兵庫県芦屋市が一昨年秋に実施した「芦屋市道路公園施設包括管理業務」の業者選定プロポーザルに浮上した疑惑の核心部分は、市が唐突に変えた評価総合点の算出方法にある。市は変更理由を「正確さを期すため」と話しているが、合理的な主張とは言い難い。以下、変更された総合点の算出方法について検証を続ける。
■市は「正確な計算」を主張するが・・・
総合点の算出方法を変えたことによって、従来の方法なら5点差だったものが13点差に開くという不可解な事態。まず、算出方法変更についての芦屋市側の説明である。
下は同プロポーザルで作成された、ある評価委員(*市は「専門委員」と呼称)の個票=2次評価シート。ハンターが示した赤い囲みに「根拠」があるという。

評価項目は「取組方針」「実施体制」「業務品質・効率性」「市内企業の活用」「追加サービス・独自のノウハウ」「高齢者雇用促進の取組」「障がい者雇用促進の取組」の7つ。満点は120点で、2次評価シートでは、項目ごとに一定の係数を掛けて得られる配点が次のように決められている。
「取組方針」⇒ 10×1.8=18点
「実施体制」⇒ 10×1.8=18点
「業務品質・効率性」⇒ 10×2.4=24点
「市内企業の活用」⇒ 10×3.0=30点
「追加サービス・独自のノウハウ」⇒ 10×1.8=18点
「高齢者雇用促進の取組」⇒ 10×0.6=6点
「障がい者雇用促進の取組」⇒ 10×0.6=6点
「高齢者雇用促進の取組」と「障がい者雇用促進の取組」の配点は、それぞれ6点で計12点。7項目中、一番少ない配点であることが分かる。
市の担当課は、係数「0.6」の項目において、採点が6点と7点の場合、0.6を掛けると「3.6」と「4.2」となり、四捨五入するといずれも「4点」となると説明。これが正確さを欠くとして全体の合計点算出方法を変えたと説明する。
開示された2次評価シートを確認したところ、「高齢者雇用促進の取組」と「障がい者雇用促進の取組」という項目で、「6点」と「7点」で四捨五入後に「4点」となるケースが、プロポーザルに応募した2事業体それぞれに2例ずつ計4例あった。下はそのうちの1例である。

7項目合計で120点満点の中の「6点」「6点」――つまり合計12点――の項目を重くみて、係数に問題のない他の5項目の総合点算出方法まで変えたということだ。しかも、前触れなく唐突に……。
「0.6」と四捨五入の関係はごもっともだが、それだけで全体の算出方法を大きく変え、点差が広がるようにした根拠としてはいかにも弱い。やはり「後出しの算出方法変更」との疑念は拭えない。
■疑惑解明のカギ握る「2次評価シート」
最大の問題は、評価合計点の算出方法を変更した理由や方針を決定した際の記録が、公文書として残されていないことだ。いつ、だれが、なぜ算出方法を変えたのかという疑問に答える公文書は作成されておらず、真相は藪の中。市側は「専門委員が話し合って決めた」と主張するが、それを証明することはできない。
そもそも、「2次評価シート」でそれぞれの評価委員の採点した“事業体ごとの評価総合点”を算出して記載しておきながら、別の用紙で計算し直すという流れ自体が不自然極まりない。下に示した2次評価シートをみれば分かるように、市は120点満点で「基準点72」まで決めている。
評価シートの左下に記された各項目の満点は10点。合格ラインが「6点」となっている。各事業体にとって最低限必要となるのは60%の得点。市が決めた基準点とは、満点120点×60%ではじき出した「72」点ということだ。各項目は6点以下で加点なし、全体で72点に届かなければ失格となる。

上掲のシートでは、「取組方針」が採点7×1.8で四捨五入し得点13点、「実施体制」が採点7×1.8で四捨五入し得点13点、「業務品質・効率性」が採点7×2.4で四捨五入し得点17点、「市内企業の活用」が採点8点×3.0で得点24点、「追加サービス・独自のノウハウ」が採点7点×1.8で四捨五入し得点13点、「高齢者雇用促進の取組」が採点6点×0.6で四捨五入し得点4点、「障がい者雇用促進の取組」も同様に得点4点となる。トータルは13点+13点+17点+24点+13点+4点+4点=88点だ。
しかし、別の用紙(*下の画像参照)で評価項目ごとに各選考委員の点数を足して係数を掛ける方法にすれば、いったん2次評価シートで算出した事業体ごとの総合評価点が意味をなさなくなる。一体何のための基準点だったのか?何のための「2次評価シート」だったのか?
事業を行う市が、プロポーザルについての説明責任を果たすため残さなければならない施策決定過程を示せない以上、そうした疑問に対する合理的な答えなど出せるわけがない。市は2次評価シートを開示したくなかったはず。実際、ある場面で、市が2次評価シートの開示を頑なに拒んでいることが分かっている。
このプロポーザルにおける疑惑のカギを握るのは、本シリーズで何度も触れている「2次評価シート」の存在。芦屋市が恐れているのは、2次評価シートが世間の目に触れ、変更された採点方法への疑問が噴き出ることなのだ。(以下、次稿)
(中願寺純則)















