現職・元職の自衛官ら尋問へ|札幌・陸自パワハラ裁判で原告に追い風

北海道の自衛官が現職の立場で上官らのパワーハラスメントを告発した裁判(既報)で、退職者を含む12人の自衛官の証人尋問を求めていた原告側の請求に対し、裁判所が原告本人を含む計5人の自衛官を証人採用したことがわかった。5月20日に開かれた提訴以来10回目になる口頭弁論で、裁判所の判断が示された。原告側は改めて「法廷で真実があきらかにされることを強く望む」と、今後の審理の行方に期待を寄せている。

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裁判は一昨年6月、北海道内に勤務する50歳代の男性自衛官が提起。職場で見聞きしたパワーハラスメントを内部の相談窓口に匿名通報した原告男性は、当時の組織的な“犯人捜し”により通報者として特定され、「通報というテロ行為をする者は許さない」「反逆行為だ」「謝罪せよ」などの暴言を受けたほか、人事上の不利益な取り扱いなどの被害に遭ったという。裁判は、これらの被害への慰藉料などを国に求めて起こしたもの。原告側の主張を裏づける証拠が多数存在することから、被告の国は当初から被害の多くを事実と認めざるを得なくなり、裁判ではおもに賠償金の額などで争いが続いていた。

提訴3年めを迎えた本年は必要な証拠調べがおおむね終了し、証人尋問へ向けての準備が進んでいたところだった。原告側は先述の通り、前回の弁論までに自衛官12人の尋問を求める意向をあきらかにしており、これを受けた札幌地方裁判所(吉川昌寛裁判長)は最終的に5人(原告本人含む)の採用を決定。国側はこのうち2人の採用に抵抗する姿勢を見せていたが、この主張は退けられる結果となった。原告代理人らは裁判所の判断を高く評価し、「パワハラの震源ともいえる当時の上官らを呼べることになった」と、尋問の意義を改めて確認している。

原告本人を除く証人4人の顔ぶれは、以下の通り(役職や階級は当時)。

M三佐(陸上幕僚監部ワークライフバランス推進企画班)=匿名通報の内容を市ヶ谷から北部方面へ漏洩した人物

О一佐(北部方面混成団長)(現在退官)=いわゆる犯人捜しを指示した人物

W一佐(同 副団長)(現在退官)=通報のきっかけとなったパワハラの加害者

M一佐(同 第1陸曹教育隊長)=ОとMの指示で通報者を特定し、原告男性に「自白」を迫った人物

裁判は8月上旬に設けられる次回弁論を経て、9月中に見込まれる次々回の弁論で証人尋問に到り、年内に結審する可能性が高い。今回の現職・元職らの証人採用を受けて原告の男性自衛官が公表したコメントを、以下に全文採録しておく。

私は現在、防衛省(国)を被告として、札幌地方裁判所において損害賠償請求訴訟を提起しています。本件は、単なる個人的対立ではありません。

私は、陸上自衛隊北部方面混成団第1陸曹教育隊及び混成団本部におけるパワーハラスメントについて通報(相談)を行ないました。しかしその後、私に対して、犯人捜し、威圧的対応、不利益取り扱いを示唆する言動、精神的圧迫が継続的に行なわれました。さらに、指揮官たちより「通報というテロ行為をする者は許せない」と言われました。もしハラスメント相談、内部通報を「テロ」と扱うのであれば、組織の不正やハラスメントを、誰が声を上げて指摘できるのでしょうか。ハラスメント相談窓口は理不尽なハラスメントに本当に困っている職員のため、公益通報制度は本来、組織の健全化と違法行為の是正のために存在しています。しかし現実には通報者が孤立し、監視され、圧力を受けるのであれば、その制度は機能しているとは言えません。

私は、自衛隊という組織を否定する気はありません。むしろ、真面目に勤務している隊員が安心して声をあげられる組織であって欲しいと考えます。本件訴訟は、個人の名誉や感情だけの問題ではなく、「内部通報を行なった隊員が守られるのか」という、自衛隊全体にかかわる問題と考えています。

現在、証人尋問が予定されています。法廷において真実があきらかにされることを、私は強く望みます。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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