「維新の内部でも『これってどうなの』という声しきりです。しかし、代表がまったく聞く耳をもたないので仕方ありません。名前は維新でも実質的には吉村党」と苦笑するのは、地域政党「大阪維新の会」所属の大阪市議。
大阪府の吉村洋文知事が、まだ1年も先の大阪府知事選への出馬を表明するとともに、3度目となる大阪都構想の是非を問う住民投票にチャレンジするとぶち上げた。独裁者の暴走が続く。
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吉村氏の意向を受けて、維新が過半数を占める大阪市議会は5月27日、大阪都構想の「設計図」案を作る法定協議会の設置を可決した。来年春の統一地方選と同日の住民投票となることが確実視される。
すでに2度の住民投票で否決されている大阪都構想は、前出の大阪市議が語るように維新内でも評判が悪い政策課題。維新の大阪市議団は、タウンミーティングをスタートさせ準備をしていたが、市議団としては「なんとか吉村知事に思いとどまってもらおうというのが本音だった」(同市議)という。
理由は明確。勝ち目がないからだ。すでに、既成政党などが世論調査を実施しており、ハンターはその数字を入手した。
大阪市内で「賛成」は33%、「反対」は42%、無回答などが22%となっている。この数字は、5月18日に投開票された大阪市西区の市議補選に合わせて実施された調査のもの。政党支持率についても実施されており、これだけは維新支持が41%、自民党支持が18%と大差をつけていた。大阪都構想に関しては結果が逆転した形だ。
ちなみに、大阪市議補選では維新の候補者が9,162票、自民党の候補者が8,999票。163票差という接戦だった。
「自民党と維新の政党支持率の差は顕著で、本当なら維新の圧勝だったはず。午後8時当確かと思っていた。それが夜10時を過ぎても、ほぼ横並び。維新は支持するが、大阪都構想には反対というのが有権者の意思でしょう」(自民党の大阪市議)
すると、この調査結果を受けた吉村知事は「来年春の統一地方選までに、大阪都構想の住民投票が実施されなければ大阪府知事選挙には出馬しない」と言い出した。吉村氏は誰もが認める維新の看板。吉村知事が大阪府知事選に出馬しないとなれば、大阪市議、大阪府議など地方議員は、軒並みバッジを失いかねないという死活問題に直面する。
吉村知事は昨年10月に自民党と連立を組んだ際、「大阪府知事をやめて、国政復帰も考えている」と周囲に打ち明けていたとされ、この発言も波紋を広げていた。前出の維新市議が苦々しげにこう話す。
「大阪市議団が大阪都構想に反対を続けると、吉村知事という看板を失い、大阪における維新がダントツという優位性がなくなってしまう。ましてや、私のような大阪市議は吉村知事人気で当選させてもらっているようなもの。知事の言いなりになるしかなかった。吉村知事は、どうしても副首都法案と大阪都構想を一緒にやりたいという思いなのでしょう」
3度目となる住民投票の背景にあるのは、自民党と連立政権を組んだ維新が画策する「副首都法案」だ。大規模災害などがあった際、東京を中心とする首都機能をバックアップできる都市を整備。それを足掛かりに新しい経済圏を構成し、日本の成長を促すというもの。そこに手を挙げているのが、維新であり、大阪府、大阪市だ。
吉村知事は「大阪は副首都にふさわしい都構想を目指している」と副首都構想と大阪都構想はセットだと主張する。副首都法案は日本全体のことを想定したバックアップ機能を整備するもの。万が一の時に日本が“沈没”しないようにする危機管理だという主張だ。
一方、大阪都構想は、大阪市を廃止して仕組みを変えて大阪府全体を発展させるのが狙い。すると、副首都が絶対的に大阪である必要はない。“副首都になるためには大阪都構想を絶対に実現させなければならない”という前提は成立しないのだ。国と地方を同一レベルで語る吉村知事の主張には大きな問題がある。
また、来年春の統一地方選と同日に大阪都構想の住民投票となった場合、さらに大きな問題が浮上することを忘れてはならない。統一地方選は、当然のことながら公職選挙法に則って実施される。しかし、大阪都構想の住民投票は公職選挙法の規制対象には入らない。
過去2回の住民投票では、投票箱が閉まるまで投票所前で維新陣営と反対する陣営がのぼりや看板を手に「賛成に1票」、「ぜひ反対を」と舌戦を展開。「賛成に入れてくれたら、きっといいことがある」などと維新の大阪市議から「利益誘導」を示唆された大阪市民もいた。それでも選挙ではない住民投票では「違反」とはならないのだ。
前述した世論調査の数字でもわかるように、大阪市だけの住民投票となれば維新は勝てない可能性が高い。そこで吉村氏が打ち出したのが「大阪府域全体で住民投票を」という暴論だ。大阪都構想に関する住民投票は、大阪市を廃止することに関する「賛成」・「反対」を問うもの。大阪市ではない他の自治体の“府民”が大阪市廃止への賛否を示す1票を投じるというのは、どうみても無理筋の考え方だ。都構想に反対してきたある大阪市民は、次のように憤る。
「大阪市民でない人が大阪市を廃止する・しないに口を出すべきではない。大方の大阪府民は大阪市が廃止されようが存続しようが直接関係ないから、『賛成』に入れてくれるだろうというのが吉村知事の読みだそうです。あまりにお粗末。そんな単純なことも吉村知事は理解できていない。ようは勝つためなら手段は選ばないということ。独裁者の暴走ですね」
法定協議会は大阪市議会と大阪府議会の代表者が一体となって設置される。市議会と府議会は、ともに維新が過半数を占めており住民投票の実現は濃厚だ。しかし、独りよがりの吉村流で、本当に大阪都構想が実現するとは思えない。















