指令センター設計業者選定めぐる疑惑で消防組合副管理者がついた「嘘」|汚れた土着権力(16)

 田川市、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町、大任町の8市町村で構成する「田川地区消防組合」(管理者:永原譲二大任町長)が、『田川地区・中間市消防指令センター新庁舎建設工事』の設計業者選定プロポーザルに参加する業者を推薦するよう各自治体に依頼。その過程で、元田川市副市長で現在は組合No.2の副管理者を務めている松村安洋氏が、市側の業者選考に不当介入していたことが判明した(*既報)。大型公共事業の実施主体が特定の業者を推薦するよう仕向けた形で、意中の設計会社が有利になることを狙った入札妨害の疑いが生じている。

■不当介入、否定した松村氏だが・・・

 ハンターの記者は今月7日、田川地区消防組合の松村副管理者に電話。田川市の設計業者推薦に介入した件について確認を求めた。以下、やり取りの概要だ。

――― 令和6年の6月のことで確認したい。
副管理者:6年の6月?

――― 6月12日に副管理者から田川市の安心安全まちづくり課に電話し、消防指令センターの設計業者の件で話をしているが、記憶にあるか?
副管理者:設計業者?

――― 田川市から設計業者を2社推薦するということになっていたが、この件に関して、こういう業者を推薦するようにと具体的に話した記憶はあるか?
副管理者:いや、それ無いですね。

――― ないか?
副管理者:はい。

――― 実は、副管理者の方から○○課長に電話があったという記録が田川市に残っている。
副管理者:あー、はいはい。○○には何度か電話はしてますけど……。

――― 要するに、業者の推薦についての内容だが。
副管理者:推薦について?

――― どのような業者を推薦するかについて。
副管理者:推薦っていうのはなんですかね、あの、なんの推薦ですか?

――― 田川市の消防組合に加盟している各自治体に、消防指令センターの設計業者を推薦するようにという依頼の件。
副管理者:消防指令センターの?推薦?

――― 設計業者の。
副管理者:設計業者?あの、うちの指令センターですか?設計業者を推薦するように?

――― 正式な依頼文書が残っている。各自治体、田川市をはじめ、消防組合の各自治体に設計業者を推薦するようにと。田川市だけが2社推薦していいという内容。
副管理者:うーん。田川市は推薦なかったんやないですか?

――― いや、あったが1日遅れたことで、認められなかった。
副管理者:あー、はあ、はあ。それは記憶がありますね。

――― その時のこと。
副管理者:推薦せえよってことで。

――― どのような業者を推薦するように話したか、記憶はあるか?
副管理者:あ、それは、そういうことは話していないと思います

――― 話していない?
副管理者:早く(推薦しないと)、その推薦書が間に合わないぞということ――ということやったと思います。

――― 特定の業者とか、あるいは技術者の数とかの設定は?
副管理者:それは、あのそういうことはないと思います

――― ないか?
副管理者:はい、はい。

――― (副管理者のほうから)このような業者を2社推薦するようにとか……。
副管理者:それはない、それはない

――― ないか?
副管理者:たぶん、その、(推薦が)遅れてたんで。早く提出せんと駄目やんかということで。最終的には、駄目やないかということを言った。

――― 確かに1日遅れた。市長の決裁が取れなかったため。
副管理者:はい、はい。それです、そうです。それで思い出しました。

――― 1日遅れたので、それは認められませんよということだった。
副管理者:そうです、そうです。

――― 副管理者のほうから、このような業者を挙げて来いというような電話はしていないか?
副管理者:それはない

――― ないか?
副管理者:それはありませんね

――― そうすると、田川市の記録と矛盾するが。本当に記憶にないか?
副管理者:誰が記録したんですかね、そういうこと私言ってないですよ

――― では、これは否定されるということでよろしいか?
副管理者:はい。

――― そこは否定される?
副管理者:期日のことは言った覚えはありますけど。

――― 期日のことだけは言った覚えがある?
副管理者:はい。

――― どのような業者を挙げろとか、こういうことをしろとか、それやるとおかしな話になる。
副管理者:はい、はい。

――― 言い分が食い違うということになる。
副管理者:はい。

 松村氏は、田川市の担当課長に電話したことは認めたものの、推薦業者の要件については具体的な話をしていないと完全否定。何度も確認したが主張は変わらなかった。しかし、これは「噓」である可能性が高い。

 論より証拠。田川市への情報公開請求で入手した業者推薦についての関連文書『「(仮称)田川地区消防本部消防指令センター新庁舎建設工事設計業務委託に係る業者の推薦について」事務処理の経過』に、松村副管理者から電話があったことと、その内容――《6月12日(水) ・松村副管理者から○○課長に、複数の技術者を有する2者を推薦するよう電話があった。》――が記録されていた(*下がその文書。色付け加工はハンター編集部。松村氏からの電話の内容には赤い矢印とアンダーライン)。松村氏は推薦業者の要件について具体的な指示を行っていたのだ。

 この点について、取材に答えた田川市安心・安全まちづくり課の職員二人は、松村氏から電話があったこと及びその内容が上掲の文書の通りだと明言。さらに細かい内容について聞いたところ、「大きな事業なので、ちゃんとしたところをあげてくるようにとの話だった」と話す。元副市長に遠慮したのか、「業者名」を言われた記憶はないとも言う。しかし、ハンターは、別の複数の関係者から極めて重要な証言を得ている。そのうちの一人がこう話す。

 「(松村副管理者は)間違いなく具体的に2社を名指ししています。その2社を推薦するようにとの指示だったんです。その2社がたまたま市として推薦する予定の業者だった。ところが市長不在で決裁が遅れ、結果的に推薦の期限が切れて失格となったということです。ただし、田川市が推薦予定だった2社は、他の自治体が推薦していたようで、田川市の推薦は必要なかったということではないでしょうか」

 松村氏が特定の業者名をあげたとすれば大問題。そうではなく、記録文書にある「複数の技術者を有する2社」の推薦を指示したとしても問題となることに変わりはない。業者推薦のルールには、そうした要件がないからだ(*下の「実施要領の概要」参照)。わざわざ証拠の残らない形の“口頭”で要件を付け足したとすれば、その意図が問われるのは言うまでもない。次稿で説明するが、他の自治体に同じようなサジェスチョンを行ったとは考えにくい選考結果だからだ。

 そもそも、設計業務の選考方法は“プロポーザル”。提案内容で委託業者が決まるのであって、技術者の数は関係ない。その証拠に、同プロポーザルの評価基準(採点項目)に、技術者の人数や社内体制についての項目は見当たらない(*下が評価基準表)。

 業者選定過程への不当な介入を頑なに否定する松村副管理者だが、取材を通して明らかになったのは、これを覆すいくつもの証拠や証言。組合側が業者をコントロールした結果、各自治体から推薦された5社のうち4社が辞退するという異例の展開をみせたのが、下の結果表だったのではないだろうか。

 さらに、設計業者選定プロポーザルが適正なものだったかどうかについては別の疑問も浮上している。次稿では、新たな疑問点を明らかにしつつ、前述したプロポーザル業者選考過程における松村氏の不自然な動きについても検証する。

(中願寺純則)

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