芦屋市・疑惑のプロポーザル(4)|問題の核心 ー「障害者雇用状況報告書」巡る不正の臭い
- 2026/6/16
- 社会
- 2次評価シート, プロポーザル, 兵庫県, 疑惑, 芦屋市, 芦屋市道路公園施設包括管理業務, 障がい者雇用状況報告書, 隠ぺい
芦屋市が令和6年秋に実施した「芦屋市道路公園施設包括管理業務」の委託先を決めるプロポーザルに浮上した疑惑。問題のカギを握るのは、本シリーズで何度も触れてきた「2次評価シート」の存在だ。実は、芦屋市が2次評価シートの存在が表面化することを極端に恐れていたことを証明する事実がいくつもあることが分かってきた。さらに取材を進めるなか、一連の疑惑に「障害者雇用状況報告書」という書類が密接に結びついていることも見えてきた。
■隠されていた「2次評価シート」
ハンターがプロポーザルの関連文書に関する情報公開請求をかけたのが今年3月。その段階で、記者はハッキリと「手書きの個票」を開示するよう口頭で求めていた。その時のやり取りを示しておく。
記者:請求したように個票はあると思うんで、お願いしますよ。
芦屋市:個票といいますと?記者:採点した際に選定委員が手書きで数字を書き入れた文書のことですよ。
芦屋市:そこは確認しますが……。
しかし、2か月待ってようやく開示された文書のなかには「手書きの個票」はなかった。「個票」として出てきたのは、プロポーザルに応募した二つの事業体――本稿では「A事業体」と「B事業体」――の提案内容を項目別に採点し、一定の係数を掛けた数字を足して「総合点」を算出した「2次評価シート」だった(*下は開示された2次評価シートの一例)。
事業体の提案内容を採点した委員(市は「専門委員」と呼称)は5名。2次評価シートはそれぞれが付けた点数を一人1枚ずつ事務方がまとめたものだ。従って開示されたシートは10枚となる。
重ねて述べるが、市はこれを開示したくなかったはず。記者が「個票」について説明し、開示を強く促したことで、「開示しなければ疑念を抱かれる。ないとは言えない」と“方向転換”した可能性が高い。それまでは、資料請求してきた複数の相手に2次評価シートの存在を隠していたからだ。
■ハンターの開示請求で隠ぺい失敗
度々述べてきたように、この2次評価シートにおける最終評価はA事業体が510点、B事業体が515点。しかし、評価総合点の算出方法を変えて得られた最終結果はA事業体503点に対しB事業体は516点と、5点差が13点差へと広がった。市側は、評価総合点の算出方法を、いつ、だれが、どのような手順で変更したのかという経緯を示す公文書は「ない」と明言しており、事業を行っている市が証明不能に陥った格好だ。
2次評価シートをみれば、総合点の算出方法が変わったことで5点差が13点差に広がったという不可解な事実に気付くはず。しかし、5月末の時点では、市議会などでそうした指摘がなされた形跡はなかった。こうなると選考の当事者に確かめるしかない。
“選考結果と個票の関係をおかしいと思わなかったのか?”――ハンターは、疑惑のプロポーザルを巡って市を相手に民事訴訟を起こしているというA事業体側に取材を申し入れた。もちろん、A事業体が提起した訴訟の前提は“不当な選考過程”である。
当初は「訴訟中」を理由に取材を拒否していたA事業体の関係者たちが、2次評価シートを示したとたん、怪訝そうに「それは何のことですか?」と身を乗り出した。一同は「見たことがない。こんな文書があったのか」と驚きの表情。前年度までに所管課が実施した2回のプロポーザルにおける総合点算出方法との違いを説明しながら裁判の経過を聞いたところ、とんでもない話が飛び出した。
なんと、市側はハンターに開示した採点過程を示す文書(*「2次評価シート」及び「手書きの個票」のことになる)を、裁判の証拠書類として提出することを頑なに拒んでいるというのだ。市は2次評価シートや手書きの個票の存在さえ明かしていなかったというから、何をかいわんやだ。さらに、この問題を追及している芦屋市議会の議員らに対しても、2次評価シートも手書きの個票も資料提供されていなかった。事実上の隠ぺいが疑われる事態である。
