「市と業者がプロポーザルを巡って大きなトラブルになっている」――兵庫県芦屋市が一昨年秋に実施した道路・公園維持管理業務のプロポーザルに関する情報提供を受けたハンターの記者は今年3月5日、該当する案件について同市に情報公開請求を行った。市は開示決定期限を2か月も延長、対象文書が示されたのは5月中旬だった。ようやく開示された一連の文書。検証を始めたとたん、疑問点を追及されて後手に回る市の姿勢と、不透明な業者選定過程が明らかになる。
疑惑が持たれているのは「芦屋市道路公園施設包括管理業務」の委託先を決めるために実施されたプロポーザルである。
■公文書毀棄、指摘後に出てきた「手書き個票」
【個票】プロポーザルにおいて、選任された選考委員や評価委員が、評価項目ごとに採点した際の文書。まず手書きで採点する方法が普通で、それを集約して結果を出す。個票が残されていない場合は、審査過程の透明性が担保できない。
最初に引っかかったのは、請求時に求めた審査員(市は「専門委員」と呼称)の「手書き個票」が含まれていなかったこと。市側に手書き個票の存在を確認したが、返って来たのは「本市では、開示した“2次評価シート”を個票と判断しています」という言葉だった。記者は、この段階で“手書きの個票を廃棄しているのなら公文書毀棄の疑いがある”と指摘していた。
手書き個票について何の回答も寄こさない芦屋市。先月19日、記者は抗議のため訪れた市役所で、担当課長らに「(手書き個票を)捨てたのであれば公文書毀棄」と再度告げた。その数日後、市側は「手書きの採点文書」を開示すると言い出す。
手書き個票の存在を認めなかったのに、「公文書毀棄」という指摘を受けたとたん「手書きの採点を開示する」と態度を一変させた芦屋市。不透明なプロポーザルでよくあるパターンだ。
何かあると睨んだ記者が開示された資料を精査するうち、採点された数字を集約して「評価結果」を作成するまでの過程が、まったく見えないことが判明する。疑問点について市に確認したところ、担当課は、業者間の点数差が正確に算出できるようわざわざ従来の総合点算出方法を変えたと言う。しかしその結果、疑念が「疑惑」に変わることになる。
■市が個票だと主張する「2次評価シート」と食い違う評価結果の謎
市がハンターへの情報開示にあたって「個票」の対象文書だとしてきたのは、手書きのものではなく『2次評価シート』という事務方が専門委員の採点結果を一人ずつ整理した文書だ(*下の画像参照)。

この10枚の評価シートから、プロポーザルに参加した二つの事業体(以下、選に漏れた事業体を「A」、業務を受注した事業体を「B」)が提出した、それぞれの企画提案に対する専門委員5名の「2次評価シート」(計10枚)の一部を抜粋して下に示す。注目すべきは、ハンター編集部が赤い〇印で囲んだ各委員による最終評価(2次評価)の合計点数である。
選定から漏れた事業体Aの提案内容に対する各委員の評価点数は、それぞれ81点、83点、86点、78点、88点であることが分かる。合計点は416点だ。

一方、事業体Bへの各委員の評価は82点、86点、89点、83点、92点で合計は432点となる。

採点項目は、他に事業体の実績や社会性を審査する「企業評価」と見積金額という重要かつ分かりやすい「価格評価」。企業評価ではA事業体とB事業体の差が付かず、いずれも「78点」。価格評価では最安金額を提案したA事業体が16点を獲得し、B事業体は5点しか得ていなかった。
総合点はA事業体が416点+78点+16点で510点、B事業体は432点+78点+5点で515点となる計算だ。差はわずかに5点である。項目ごとの評価で、ある専門委員がA事業体のいくつかの提案項目に2点なり3点多く採点していれば、容易に結果は覆る。B事業体の提案項目において、複数個所の数点が低ければ、それもまた結果を変えることとなる。「5点差」はそうした意味を持つ。
ところが、従来方式なら「5点差」だったものが、芦屋市道路公園施設包括管理業務のプロポーザル「評価結果」では、なんと「13点」もの差が付いていた(*下の「評価結果」参照)。
この「評価結果」の中の『提案内容評価』の数字をみると、前掲の2次評価シートで算出されたA、B両事業体の合計点とは少しずつ違うことが分かる。この文書と2次評価シート上の採点結果(赤字で記入)を並べてみるとこうなる。

大きく差がついたこの評価結果はどのように導かれたのか謎だ。さらに開示文書の検証を進め、市側にも確認を求めた。(以下、次稿)
(中願寺純則)















