ブロック紙・北海道新聞の男性記者が不同意わいせつ容疑で検察官送致されていたことがわかった。道新は送検後の5月16日に事実関係の一部を報じたが、被害者の女性やわいせつ行為の現場に立ち会っていた男性が自社の記者である事実を伏せ、記事では「知人」などと表現していた(*下の画像参照)。事件は2年前に起きており、加害者の男性記者は懲戒処分を受けることになったが、発生時、処分時ともその経緯は報じられず、今回初めて事案が公にされた。同処分は「停職1日」という不自然に軽い制裁だったが、道新はその処分内容を公表しなかった。

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16日付の道新記事によると、送検された男性記者(49)は2024年7月26日未明、札幌市内の飲食店で「知人女性」に同意を得ることなくキスした。記者らは「別の男性」を含む3人で飲食しており、この男性が席を立った隙に行為があったという。道新は記事の末尾に「経営管理局の話」として社のコメントを掲載。事後の筆者の取材に対しても、同記事をもって社のコメントとすると回答した。以下に全文を採録する。
《社員が書類送検された事実を重く受け止めています。当該事案につきましては、社内の調査を実施し、すでに社内規定に基づいた処分を実施しております。再発防止に向けて社員への啓発を徹底してまいります》
これに「なぜ被害者や読者へのお詫びの言葉がないのか」と疑義を呈するのは、本社に勤務する女性記者の1人。上のコメントは会社としての当事者意識に乏しいとの指摘だ。
「男性社員が女性の人権を侵害した疑いがあかるみになり、会社には雇用者としての責任があるのに、記事で被害者と読者にお詫びしないのはおかしい。『内輪同士だから』と、被害を軽く見ているのではないか」
指摘の通り、事件はいかにも「内輪同士」の出来事だった。記事中の「知人女性」は、本来ならば「後輩の女性記者」あるいは「部下の女性記者」と報じられるべきで、現場に同席していたという「別の男性」も「別の男性記者(47)」と書かれるべきだった。この事実を伏せた理由について、道新は筆者の取材に「個別の質問にはお答えしておりません」と説明を拒んでいる。
取材によれば、不同意わいせつの現場は札幌・ススキノ地区の居酒屋。その夜、店内のカウンター席で杯を傾けていた男性記者2人は、電話で一回り歳下の女性記者を呼び出した。店に駈けつけた女性記者は当時おもに北海道政の取材を担当しており、わいせつの加害者となる男性記者は札幌圏の紙面をまとめる立場だった。直接の上司・部下の関係ではなかったものの、編集局内で顔を合わせる機会はあり、かの男性は若手記者にとって広義の上司だったと言っても誤りではない。電話を受けた女性がその誘いを断ることは難しかったと察せられる。
加害者の男性記者はこの時、かなり酩酊していたという。カウンターでは女性記者と座席が隣り合わせになり、至近距離で話し込むうちに何らかの衝動でわいせつ行為に及ぶことになったようだ。なお先述の道新記事ではもう一人の男性記者が「席を立った隙に」行為があったとされているが、道新関係者への取材によれば実際はその記者は席を立っておらず、わいせつ行為は彼が「眼を離した隙に」行なわれたという。席を立ったのは、被害を受けた女性記者のほうだった。
上司の行為にショックを受けた女性記者は、すぐに席を立って店をあとにした。加害者からはその後、メールないしSNSで謝罪とも弁解ともつかない連絡が送られたとの情報があるが、詳細は確認できていない。当初は問題を大ごとにしたくないと考えていた女性記者だったが、努めて気丈に振る舞う姿から不自然な空気を感じ取った上司が事情を把握するに到り、居酒屋での出来事は上層部の知るところとなった。だが事件3カ月後の24年10月に会社が加害者へ科した処分は、のちの書類送検とはおよそ釣り合わない「停職1日」。加えて、職場で加害者と顔を合わせたくないという被害者の思いがなかなか顧みられず、女性記者は社への不信感を募らせることになる。地元警察への相談を経て、翌25年の初頭には被害届の提出に踏み切った。
そこから1年4カ月ほどを経て、警察がようやく事件の送致を決めたわけだ。送致先の札幌地方検察庁は5月中旬時点で処分をあきらかにしておらず、起訴に到るかどうかは未知数。この間、加害者の男性記者は道央の支局で支局長の職に就き、またわいせつ現場に同席していた「別の」男性記者は編集局の幹部となった。一方の被害者女性は取材の現場から遠ざかることとなり、現在は内勤職に就いているという。道新では近年、別の男性幹部もセクシュアルハラスメント後に幹部に返り咲く人事があり、そのセクハラ被害を受けた女性社員が退職せざるを得なくなるという、大阪地検もかくやの出来事が起きている。また東京支社で同僚女性をしつこく飲食に誘ったという男性記者も処分の対象となったが、同記者は本年になって道東の町で支局長に就いた。
女性社員が被害を受ける不祥事が相継ぐ中、道新は今回の一件を報じる記事で「再発防止」や「社員への啓発」に言及している。これについて具体的な取り組みを尋ねる筆者の問いに、同社は次のように答えた。
《管理職向けの研修などのほか、外部講師を招いてのハラスメント防止の講習などを実施しております》
中堅の男性記者の1人は「今回の不同意わいせつの加害者は、かつて警察幹部とつるんで『道警裏金取材班』を追い落とした、いわば道新を警察に売った連中の覚えがめでたい人物。とんでもないパワハラ・セクハラ体質の社員はまだほかにもいるので、現場は大変だと思う」と、職場の先行きを危ぶんでいる。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















