高市早苗首相の「迷走」が止まらない。九州選出のある自民党国会議員が心配そうにこう語る――「どうしようもないところまで炎上している。迷走していると言うしかない」。
首相を追い込んでいるのは週刊文春が連続して報じている「中傷動画」問題。昨年9月の総裁選や今年の衆議院選挙で、他の候補者に対する「中傷動画」を配信するよう、高市早苗首相の公設第一秘書・木下剛志氏がNoBorder DAOの松井健氏に依頼していたのではないかという疑惑だ。この問題には前段があった。
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今年2月、高市首相の名前を模した「サナエトークン」という仮想通貨が発行された。一定程度の取引があり、「損害を受けた」というネット上での申告も相次いだことから、発行元のNoBorder DAOはサナエトークンの《プロジェクトは既に中止を公表》《取引はお控えください》などとして補償交渉にも応じざるを得なくなった。現職の首相が、自身の名前を冠にした仮想通貨の発行を許可していたのかという疑問は、いまだに解明されていない。金融庁のある幹部はトークンについて次のように説明する。
「サナエトークンは、仮想通貨の中のミームコインとも呼ばれるもの。仮想通貨のネーミングをキャラクターや有名人などにして発行されます。ファンが応援、あるいはサポートするという形で流通します。当然、キャラクターや有名人の人気に比例して取引が増えたり、下がったりします。トランプ大統領のトランプ・ミームコインが有名ですが、彼の一言で激しく変動します。政治家が意図的にマーケットを動かせることになるので、避けるべきではないかという議論もあります」
当初、高市首相はサナエトークンへの関与はないとしていた。しかし、週刊現代や週刊文春の報道で高市首相の秘書である木下氏が、NoBorder DAOと交渉の末、サナエトークンが発行したという疑惑が浮上。高市首相側がお墨付きを与えていた疑いが生じていた。
そこに飛び出したのが週刊文春6月11日号の記事。同誌は、木下秘書と松井氏が、昨年12月17日に《ZOOM》で打合せをしている様子を公開。木下氏はサナエトークンの構想に《すごくいいなと思います》とお墨付きを与えていた。文春は、この時のZOOMの表示名が「高市早苗」となっていたことで、より高市首相の意向が反映されていたとみているようだ。
そうした情勢の中で火が付いた「中傷動画問題」によって、「高市一強」体制が続いてきた国会でも、厳しい追及が続く状況となっている。
6月4日の衆議院予算委員会。中道改革連合の伊佐進一衆議院議員は、週刊文春が公開した音声をもとに今年2月の衆議院選挙でも「中道の候補者の誹謗中傷動画を量産し、投稿したのではないか」と質問。これに対し高市氏は、「週刊誌の記事を信じるのか、秘書を信じるのかといえば、私は秘書を信じます」と答弁。すると、伊佐議員は高市首相に「事前通告の段階で、音声が木下秘書かどうか確認してほしいとお願いしておりました」と迫った。
この先の首相答弁は、自民党内からも「答える意思がないんじゃないか」という声が上がるほどお粗末なものだった。
「質問通告を見たのが午前3時半くらい。ご指摘のオンラインというものを確認しようと思いましたら、これ会員制の有料、有料オンラインなんですね。これまで面識のない(松井氏)のことをイメージ操作のように報じられ、有料オンライン会員になろうとは思いませんでした。でですね、またその方法もなく確認できませんでした」
「夜中にそれを知って有料会員になってそれを聞け、これはちょっと非常に厳しい」
「有料会員」を連発する高市首相。伊佐議員は「私言っているのは秘書本人に確認して下さいと、あなたの声ですかと。なんなら私、今持っているので聞いていただいて」と詰めた。
そして6月5日の参議院予算委員会。今度は立憲民主党の岸真紀子議員が高市首相に、「文春にもご快諾を得て総理には事前に音声データを聞いてもらうようにお願いしている」と迫る。さすがに高市氏もゼロ回答ではまずいとかんがえたのか、こう答えて論点をぼかした。
「動画を確認しました。内容は広く国民の声を聴くためにはどうしたらいいかというものです。総裁選で他候補を批判する動画のものではない。動画が(昨年)12月と紹介されており、総裁選は終わっています」「あのような音声をもとに判断するのは難しゅうございます。秘書の声も私と話している時より高くはきはきとしており違和感がありました」
だが、焦点は週刊文春が報じている音声が木下氏のものなのかどうか。秘書である木下氏に確認させればいいのに、頑なにそれを拒むにはそれなりの理由があるのだろう。
岸議員は「週刊現代では12月17日にオンライン会議をやったと高市事務所が回答している」とさらに問うと、首相は「回答、事実と違うと(木下秘書が申しておりました)」。これには「虚偽答弁にもなりかねない」と野次が起こった。
まともに問題に向き合おうとしない高市首相の姿勢が混乱を生んでいるのは明らかだ。5日の参議院予算委員会は7回も審議がストップするほどだった。前出の自民党議員は
「高市首相は週刊文春、週刊現代の報道にイライラのしっぱなし。『週刊誌が何を書くのか知らないが、信用できないものばかり』とブチ切れているでしょう。炎上した問題の核心は、秘書が中傷動画の作成を依頼したかどうか、さらにはサナエトークンの発行に高市事務所の関与があったかどうか。一連の疑惑について、しっかり説明してこなかった高市首相の責任は決して軽くはない。かつて文藝春秋が報じたロッキード事件で、田中角栄政権は崩壊した。メディアを甘く見ると大変なことになる。高市総理の後ろ盾は支持率。これが落ちてくると、すぐに見放されることになる。それなのに、国会答弁はとても総理大臣たるものとは思えないものばかり。かなり深刻な状況になってきた」
元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は、自身のブログで「中傷動画」の問題について言及。《(動画作成などに)報酬として金銭等の供与が行われていれば買収罪ですし、対価関係は明確ではなくても、何らかの「利害関係」を用いてそのような動画の作成・拡散をするように誘導した場合には、利害誘導罪が成立する》として公職選挙法の「買収罪」「利害誘導罪」に該当する可能性があるとの見解を示している。
自民党内では、高市首相の支持率が「急落しそう」と懸念を示す議員が少なくない。現在は「炎上」の高市氏だが、法に触れるとなれば「進退」につながりかねない。















