田川地区消防指令センター、設計業者選定の過程と結果に大きな矛盾|汚れた土着権力(17)

田川市・郡の8自治体(田川市、川崎町、添田町、赤村、糸田町、福智町、香春町、大任町)で構成する「田川地区消防組合」(管理者:永原譲二大任町長)が整備を進めてきた『田川地区・中間市消防指令センター新庁舎建設工事』の設計業者選定プロポーザルに疑惑が浮上、元田川市副市長で現在は組合No.2の副管理者を務めている松村安洋氏が、市側の設計業者選考に不当介入していたことが判明した(*既報)。松村氏は不当介入の事実そのものを強く否定したが、市側に残された公文書や複数の証言からその主張が「虚偽」であることも証明されている(*既報2)。

大型公共事業の実施主体が特定の業者を推薦するよう仕向けたとすれば、疑われるのは意中の設計会社が有利になることを狙った入札妨害。これまでの取材で、松村氏の行為と業者選定結果に大きな矛盾があることが明らかとなった。

■組合NO.2が業者選考に介入

田川市への情報公開請求で入手した業者推薦についての関連文書『「(仮称)田川地区消防本部消防指令センター新庁舎建設工事設計業務委託に係る業者の推薦について」事務処理の経過』に、松村副管理者から電話があったことと、その内容――《6月12日(水)・松村副管理者から○○課長に、複数の技術者を有する2者を推薦するよう電話があった。》――が記録されていた(*下がその文書。色付け加工はハンター編集部。松村氏からの電話の内容には赤い矢印とアンダーライン)。

ある市関係者は、「(松村副管理者は)間違いなく具体的に2社を名指ししています。その2社を推薦するようにとの指示だったんです。その2社がたまたま市として推薦する予定の業者だった。ところが市長不在で決裁が遅れ、結果的に推薦の期限が切れて失格となったということです。ただし、田川市が推薦予定だった2社は、他の自治体が推薦していたようで、田川市の推薦は必要なかったということではないでしょうか」と振り返る。松村氏は推薦業者の要件について具体的な指示を行っていたということだ。

■矛盾

ハンターが注目したのは、公文書に記されていた「複数の技術者を有する2者を推薦するよう(に)」という松村氏の発言。この点について田川市の担当課は、「大きな事業なので技術者が複数いる『ちゃんとした業者』を推薦するようにという意味だったと思う」と説明する。

文脈からいって、「ちゃんとした業者」の証しとされるのは「複数の技術者」。それが何を指すのか聞いたところ、「一級建築士が複数いる会社」が同市担当課の認識だという。たしかに、田川市が推薦しようとした2社は複数の一級建築士を抱えており、松村氏の指示に合致する体制を整えている設計会社だった。

20億円を軽く超える事業、しかも消防指令センターは通常の建物とはまったくちがう構造だ。一級建築士が一人しかいないような個人商店に近い設計会社に仕事を任せることに、松村氏が不安を覚えたのは当然だったのかもしれない。しかし、それなら自治体への業者推薦要請を発出した段階で要件を明示すべきだった。やはり実際の流れがおかしい。

結論を述べるが、松村氏が消防組合を構成するすべての自治体に同様の指示や連絡を行ったとは思えない。松村氏が各自治体の担当者に「複数の技術者を有する」会社を推薦するよう指示していれば、プロポーザル参加辞退が相次ぎ、最終的に一者応札の形で設計業務を受注した設計業者が推薦されることはなかったとみられるからだ。

設計業務を受託したのは田川郡内に本社を置くA社。同社のホームページに記載のある「設計室」、「本店」、「福岡事務所」をそれぞれ2度ずつ訪ねたが、たまたまだったのかインターホンを押しても反応なし。現在まで、従業員の存在は確認できていない。(*下がA社のホームページの記載)

やむなく、唯一番号が記載されている田川市の設計室に電話したところ、携帯に転送された。応答したのは同社の代表者。一級建築士が何人いるのか確認したところ「私だけですが」。他の従業員については「2級建築士が席だけは置いてます」という回答だった。

ホームページに記されたA社の実績からして、同社の代表が建築士として「ちゃんと」しているのは確かだろう。しかし、松村氏が田川市の担当課に示した「複数の技術者を有する業者」に当てはまる運営実態とは言い難いのが実情だ。松村氏が、A社を推薦した自治体に「複数の技術者を有する業者」を推薦するよう促していれば、一級建築士が代表者1名しかいないA社はプロポーザルに参加する道を閉ざされていた可能性が高い。松村発言とその後の経過・結果が矛盾するということだ。

そもそも、プロポーザルは業者の提案内容がすべて。建築士の数が何人であろうと提案内容がよければ選ばれる。「複数の技術者」という要件は、消防組合が決めたプロポーザル参加要件や自治体の推薦基準にもなく、消防組合のNo.2がわざわざ電話して指示すること自体が異常なのだ。組合幹部が、業者選定過程をコントロールしようと目論んだとみられてもおかしくはない状況だ。

松村氏を巡っては、二場公人前市長時代の副市長として建設工事の入札に深く関与し、入札妨害を行っていたのではないかという疑惑が浮上。市議会に調査特別委員会(百条委員会)が設置され、審議が続けられている。

(中願寺純則)

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