芦屋市・疑惑のプロポーザル(5)|市側主張に虚偽の可能性

 芦屋市が令和6年秋に実施した「芦屋市道路公園施設包括管理業務」の業者選定プロポーザルは、総合点の算出方法を変えながら、ハンターが情報公開請求で引っ張り出した「2次評価シート」(*上掲の画像)という従来の形式を使って点数を出し、その後に新方式で違う総合点を導き出すという複雑なやり方で委託業者を決めていた。採点時に使用した「手書きの個票」も、公文書毀棄を指摘したハンターの追及がなければ開示されていなかった。

 新たな総合点の算出方法を“いつ、だれが、どのように”決めたのか?なぜ「2次評価シート」や「手書きの個票」を隠していたのか?そうした疑問に対し、芦屋市は合理的な説明ができていない。意図的な総合点の操作があったとすれば明らかな入札妨害だが……。

■消えた「障害者雇用状況報告書」

 プロポーザルの評価対象となった採点項目は、「企業評価」「提案内容評価」「価格評価」の三つ。ハンターが注目したのは企業評価に関することだった。

 プロポーザルに参加した二つの事業体――選定から漏れたA事業体と事業を受注したB事業体――の企業評価はいずれも満点の「12点」だ。この項目で点数を得るために提出が義務付けられていたのは、40名以上の従業員を抱える事業者がハローワークへの提出を義務付けられている「障害者雇用状況報告書」である。両事業体が満点をとったということは、ともに障害者雇用状況報告書を提出していたことを意味する――はずだった。

 ところが、企業評価を受けるために両事業体が提出した書類を開示された資料で確認してみると、仕事を受注したB事業体側の障害者雇用状況報告書はあるが、A事業体側の報告書は見当たらない。どうすればA事業体に12点がつくのか?

 取材に応じたA事業体側は、「別の資料を添付して、3点セットで報告書を提出した。記録もある」ときっぱり。しかし、市が開示した文書のなかに、A事業体が提出したと主張する文書は一切ない。

 それについて市側は、「報告書は提出されていないと認識しているそれに代わる書類をもって評価した」と不明確な言葉でA事業体の主張を否定する。“”それに代わる書類を開示しないのは何故か?”という問いには「個人情報だから」と答えている。

 しかし、それに代わる書類が個人情報だというなら、個人が特定されないようにマスキング(黒塗り)して開示すればよい。全面黒塗りでも、代わりの書類が提出されたことの証明にはなるからだ。記者は、A事業体に、彼らが「提出した」と主張する障害者雇用状況報告書と添付書類の提供を求めた。下がA事業体が作成し、市に提出したとする障害者雇用状況報告書2点の添付書類である。

 A事業体の報告書にはハローワークの受付け印がない。そもそも、従業員が40人に満たない事業所の場合、障害者雇用状況報告書を提出する義務がないからだ。A事業体は、同報告書の提出が採点評価の条件となっていたため、プロポーザルのためだけに、わざわざ日常の企業活動には必要のない障害者雇用状況報告書を作成したという。

 その報告書に記載された障がい者の人数は「1人」。上掲した報告書の下の2点が、市に提出した挙証資料だった。

 芦屋市は、上掲の障害者雇用状況報告書は「提出されていないものと認識している」とぼかしつつ、2点の「それに代わる書類」で評価したとする。それに代わる書類というのが、上の「障害者手帳」と「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書及び雇用保険被保険者証」ということになる(黒塗りはA事業体、他の加工はハンター編集部)。

 一方、ハンターに開示されたB事業体提出の書類は次の1点。こちらにはハローワークの受付け印が押されているのが分かる。添付文書がないのは、プロポーザルにおいて提出義務があったのは下の報告書だけだからだ。ただ、従業員は40名未満の「32名」と記されており、本来B事業体側にもハローワークへの報告義務がないことが分かる。B事業体はプロポーザルのためだけに受付印をもらったとみられる。なお、雇用している障がい者の数は、なぜか黒塗り非開示。従業員の人数は開示しておきながら、障がい者の数は非開示という、訳の分からない対応だ。障がい者雇用の実態を隠す必要などあるまい。

 結論を述べるが、A事業体が提出したとする障害者雇用状況報告書に関する芦屋市の説明は「虚偽」である可能性が高い。詳細は以後の配信記事で示すことになるが、A事業体側は、障害者雇用状況報告書を窓口の職員に提出した際の記録をきちんと残しており、記者は、市の職員が確かに報告書と添付書類を確認し「ああ、これこれ」と言いながら受け取っていたことを確認している。A事業体の障害者雇用状況報告書だけが消えたということだ。

■重要な意味を持つ「13点差」

 この段階で、障害者雇用状況報告書を巡る次の三つの疑問が生まれる。

① 芦屋市が「個人情報」を盾に、A事業体が提出した「それに代わる書類」=「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書及び雇用保険被保険者証」を非開示にした本当の理由は?

② 芦屋市が、B事業体提出の障害者雇用状況報告書に記載されているはずの「雇用している障がい者の人数」を不必要な黒塗り非開示にしている理由は?

③ 芦屋市が、A事業体側が提出したと断言する障害者雇用状況報告書を、「提出されていないものと認識している」などと不確かな言葉で済ませようとしている理由は?

 2次評価シートと手書き個票の隠ぺい、不透明な評価総合点算出方法の変更過程、障害者雇用状況報告書を巡る不適切な対応――。芦屋市による異常とさえ言える一連の動きに、入札妨害の疑いは濃くなる一方だ。プロポーザルの検証を進めるたび、増える疑問や疑念。新たに浮上した三つの疑問に対する答えを探す取材を進めるうち、従来型の2次評価シートによって算出された「5点差」と、新たな算出方法によって導き出された「13点差」という評価総合点の差が重要な意味を持つことが明らかとなる。(以下、次稿)

(中願寺純則)

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