ヒグマ駆除の銃廃棄「適正」と検察が強弁| ハンター側は「同意するわけがない」

銃によるヒグマ駆除行為の違法性を問われて公安委員会に猟銃所持許可を取り消され、これを不服として起こした裁判で全面勝訴したハンターの銃1挺が「廃棄」されていた問題(既報)で5月中旬、地元検察がハンターの代理人に事情を説明する場を設け、改めて「廃棄は適正だった」との見解を明かした。ハンター側は「廃棄に同意した憶えはない」と、当局への不信感を増大させている。

◆   ◆   ◆

5月14日午後に札幌地方検察庁を訪ねて担当者から説明を受けたのは、長く続いた裁判の原告・池上治男さん(77)の代理人を務める中村憲昭弁護士(札幌弁護士会)。同弁護士によると、当初から「『所有権放棄書』に所有者の署名がある」と銃廃棄の正当性を主張していた検察は、この日も改めて「適正な処分だった」と説明、そのころ銃刀法違反などの疑いで事件送致されていた池上さんはすでに問題の銃の所有権を失っていたとした。

問題の1挺が処分されたのは同事件が不起訴処分に終わった後のことで、検察は法務大臣訓令の事務規程(⇒こちら)に従い、すでに「国庫」に帰属していた銃を実際に処分することになったという。

既報の通り、池上さんが地元・砂川市に請われてヒグマを駆除したのは2018年8月。警察はこの翌々月に突如として法令違反の疑いを持ち出して池上さんを在宅捜査、翌19年2月に事件を札幌地検滝川支部に書類送検し、併せて北海道公安委員会に銃所持許可の取り消しを上申する。しかし地検支部は1カ月後の同3月に不起訴処分を決定。この時、池上さんは砂川警察署(のち滝川署と統合)を訪ねて銃の返還を申し入れているが、同署は返還を拒否したという。

さらに1カ月を経た4月には道公安委が銃所持許可取り消し処分を決め、これを不服とした池上さんは同6月に行政不服審査を申し立てることになる(翌20年4月に請求棄却、のち裁判提起へ)。

今回の説明によると、当時の砂川署が池上さんに「所有権放棄書」への署名を促したのは19年1月で、この「放棄書」を根拠に検察が銃を廃棄したのは同年7月のことだった。

奇妙なのは、上述の通り警察が公安委に銃所持許可取り消しを上申したのが「放棄書」作成の翌月だったこと。警察はこの時「4挺」について取り消しを上申しているが、それは捜査着手時に池上さんから押収した銃が4挺あったため。ところがこの時点で、うち1挺は所持許可を取り消す必要がなくなっている。言うまでもなく、問題の「放棄書」が作成されていたためだ。にもかかわらず、警察は「4挺」の取り消しを上申していたのだ。

さらに1カ月後の3月、池上さんが砂川署に出向いて銃返還を申し入れた際、同署はこれを拒んでいるが、この時もすでに1挺の所有権が失われているとの説明は一切なかった。

そして、4月に取り消し処分が決定し、これに対して池上さんが行政不服審査を申し立てたのが6月。この時点で少なくとも、池上さんに押収銃の返還を求める強い意志があることは誰の目にもあきらかだったはずだ。にもかかわらず、それを把握していたはずの検察は翌月の7月に銃を処分してしまった――。

中村弁護士は「書類があるから廃棄していいという問題ではない」と指摘する。

「6月に不服を申し立てているのに、なぜ7月に銃を処分してしまうのか。どういう状況で『放棄書』が作られたのかは知りませんが、少なくとも池上さん自身は『廃棄に同意した記憶はない』と言っています。実際、所持許可取り消しに不服を申し立てているんですから。これだけ処分の正当性を争っている当事者が廃棄に同意などするわけがありません。検察は『本人が「返してくれ」と言ってきたら返していた』と説明しましたが、その『返して欲しい』という意志は行政不服審査申し立てとその後の裁判で充分に示されています」

同弁護士はさらに「そもそも『放棄書』作成の必要などなかった」と指摘する。

「そもそも、なぜハンターに銃の放棄を求める必要があったのか。検察への事件送致時に『短気で傲慢』『再犯のおそれ』など異様な処罰感情に由来する意見を付したこともそうですが、これは単なる警察のいやがらせだったんじゃないかと疑ってしまいます」

検察は今回、問題の「放棄書」について「謄写(コピー)は認められないが、閲覧は本人と代理人に限って認める」との見解を示したといい、中村弁護士は近く現物確認のため改めて札幌地検に赴くことになる。ただ、実際に池上さんの署名などを確認できたとしても廃棄処分への疑義は変わらないとしており、代理人らは現在、新たな裁判の提起も視野に今後の対応について検討を重ねているところだ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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