取材に応じたある市議は、「ハンターの記事を読むまで2次評価シートの存在を知らなかった」と明言、今月開かれた市議会で資料請求を受けた市が、ようやく同シートを議会提出したという。ハンターの開示請求と記事配信がなければ、2次評価シートの存在は隠されたままになっていたということだ。隠そうとした理由は一つしかない。不正が疑われるプロポーザルの問題に蓋をしたかったからに他なるまい。
■問題の核心 ー 「障害者雇用状況報告書」
ここで、不正があったとすればどのような手口によるものなのかという疑問が生じる。もちろん、不透明な総合点の算出方法変更は一つの答えになり得る。だが、それだけでは答えとして不十分。総合点の算出方法を“変えなければならなかった理由”があるはずだ。そこでハンターが注目したのは、プロポーザルの評価対象となった三つの採点項目――「企業評価」「提案内容評価」「価格評価」――の中の企業評価に関することだった。
芦屋市が定めた企業評価の大きな対象項目は「企業能力」「地域貢献度」「社会性」の三つ。それぞれに細かな評価事項があり、下の関連文書で分かるように、全部で14項目に細分されている。
問題となるのは、「社会性」の中で最も高い点数である12点が配された『障がい者雇用状況』である。
プロポーザルを実施するにあたって市が定めた「仕様書」には、《障がい者等の雇用に関する報告書(9四半期ごと) 障がい者等の安定した雇用の推進状況について、本市に報告する。》とある(*下が仕様書の該当部分。以下の画像、赤い囲みはハンター編集部)。
市がプロポーザルに参加した二つの事業体に提出を義務付けたのは、前掲の評価項目にも提出文書として明示されている『障害者雇用状況報告書(写)』である(*下の画像参照)。
障がい者雇用促進法は、従業員40人以上の事業主に対し、毎年6月1日現在の障がい者の雇用に関する状況をハローワークに報告するよう義務付けており(法第43条第7項)、その際に提出するのが障害者雇用状況報告書(*下がその用紙。クリックで拡大)。芦屋市は、事業体の社会性を評価するため、この報告書の提出を求めていた。つまり、障害者雇用状況報告書の提出がなければ、採点対象にならないということ。未提出なら評価点は得られないはずだ。
念のため、二つの事業体の得点を確認してみると、A事業体もB事業体も満点の「12点」(*下の「評価表(総括)」参照)。両事業体が障害者雇用状況報告書を提出していたと解するのが普通だ。
ところが、企業評価を受けるため両事業体が提出した書類を開示資料で確認したところ、プロポーザルを勝ち抜いたB事業体側の障害者雇用状況報告書はあるが、選に漏れたA事業体側の報告書は見当たらない。A事業体に12点を付けたのは間違いだったということになる。
ここでA事業体に取材し、報告書提出の有無について聞いた。応対した事業体側は「別の資料を添付して、3点セットで提出しました。報告書は出しています。記録も残してあります」と断言する。しかし、市が開示した文書のなかに入っていないのは確かだ。開示漏れも想定し、“A事業体は報告書を3点セットで提出したと言っているが、その報告書が開示されていないのはなぜか?”と取材結果を示して市の担当課に確認を求めた。芦屋市の説明はこうだ。
「報告書は提出されていないと認識している。それに代わる書類をもって評価した」
何回聞いても「受け取っていない」とはハッキリ言わず、「認識している」。役所特有の姑息なごまかし方だ。“では、なぜそれに代わる文書を開示しないのか”と追及すると、「個人情報」だと逃げを打つ。「個人情報だから」は、都合の悪い文書を隠す時の、役所の常套文句である。
片方が指定された文書を提出しているのに、もう一方は未提出。それでも評価点は同じだというのは理解に苦しむ。情報公開制度は役所の施策が正しく実施されているかどうかをチェックするための重要な仕組み。事業内容に疑念を持たれるような文書開示は、それ自体が不十分ということだ。個人情報だというなら、個人が特定されないようにマスキング(黒塗り)して開示すれば疑念を抱かれずに済む話。全面黒塗りでも、代わりの書類が提出されたことの証明にはなる。だが芦屋市は、それさえ否定する。まだ隠さねばならないことがある証拠だ。
そもそも、市は本当にA事業体の障害者雇用状況報告書を受け取っていないのか?記者は、A事業体に、「提出した」と主張する報告書の提供を求めた。(16日10:32一部加筆・修正 以下、次稿)
(中願寺純則)




















