続き箱罠のパトロールを継続していくことになるという。

謝罪後、集まった報道陣が期待していた「銃返還の瞬間」への立ち合いは、銃刀法上の制限を理由に認められなかった。返還後に取材に応じた池上さんによると、戻った銃は法の要件を満たした「ガンロッカー」に格納したという。かねてから「銃はハンターの魂」と話していた池上さんは「地裁判決(公安委処分の撤回命令)に控訴して裁判を長引かせたことを、公安委員会は反省して欲しい」と、改めてこれまでの公安委の姿勢を批判している。

道公安委が池上さんから押収した猟銃は計4挺。うち2挺は裁判の判決前に“返還”されていたが、これは形だけ。銃所持許可取り消しの状態が続いていたため池上さんのもとへは戻らず、民間の銃砲店に保管されていた。今回、公安委が返還したのは、残り2挺のうち1挺。つまり現在なお返還が叶っていない銃がさらに1挺あることになるが、こちらの対応がどうなるのかは現時点であきらかでない。

9日の謝罪時に返還されなかった1挺は、まさに問題とされた駆除行為に使われたライフル銃。銃刀法などの容疑に問われるきっかけとなった重要な証拠品であるのみならず、亡くなったハンター仲間から池上さんが“形見”として譲り受けたという、とりわけ思い入れの深い1挺だ。当然戻ってくると思われた「魂」の返還が完全には叶っていない状況について「とても考えられないこと。公安委はしっかりしてもらいたい」と池上さん。当該銃の行方については現在、代理人が道公安委(道警)へ事実確認中だが、10日夕の時点で明答は得られていない。

池上さんは、『いまだに当該銃が返還されていないことに怒りを覚える。北海道は最高裁の判決をないがしろにしている。当該銃を真っ先に返還するのが私に対する謝罪の最初だ』とコメントしている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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