今月7日、警視庁と熊本県警の合同捜査本部は、熊本県八代市役所の新庁舎建設を巡って疑惑が指摘されていた八代市議など3人をあっせん収賄容疑で逮捕した。捕まったのは、現職市議の成松由紀夫容疑者、建設会社「園川組」社長の園川忠助容疑者、元市議の松浦輝幸容疑者。3人は2016年から21年にかけ、準大手ゼネコンの前田建設工業を中核としたJV(共同企業体)に、八代市役所新庁舎建設の入札条件が有利になるように取り計らい、現金6,000万円を受け取っていた。
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この事件に関しては、すでに八代市議会が百条委員会を設置。真相究明に向けての審議が続いていた。また、YouTubeやSNS上でも成松容疑者のものとされる音声データや「紙爆弾」が拡散され、「Xデー」が近いのではないかと囁かれる状況に。ハンターの記者にも「密談の様子」という音声データが送られてきていた。
逮捕された3人の中で、八代市の幹部に前田建設工業を推すように指示していたのが成松容疑者だ。日大出身の元相撲取りという異色の経歴を持つ成松容疑者は、八代市議として6期。議長経験者でもあり、地元では“ドン”や“影の市長”と呼ばれてきた人物だ。
八代市役所は2016年の熊本地震で被災したことで、新庁舎建設のプロジェクトが実現。地元では復興のシンボル的な位置づけだったが、裏では成松容疑者を巡る疑惑が取り沙汰されていた。
「来るべき時がきた」と話すのは、ある八代市議。19年、前田建設工業などのJVは税抜き118億円(落札率99・9%)で落札。審査は総合評価方式だったが、「前田建設工業しか落札できないような条件がついていた。おかしいなと思ったら、評価案を作成したのが前田建設工業側だという。それを成松容疑者が受け取り市幹部に対して『変更はまかりならぬ』と指示。いわゆる『天の声』が発せられた形だった」(同市議)
「天の声」については、市議会でもさまざまな議論があった。しかし、判然としないことから、25年12月に真相究明のため「新庁舎建設工事に関する調査特別委員会」(百条委員会)が設置され、市議会での追及が続いていた。
先月14日と28日の百条委員会では、新庁舎建設工事の審査、総合評価方式に携わった市職員などが証言に立ち、「前田建設工業は八代市の公共工事に一定期間実績がなかったので外したうえで入札に参加しそうな企業のリストを作成。その時に『前田建設工業がリストに入っていな』と成松市議からその理由を聞かれた。休みの日だったので適当に『抜けてたんでしょうか』とごまかした。入れられない理由があったが、それを伝えたら成松市議にまた恫喝されるかもしれない。以前も恫喝されたので怖い。“めんどくさい、まあいいか”となって、後から言われるのも嫌だったので、前田建設工業が入るようにリストの条件を変更した」などと証言。成松容疑者から「天の声」が発せられていたことを認めた。
別の市職員は「課長補佐から、口頭による指示で総合評価の基準案というのが手渡され、『基準案に沿って、天の声から一言一句変更することなく業務を進めるように』と指示があった」「試算をして特定の業者に有利に働いてるっていうのが分かった時点で、これ何か、公平な競争性の働かない入札案だなっていうことで認識をしました」「不透明な事務をしないといけないっていうことに対する、怒り、葛藤がありました。不正かなと思ったところで、その当時の契約検査課長、課長補佐、先輩職員などにちょっとこの業務に携わりたくないなっていうような発言をしました」と証言している。
百条委員会では、ハンターも入手している音声データについての質問も出た。これに対し、証言した職員は次のように当時の心境を語っている。
「これはもう忘れもしません。ちゃんこ屋、成松議員の実家です。部長から連絡があり、成松市議から話があると呼び出された。お店の方に行きましらそこに部長、次長が既に来店を。成松市議は30分ほど遅れて入ってこられて、対面に座って開口一番『課長、足らんとわい』と――。黙って聞いてたら受注額が足らないと。試しに、“ちょっといくら足らないんですか”と聞いてみたら『10億から11億』と(言われた)。こんな内容が公になれば、これは八代市はひっくり返るんじゃないかと。でも大変なことになるということで恐ろしくなった」
「(それまでの経緯から)市長、副市長の関与は明らかで、上層部がそもそもそこ(新庁舎建設の中心)にいて、副市長、市長と誰に相談をしたらいいか。はっきりものを言う勇気がなかった」
こうしたいくつもの証言が出ている中で、成松容疑者は百条委員会に対して「これは政治テロ。私を貶める人たちが画策しており、事実に基づかない点もある」と反論。八代市議会自民党市議団のXで、《証人と口裏を合わせ、結論ありきで進める運営はもはや犯罪的です。自民党は断固抗議します》と逆ギレしていた。
しかし、その結果が成松容疑者の逮捕という事態。天網恢恢疎にして漏らさずということだ。
なお、贈賄側の前田建設工業は時効成立で立件されない。















