
北海道警察の職員(非・警察官、年齢性別不詳)が本年2月に当て逃げ事故を起こし「本部長注意」の措置を受けていたことが、道警への情報公開請求でわかった。道警は道路交通法違反容疑で事件を捜査しつつ、一連の経緯を報道発表していなかった。筆者の開示請求がなければ事実があかるみに出なかった可能性が高く、身内の不祥事の不当な隠蔽が疑われる事態となっている。
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本年1月から3月までに処分などがあった不祥事の記録の開示を筆者が道警に求めたのは、年度替わり直後の4月6日。これを受理した道警は同20日付で『監督上の措置一覧』など3種の公文書の一部開示を決定、計22枚の写しを筆者に交付した。
文書によると同期間には懲戒処分が一件も記録されず、職員の不祥事はすべて懲戒に到らない軽い制裁である「監督上の措置」に留まっていた。同措置は3カ月間で19件あり(訓戒2、注意17)、開示された『一覧』の限りでは「勤務規律違反」や「異性関係不適切」など、さほど深刻ではない不祥事が多くを占めているように読み取れた。
内容を確認した筆者は次いで、道警に新たな公文書の特定を依頼した。求めたのは、先の3カ月間に記録された19件の不祥事のうち「事件として捜査の対象になったもの」及び「報道発表されたもの」がそれぞれ何件あったかを確認できる文書。依頼を受けた道警は5月中旬までに対象文書を特定、筆者は5月21日付でそれらの開示を求める手続きをした。その一部開示が決まったのが6月4日のことで、週を跨いだ同10日に筆者は対象文書の写しを入手することができた。
文書によると、同期間に報道発表された事案は0件。そもそも「監督上の措置」は原則として公表の対象となっていないため、これは頷ける。一方、「事件捜査の対象になったもの」は1件だけあり、その捜査に伴って作成された『事件指揮簿兼犯罪事件処理簿』など4枚の公文書が一部開示された。文書によると、事件は道路交通法違反(安全運転義務違反、及び事故不申告)。『処理簿』の「事案概要」欄には、こうある。
《被疑者は普通乗用自動車を運転中、駐車場内に駐車中の車両に事故の車両を接触させたが、最寄りの警察署の警察官に届け出することなく現場から立ち去った》(*下の画像参照。赤いアンダーラインは筆者)

接触事故を申告せずに逃走した――。これは、一般的には「当て逃げ」という。ところが今回、筆者が最初に入手した『監督上の措置一覧』にはその事実が明記されていなかった。3月25日付で「本部長注意」の措置となった事案の「措置内容」欄では、そのケースは交通違反ならぬ「勤務規律違反事案」となっており、概要欄にはこう記されていた。
《職務上報告すべき事実を認知しながら、報告を怠った》(*下の画像参照。赤い囲みは筆者)

当事者はいずれかの方面本部に勤務する警察職員で、措置量定はすでに述べた通り「注意」だった。監督上の措置は「訓戒」「注意」の2種しかなく、「注意」は軽いほうの制裁。これは不自然に甘い対応だったと言わざるを得ない。
警察庁が定める『懲戒処分の指針』では、当て逃げをした職員への処分は「停職」または「減給」が相当とされているのだ(⇒こちら)。ところが実際には「減給」どころか懲戒ですらない「注意」で、その記録には「当て逃げ」の文言がどこにも記されていなかった。つまり道警は、本来ならば当事者を懲戒処分とし、ひいては報道発表も検討すべき当て逃げ事件を「注意」留まりにし、交通違反を「勤務規律違反」扱いすることで、事案の事実上の隠蔽をはかった――。そう疑われてもやむを得まい。
繰り返すが、こうした疑惑があかるみに出たのは2段階の情報公開請求で公文書を入手することができたためだ。それがなければ、上の事実は永久に表面化しなかった可能性が高い。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















