大任町議会が「原本」とは違う議事録を議事録署名人に断りなく作成し、町議や情報公開請求を行ったハンターに改ざんされた文書を開示したことが明らかとなった。公文書偽造及び偽造公文書行使の疑いがある。

■永原町長、議会軽視し質疑削除を要求
偽造されたとみられるのは、2023年12月に開かれた福岡県大任町議会地域振興常任委員会の議事録。この日、ハンターが入札結果表の不開示決定処分を取り消すよう求めた裁判の経過について尋ねた宮地篤議員と永原譲二町長との質疑が紛糾。永原氏は、「宮地議員はなぜ大任町を貶める事しか言わないのか?」、「宮地議員が(裁判のことを)知っているのはおかしい」「ハンターと仲がいいのか?」などと逆ギレし、「(いまの質疑を)議事録から削除できるやろ。その他(の質問)やき、(削除)できるやろ」と発言していた。
大任町が被告になった裁判に関する質問である以上、削除対象になるような内容ではない。議会人なら聞いて当然、首長なら答えて当然の事案だ。しかも裁判は終わっていた。説明責任のある町長が、二元代表者の一方である議会に議事の「削除」を命じるのは筋違いだった。
ちなみに問題の裁判は、同年11月に大任町側が準備書面で不開示処分を撤回し(*下がその準備書面)、事実上の町側敗訴で終わっていた。
永原町長が「削除」と騒いだ常任委員会の直後、宮地議員が受け取った議事録から11ページに渡る裁判に関するやり取りのすべてが横線で示す形で白抜きされたことが発覚。ハンターはこれを悪質な「改ざん」だとして厳しく批判する記事を配信していた(⇒既報)。
■議事録「原本」別にあった!
今回、ハンターとして改めて当該議事録を情報公開請求、白抜き箇所があるなら当然「一部開示決定」となることを見越していたが、送られてきたのは、意外なことに非開示部分がないことを意味する「公文書開示決定通知書」だった(*下がその決定通知)。
少しでも非開示部分があれば、大任町の場合、発出されるのは「公文書部分開示決定通知書」。一例として、同町が昨年10月に発出した書式を下に示しておくが(*赤いアンダーラインはハンター編集部)、今回の「公文書開示決定通知書」は、非開示部分がない時のものだった。

議事録改ざんから2年以上。情報公開請求に対して真正な議事録を開示するものと期待して所定の手続きを終えた。しかし、送られてきたのはかつて宮地議員に渡された「白抜き」と同じもの(*下が白抜きのページ。クリックで拡大)。これは、すべて公開することを意味する処分通知書に合致した開示形態ではない。


ここで問題となるのは、今回開示された議事録が「原本」なのかどうかだ。残されている議事録は、本当に白抜きされているのか?疑問を抱いたハンターが複数の議会関係者に取材したところ、当該議事録には二人の議事録署名人がいたという。その一人である次谷隆澄元副議長に確認を求めた。
次谷氏は、「議事録は白抜きなどない完全なものだった。町長と宮地議員のやりとりは、すべて記載されていた。委員会で町長が削除しろと騒いでいたので、まさかそんなことはできないはずと思い、しっかり読んだ上で署名した」と明言。「原本」は別にあることが判明した。
■「原本開示」拒む町議会が仰天の言い訳 — 識者からも厳しい意見
“原本が別にあるのではないか?なぜ原本を開示しないのか”――記者の質問を受けた議会事務局側は、「完全な形の議事録=原本」が存在することを認めざるを得なかった。しかし、それは開示できないという。「白抜きの議事録しか見せられない」と頑なだ。
そこで、白抜きにした根拠を示すよう求めたところ、数日して引っ張り出してきたのが「大任町議会委員会条例」第20条の『秩序保持に関する措置』という規定。《委員会において地方自治法(昭和22年法律第67号)。大任町議会会議規則又はこの条例に違反し、その他委員会の秩序を乱す委員がある時は、委員長は、これを制止し、又は発言を取り消すことができる。》に該当したため、委員長の指示で白抜きの形で削除したと説明する。

しかし、町が被告となった裁判について宮地議員と町長が交わした質疑は、ごく一般的なもので、同議員が声を荒げたわけでも議場で暴れたわけでもない。永原町長にとって都合の悪い内容だったというだけで、議場の秩序を乱したというのは明らかな“言いがかり”。議会側が苦し紛れにひねり出した屁理屈に過ぎない。
そもそも、白抜きで質疑内容の一部を隠した今回の開示文書は、前述した『部分開示』にあたる。正式には”部分開示決定通知書”の発出が必要だ。だが、重ねて述べるが大任町議会は非開示項目なしを意味する「公文書開示決定通知書」を発出している。すべて開示すると決めた以上、『原本』を出すべきなのだ。
この点について厳しく追及したところ、窮した町議会側はとんでもない主張を持ち出してきた。曰く「議事録は二種類あって、今回の開示分は閲覧用」。つまり完全版の原本と、白抜きによって一部を消された議事録の二種類が「公文書」として存在するというのだ。
余りの幼稚さに呆れるしかないが、この主張は通らない。なぜなら、議事録署名人が署名したのは「原本」の完全版。署名人は、白抜きにした不完全な議事録を認知していないからだ。
ハンターは、署名の有無を確認するため、改めて本件議事録の“議事録署名人の署名が記された文書”を開示請求した。出てきたのは、下のA4文書1枚。セットになっていなければならない議事録原本は開示されなかった――というより、いったん白抜きを開示した手前、原本を出せなくなったというのが正直なところだろう。

議事録署名議員は二人。ひとりが、原本の存在を証言した次谷元副議長である。当然ながら、この署名文書は「原本」と一体で保存されているもの。しかし大任町側は、請求内容が“議事録署名人の署名が記された文書”であって、議事録本体は含まないと判断したと強弁する。
町にとっては、相当に苦しい展開だ。だが、どうあがこうと、議事録署名人が署名したのはすべての質疑が漏れなく記載された「議事録原本」。これを議事録署名人に断りなく改ざんした時点で公文書偽造(刑法155条)、議員や開示請求者に供したことで偽造公文書行使(刑法第158条)が視野に入ることになる。犯罪行為の疑いが極めて濃いということだ。
一連の経緯について、情報公開制度に詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は次のように話している。
「この場合、公文書と呼べるのは議事録署名人が確認して署名した議事録だけ。それが、すべての質疑が記されたものである以上、白抜きの文書は公文書とは言えない。議事録と議事録署名は一体。公文書であるべき議事録が二種類あるというなら、署名人に改めて白抜き議事録を提示し、署名をもらわなければならなかった。だが現実にはそうなっていない。まず言えるのは、公文書の扱いが杜撰過ぎるということ。次に白抜きにした根拠があいまいであること。そして何より問題なのは、議事録署名人に断りなく別の議事録を作成したこと。これは公文書偽造を疑われても仕方がない話だ」
結果的に公文書偽造につながることになった“議事録削除”を、委員会で言い立てたのは永原町長。法律違反を犯してまで町長の言いなりに動いた議会側は、この責任をどう取るつもりだろう。
(中願寺純則)



















