検察審査会の文書開示、本年も郵送不可 |一部開示も「超のり弁当」維持

 検察の不起訴処分の適正性を審査する検察審査会が情報開示に極めて消極的な姿勢を見せている問題で(既報)、昨年に続いて本年も「郵送開示不可」などのルールが改善されていないことがわかった。一部開示が決まった文書についても、議決の種類や件数などをまったく確認できない「のり弁当」状態の開示が維持され、ほぼすべての活動内容をブラックボックス化する検審の姿勢が改めて浮き彫りとなった。

◆   ◆   ◆

 筆者が地元・北海道の検察審査会に公文書の開示を請求し、行政庁や裁判所などが採用する「郵送による写しの交付」を拒まれることになった顛末は、昨年7月配信の記事で伝えた通り(既報2)。国の行政機関や裁判所、地方自治体、広域事務組合などの公的機関は、遠隔地に居住する国民から公文書の公開を請求された場合、対象文書のコピーを郵送で交付することができる。省庁によっては紙の記録を電子データ化してDVDなどの媒体で提供することも可能で、同様の対応を認めている地方自治体も増えてきた。

 そんな中、検察の処分を監視する重要な役割を負った公的機関たる検察審査会は、文書の写しの郵送交付を頑なに認めず、開示請求人に対し「開示期限内に当該検審事務局を訪ねて自ら文書をコピーする」という対応を強いているのだ。筆者は昨年、これに従って居住地の札幌から数百km離れた函館や釧路、北見などに足を運び、少なくない費用と短かくない時間をかけて墨塗りだらけの数枚の文書を入手する、という不条理を経験することとなった。

 これも既報の通り、筆者は当時の開示文書の「のり弁当」状態に不服を表明し、第三者機関への審査請求(苦情申出)を行なった。だが弁護士などからなる「検察審査会情報公開・個人情報保護審査委員会」は本年2月の答申で検審の墨塗り処理を「妥当」とする答申に到る(既報3)。各審査事件について、検審内部でどういう議論があったのかはもちろん、議決の内容までもが国民の眼から隠される状態に、改めてお墨つきが与えられた形だ。

 この時の審査請求で、筆者は先の「郵送開示不可」ルールについても疑義を呈し、運用の改善を求める「附記」を添えている。だがこれについて審査会は、そのような要望は検審の情報開示に関する苦情にはあたらないとして判断を避けた。

 本年1月、筆者は先の審査会答申を待たず、昨年同様の文書開示請求を北海道内の9カ所の検察審査会に対して行なった。求めたのは昨年と同じく、前年1年間に議決に到った全事件に係る文書。さらに今回は念のため、「とりわけ議決の種類(「不起訴不当」など)や議決の件数を確認できる文書」との断り書きを添えた。これを受理した各庁から最初の決定が届いたのは、2月上旬から同中旬にかけてのこと。9庁のうち2庁が文書不存在で不開示決定に到り(岩見沢、北見)、残る7庁(札幌、小樽、室蘭、函館、旭川、釧路、帯広)が開示期限の延長決定を通知してきた。

 3カ月を経た5月11日、このうち3検審から文書の一部開示決定が届いた(札幌、函館、旭川)。札幌は筆者の居住地で、地元の検審に足を運んで写しの交付を受けることは物理的に難しくない。だがほかの2庁が事務局を構える函館と旭川はいずれも遠隔地と言ってよく、とりわけ函館は日帰りでの往復が困難な距離にある。決定を受け取ったあくる日の12日、筆者は電話で2庁との交渉を試み、郵送開示不可ルールの緩和を申し入れたが、いずれも聴き入れてはもらえなかった。両庁とのやり取りの概要は、以下の如し。

――郵送開示不可は昨年から変わっていないか。
「変わっていない」

――なぜ対応できないのか。
「そもそも郵送を想定していない」

――郵送してはいけない決まりがあるのか。
「そういう決まりはない」

――ならば物理的に可能のはず。現に裁判所はそのように対応できている。
「裁判所と検察審査会とは別の組織である」

――改善を検討してもらいたい。
「そういうお声があるということは承った」

――検討願うにはどこへ申し入れるべきか。
「都度お伺いするしかない」

 郵送対応は、物理的に決して難しくない。開示対象となる文書をコピーして開示請求人に送るだけの手続きだ。それをこうも頑なに拒まれると、理屈抜きに是が非でも国民に不利益を強いるべしという強い意志を感じざるを得ない。

 同じような不条理は、窓口での文書開示に際してもみられている。筆者は今回の決定受理後の12日午後、地元の札幌検察審査会を訪ねて同庁が開示した文書の写しを入手した。その際、検審は筆者を裁判所内の「閲覧・謄写室」へ案内し、同室に備わるコピー機を使って文書を複写するよう促している。ところがそのコピー機はいわゆる「フィーダー」を使うことができず、つまりはコピーの都度コピー機のカバーを開閉して文書を一枚ずつ複写する、という作業を強いられる造りになっていた。開示対象となった文書は163枚あり、筆者はコピー1枚ごとにカバーを開閉する作業を163回繰り返す羽目に。そのためフィーダーのある機種ならば5分ほどで終えられる作業に30分間以上を費やすこととなった。不可解なのは、開示決定を出した検察審査会が自前で事務局に設置している複合機を使わせてもらえないこと。そちらの機械にはフィーダーが備わっているにもかかわらず、使用は認められないのだ。郵送不可を言い募る検審は「裁判所と検察審査会とは別」と嘯きつつ、コピー作業については「別の組織」であるはずの裁判所のコピー機を使わせるのだ。これを不条理と言わずして何というのか。

 そして、肝心の文書開示、否、不開示のていたらく。札幌で開示された163枚の文書はすべて「超のり弁当」とでもいうべき状態に墨塗り処理され、筆者が求めた「議決の種類」及び「議決の件数」のいずれもまったく読み取れなくなっていた。

 今回の文書開示請求について、残るすべての検審からの決定連絡は本稿をまとめている時点で出揃っていない。だが先に採録した函館・旭川との問答から類推する限り、他庁も横並びで郵送開示不可となる結果は目に見えている。開示期限は約1カ月間しか設定されていないため、その間に各地への移動時間と交通費とを捻出できなかった場合は文書の入手を断念せざるを得なくなる。

 理不尽なルールは、一刻も早く改善されなくてはならない。筆者は本年もまた、第三者機関への不服申し立てに臨むことになりそうだ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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