袴田ひで子さんが札幌で再審法改正訴え「ぜひとも法制審でなく議員立法で」
「国は、人間の1人や2人どうなってもいいと思っているかもしれませんが、それは違う。いつまでもこんなことを続けていないで、再審が決まったら検察は抗告せず、証拠を全部公開して、正々堂々と戦って欲しい」
力強い訴えに、大きな拍手が起こる。北海道内の4弁護士会(札幌、函館、旭川、釧路)を束ねる北海道弁護士会連合会が4月20日から2日間、いわゆる再審関連法を考えるイベントを催し、「袴田事件」で冤罪被害に遭った袴田巖さん(90)の姉・ひで子さん(93)を招いて勉強会を開いた。
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再審法の改正については現在、検察の抗告を認めるか否か、また証拠の全開示を義務づけるか否かで議論が続いており、国の法制審議会があからさまに検察寄りの姿勢を示しているのに対し、与党を含む議員連盟が正反対の、いわば冤罪被害者に寄り添った改正案を主張している。札幌に駈けつけた袴田ひで子さんは改めて議連案によるルール改正の必要性を説き、被害の再発防止を強く訴えた。「巖の死刑判決を聴いた時は周りのみんなが敵に見えた」「2~3年の間はお酒がないと眠れなかった」と当初の判決後の壮絶な日々を振り返ったひで子さんは、同じ冤罪被害の再発防止を求めてこう言葉を継いだ。
「巖だけが助かればいいとは私は思っていません。死刑囚でなくとも、冤罪で苦しんでいる人は今もたくさんいるんです。助かった巖にも、今も拘禁反応がある。国はいつまでこんなことを続け、病人をつくり出そうとするんでしょうか。『巖をもとの身体に戻せ』とは言いません。二度と同じ思いをする人をつくってはいけない、ということです」
再審法の具体的な改正案については、明確に「法制審ではなく、議員連盟の案で進めるべき」と訴えた。

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袴田さんは現在、国などを相手取る国家賠償請求裁判を争っているところ。提訴のきっかけの一つに、再審無罪確定時に検察トップの畝本直美検事総長が発した談話がある(⇒こちら)。検察官控訴を断念しつつ、判決について「到底承服できないもの」とするそのコメントは、あからさまに袴田巖さんを犯人視する物言いといえた。札幌でのイベント後、これについて筆者が改めて問いを向けると、ひで子さんは飽くまで落ち着いた口調でこう話した。
「あの方たちは、ああ言わないことにはしょうがないんですよ。検察の都合。すべて向こうの都合で、ああいう言い方しかできないのだと思います。ただ、巖のことがあって多少は、少しずつは変わってくれている、反省するようになっているんだろうな、とは思います。トップというよりは、現場の警察官・検察官の意識は変わってきていると信じたい」
半世紀以上にわたる闘いを続けた当事者の言葉は重い。対する捜査機関は現在、どういう認識で再審法の問題と向き合っているのか。札幌の催しから1週間ほど溯る4月16日、地元では札幌地方検察庁の新検事正が着任記者会見を開いていた。この席で報道大手が「着任の抱負」や「北海道の魅力」といった問いを加藤匡倫・新検事正に向ける中、記者クラブ非加盟の筆者は再審法について質問、検察の抗告と証拠開示はどうあるべきかと尋ねた。これに対する新検事正の「回答」は、以下の如し。
「我われ検察庁としては法の執行機関であって、法の制度設計に関しては関与する立場にございませんので、そこは差し控えさせていただきます」
袴田ひで子さんの言うように現場の意識が「少しずつ」でも変わっているのであれば、冤罪被害の救済や再発の未然防止にも期待が持てる。大きな被害を蒙った袴田巖さんの拘禁反応は今も続くが、ひで子さんによればまさに「少しずつ」よい方へ向かっているところだという。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















