本サイトで2023年4月に報告した北海道警察の無令状捜査事件で(既報)、不当逮捕などの被害を受けた市民が起こした裁判が3月下旬に判決期日を迎え、裁判所が原告の請求を全面的に退ける判決を言い渡した。
捜査員が当事者を騙して部屋の鍵を借り受けた行為や、裁判所の令状なしに武装警官が窓ガラスを叩き割ってマンション一室に突入した行為、やはり無令状で住人を逮捕した行為など、不適切な強制捜査がことごとくお咎めなしとなった形。訴えを起こした被害者らは判決を不服とし、引き続き上級審で争う意思をあきらかにしている。

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裁判が提起されたのは、3年前の6月。原告の自営業男性(28)はその年の3月末、自宅に突然踏み込んできた武装警官たちに逮捕された。侵入行為、身柄拘束、ともに裁判所の令状を伴わない手続きで、逮捕は「緊急逮捕」の扱い(事後に逮捕状請求)。警察は同居女性(40)を説得して部屋の鍵を借り受け、「室内には決して入らない」との約束を破って侵入行為に及んでいた。

当時の北海道警察・札幌中央警察署が「捜査」していたのは、住人男性が同居女性に暴行をはたらいたという「傷害」事件。だが被害者とされる女性自身は被害を否定し、事件化しないよう警察に強く求めていた。当初、男性の身柄拘束を認めていた裁判所は、のちに女性から直接話を聴くに及んで警察の違法捜査を認めることになり、検察も男性を不起訴処分としている。
当事者の男女が起こした裁判では、被告の道警が請求の棄却を求め、当時の捜査の違法性を否定し続けることに。昨年夏から秋にかけての証人尋問では、出廷した警察官らが反対尋問で答えに窮する場面が一度ならず見られ、客観的には原告側の主張の正当性が強く印象づけられる争いとなった(既報2)。ところが今回の一審判決では住人らの訴えがことごとく退けられる結果となり、捜査機関の言い分を盲目的に信用しがちな司法の悪弊が浮き彫りとなった。
3月27日午前に判決を言い渡した札幌地裁(守山修生裁判長、太田雅之陪席判事、小町勇祈陪席判事)は、警察の言い分に寄り添うかのように男性の傷害疑い行為などを事実認定し、その上で無令状の強制捜査すべてに違法性はなかったと結論づけた。窓ガラスを叩き割っての侵入については、女性の父親が突入を承諾した際に女性自身もとくに異議を述べなかったとし、それをもって「消極的とはいえ原告の承諾に基づいていた」と認定。また緊急逮捕については、男性の暴行がエスカレートして同居女性の生命に危険が及ぶおそれがあったとし、無令状逮捕の判断を「相当である」と評価した。
原告代理人は今回の判決を「結論ありき」と評し、捜査機関の主張を追認するような裁判所の姿勢に強く疑問を呈することになる。
「先に『棄却』の結論があり、それに添うように理由を並べたとしか思えない判決。技術的にはとてもよくできていると思いますが、結果には納得できません」
一方、被告の北海道警察は取材に対し、本部監察官室のコメントとして次のような回答を寄せた。
《当方の主張が認められたものと考えております》
原告代理人らは4月上旬までに当事者2人の意向を確認し、引き続き上級審で不当捜査被害を訴えていくとして札幌高裁へ控訴。問題の捜査で強行突入時に窓ガラスを叩き割られ、さらにそのガラスで怪我を負わされた住人の被害は、3年以上が過ぎた現在も弁済されていない。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















