全国裁判所不祥事・2025年速報|自転車盗の書記官「停職」留まり

全国の裁判所で昨年1年間に処分などがあった不祥事が計20件に上ることが、最高裁判所への情報公開請求でわかった。このうち16件が懲戒処分、残る4件が懲戒よりも軽い制裁である監督上の措置だったが、懲戒のうち3件が「免職」という最も重いペナルティで占められる結果となった。

◆   ◆   ◆

処分の概要が一定程度開示されたのは裁判官以外の職員による事案のみで、裁判官の不祥事とみられる事案は例年通りすべて黒く塗り潰された「のり弁当」となっていた。その一方、書記官など事務職員の事案の記録では当事者の氏名が墨塗りされずに開示されたケースが計2件あり(書記官=停職、事務官=免職)、裁判官とそうでない職員との扱いの落差が浮き彫りとなった。同時に開示を求めていた「各件の報道発表の有無がわかる文書」はすべて「廃棄済み」で非開示とされ、各事案の公表の有無を確認することは叶わなかった。(*下の文書参照。以下、赤い書き込みは筆者

筆者が最高裁への公文書開示請求(司法行政文書開示開示申出)を行なったのは、年明け間もない本年1月16日。これを受理した最高裁は「文書の探索及び精査に時間を要する」として2月18日と4月20日の2度にわたって開示期限を延長し、最終的に請求4カ月後の5月20日付で対象文書の一部開示を決定した。

同決定を受けた筆者が対象文書の写し(コピー)を入手できたのは、さらに10日あまりを経た6月上旬のこと。なお裁判所の文書開示では、5月上旬に伝えた検察審査会の文書開示( 既報)とは異なり「郵送による写しの交付」が認められており、筆者は取材拠点とする北海道に居ながらにして最高裁の開示文書計41枚のコピーを入手することができた。

開示された文書は、職員の懲戒処分に伴って作成される『処分説明書』16組と、決裁時に作成されたと思われる『決裁票』4組。後者はすべて「処分」ならぬ「措置」の記録と読み取ることができ、このため昨年1年間では懲戒処分が16件、監督上の措置が4件あったことがわかる。「のり弁当」の記録も含め、各文書に記録された事案の概要を記すと、以下のようになる。

【懲戒処分 16件】

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(東京地裁)

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(東京地裁)

・1月23日付「減給5分の1×6カ月」=勤務懈怠…裁判所事務官(東京地裁)

・1月31日付「戒告」=同僚職員への暴行など…裁判所主任書記官(福岡地裁)

・2月28日付「停職12カ月」=文書偽造、文書毀棄など…裁判所書記官(東京地裁)

・2月28日付「停職1カ月」=自転車窃盗、飲酒運転など…裁判所書記官(福岡家裁)

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(長野家裁)

・3月27日付「免職」=旅費の不正請求…執行官(横浜地裁)

・5月26日付「免職」=長期の無断欠勤…裁判所事務官(鹿児島地裁)

・6月27日付「停職3カ月」=不正受給、盗電、交通違反など…裁判所事務官(仙台家裁)

・7月22日付「減給10分の1×3カ月」=不適切文書管理など…裁判所主任書記官(東京高裁)

・9月4日付「免職」=死体遺棄幇助…裁判所事務官(大津地裁)

・9月30日付「戒告」=情報漏洩…裁判所事務官(高松高裁)

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(岡山地裁)

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(さいたま地裁)

・処分日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明(名古屋高裁)

【監督上の措置 4件】

・措置日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明

・措置日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明

・措置日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明

・措置日不明「量定不明」=事案概要不明…官職不明

懲戒16件のうち6件で処分庁以外の事実関係がことごとく非開示となり、監督上の措置に到っては4件すべてが完全な「のり弁当」となっていた(*下の画像参照)。懲戒の非開示6件はいずれも裁判官への処分だった可能性が高いが、監督上の措置についてはその限りでないとみられる。

被処分者の氏名が開示された2件はいずれも大きく報道された事件で、裁判所としてもこれらの事実を伏せる意味はないと判断した可能性が高い。1件は2月28日に処分を受けた福岡家裁書記官の事件で、同久留米支部に所属する書記官は昨年11月、泥酔して他人の自転車を盗み、飲酒状態で同自転車を運転したもの。裁判所の処分は「停職1カ月」という、いささか甘い制裁だった。(*下の文書参照

もう1件、大津地裁の事務官が「免職」となった死体遺棄事件は、発覚後からその概要が大きく報じられている。事務官は皮肉にも職場だった大津地裁で被告人として裁かれ、裁判所の公文書にも下のような生々しい記述が残されることとなった(※ 伏字は最高裁)。

《被処分者は、A(被害者の夫)が、令和2年9月7日頃、滋賀県長浜市■■■■■■■■■■■所在の被処分者及びB(被処分者の父親)両名の自宅において、Aの妻である被害者が死亡しているのを認識したのであるから、その死体を葬祭しなければならない義務があったのに、同月9日頃、同所に設置された冷凍庫にその死体が入れられた状態で、同所から立ち去り、その頃から令和7年4月2日までの間、同所において、前記姿態を放置して遺棄するに際し、その情を知りながら、Bと共謀の上、前記冷凍庫の電源を入れた状態を維持して、その電気料金を負担するとともに、令和2年9月9日頃から令和6年10月17日頃までの間、多数回にわたり、前記冷凍庫の周辺に消臭剤を設置するなどして、もってAによる死体遺棄の犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである》

4年間あまりにわたって自宅に死体を隠し続けたという猟奇的な事件。当事者の「免職」処分に異論のある国民はいないだろう。一方で先述の自転車盗・飲酒運転のように「停職」で済まされた事件もあれば、1月31日付で福岡地裁が処分した事案のように、あきらかな暴行犯でありながら不自然に軽い「戒告」留まりだったケースもある。また6月27日付の仙台家裁の処分のように、高額の不正受給や盗電、交通違反などを重ねた事務官が「停職」で首を繋いだ事案もある。こうした裁判所の対応が適切だったといえるかどうか、評価は読者の良心に委ねたい。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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