【追跡・鹿児島県警】被害申告取下げ強要で捜査拒否を正当化

捜査を拒否するだけでは足りず、被害申告の取下げまで強要していた鹿児島県警さつま署(既報)。被害女性から強制わいせつ致傷事件の訴えがあった2014年の段階で捜査に着手していれば、「不起訴」という結果が変わっていた可能性さえある。警察組織の事件潰しに、ほくそ笑んでいるのは加害者だ。

一連の出来事の細かな検証を行うにあたって、事件の経過を確認しておきたい。

■事件の経緯

捜査拒否を正当化するためには、県警内部の記録に本当のことは残せない。被害を訴えてきた女性が“納得して”被害申告を取り下げたとする「作文」も必要だ。その上で、自分たちにとって都合のいい形で幕を下ろさなければならない。さつま署は本格的な事件捜査に着手することなく事件を終わらせるため、告訴を前提に被害申告にきた女性を丸めこもうとして拒まれる。

あくまでも捜査・立件を求める女性に苛立ったのだろう、担当警察官は「サインをするようこわい顔」(女性の記録文書より)で迫っていた。泣いている被害者にサインさせた警察官は、心が痛まなかったのだろうか?

問題の強制わいせつ事件は2001年に発生。10年余りが過ぎた頃からフラッシュバックに悩まされるようになった被害者は、2013年にPTSDの診断を受ける。この時点で時効12年の「強制わいせつ」は「強制わいせつ致傷」となり、時効は20年へと延びる。

2014年3月、周囲からアドバイスされた被害女性が駆け込んだ先は県警さつま署。同署はまったく動かず、2015年12月まで1年9か月も放置したあげく、2016年2月に被害申告の取下げを強要して事件の終結を図っていた。

終わったはずの事件が再び動き出したのは2024年。腐りきった県警の体質に危機感を抱いていた二人の警察官の守秘義務違反事件と、それに絡むハンターへの家宅捜索が大きく報じられたことに触発された被害女性が、県警に「個人情報開示請求」を提出する。開示された記録をみた女性は、「衝撃でした。全身の力が抜け、目の前が真っ暗になった」と振り返る。

被害申告時の記録簿や県警本部長あての報告書といった開示文書に記されていたのは、虚偽や事実誤認の数々。女性からきちんと聞き取ったはずの数字や固有の名称も間違いだらけだった。女性は、一瞬で意図的な事件もみ消しを察知した。

翌25年、被害女性はさつま署による不当対応の問題点を指摘した「苦情申出書」に証拠を添え、県公安委員会あてに送付する。これを受けた県公安委は同年8月、被害女性に「苦情処理結果通知書」を発出。さつま署による一連の動きに違法性は認めなかったものの、「大変不適切」として強い指導を行ったことを明記していた。通知書には「(さつま署は)告訴状や被害届の受理について検討すべきだった」「不正確な表現」「不適切な表現」「(被害者が)『事実を矮小化された』と感じたとしても仕方のない記載」などとクロ判定を示す言葉が列挙されていた。

身内に近い公安委の厳しい姿勢にあわてた県警は、被害女性に接触。苦情処理結果通知書の発出から5日という早い段階での説明と謝罪に追い込まれていた。県警は、そのまた5日後に形ばかりの捜査に着手。送検するも、初動捜査を拒否していたことや時間の経過もあって不起訴となっている。警察が事件を潰したも同然だ。下の表に経緯をまとめた。

最初の被害申告から調書作成のための1回目の呼び出しまで1年9か月。そこから2か月ほど経って行われた被害女性への聴取時、捜査拒否を正当化するアリバイ作りのために被害申告の取り下げを強要していた。被害者への事情聴取は、この時と合わせたったの2回。はなから捜査する気などなかったということだ。

ただ、女性の被害申告取下げ書だけでは捜査拒否を正当化することは難しい。適正な捜査の結果、取下げに至ったという証拠も必要になる。そこでさつま署は、聴取内容のでっち上げや、虚偽としか言いようのない報告書の作成という最悪の行為に走る。犯罪捜査に関する知識が乏しい一般人の弱みに付け込んだ卑劣な姿勢には呆れるしかない。

では、県警さつま署は具体的にどのようなことをやったのか?次稿から、被害女性が残していたスケジュール帳などの詳細な記述と県警の作成文書で、“事件潰し”の実態をつまびらかにしていく。(つづく)

(中願寺純則)

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