鹿児島県警が日常的に行っているとみられる事件潰し。性被害や詐欺に遭って警察に助けを求めてきた本人に被害申告を取下げさせたり、「事件にならない」などと決めつけ諦めさせるという悪質な手口によるものだ。
強制わいせつ致傷を県警さつま署に訴え出た女性(以下、「Yさん」)に対し、さつま署は「証拠がない。昔のことでこれ以上捜査できない」などと通告。被害申告の取下げ書作成を強要し、泣きながら抵抗するYさんにサインさせていた。
終わったはずの事件が再び動き出したのは2024年。Yさんが改めて行った個人情報開示請求で入手した関係文書には、想像を超える数の「虚偽」が記載されていた。
■無視された「犯罪捜査規範」
2014年3月6日、被害女性Yさんはさつま署に出向き、告訴の意思を告げる。その際にさつま署が残したのが『事情聴取結果」である。下にその一部を示す。(以下、画像の赤いアンダーラインはハンター編集部。黄色のマーカー表示はYさん)
Yさんの被害申告を聴取したのは「巡査長」。巡査長は正式な階級ではなく、一定の評価を受けた「巡査」に与えられる役職に過ぎない。巡査長の正式な階級はあくまでも「司法巡査」。さつま署は、Yさんが告訴の意思を示した段階で、事情聴取の担当者を「司法警察員」に代えるべきだった。*下は「事情聴取結果」の末尾部分。Yさんが「強制わいせつ致傷で訴えたい」と述べたことが明記されている。
司法警察員とは巡査部長以上の階級の警察官。その上には警部補、警部、警視がいる。告訴、告発の受理や「調書」の作成は、司法警察員にしかできない決まりだからだ。犯罪の捜査を行うにあたって守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定めた「犯罪捜査規範」は次のように定めている。
司法巡査たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、直ちに、これを司法警察員たる警察官に移さなければならない。(第63条 2)
事案が「強制わいせつ致傷」という性暴力だったため、Yさんは女性警察官による聴取を頼んだという。しかし、犯罪捜査規範に従うなら、告訴を受理する資格のない巡査長に最後まで対応を任せたさつま署の対応は間違いだったと言うべきだろう。早い時期に告訴を受理しなかったことも規範の次の規定に抵触する。
司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。(犯罪捜査規範 第63条)
さらに、「告訴調書」を作成しなかったさつま署の対応は、口頭での告訴について定めた次の条文にも反している。
口頭による告訴もしくは告発を受けたときは、(略)告訴調書もしくは告発調書を作成しなければならない。(第64条)
これまで報じてきた通り、Yさんが初めて告訴を申し出た2014年3月、さつま署は事情聴取を巡査長任せにして「口頭での告訴」を一顧だにせず、そこから1年9か月も放置した。犯罪捜査規範が無視されたことは明白だ。その後の捜査関係記録をみると、やる気のなさは瞭然、捜査拒否を正当化するための虚偽や不正確な記述が頻繁に出てくる。
例えば、上掲の「事情聴取結果」の右上には記述者不明のメモ書きが残されているが、4行目には「脅迫、暴行に関する文言はありません」とある。しかし、Yさんは被害状況を説明する中、わいせつ行為を無理強いしてきた加害者が、抵抗できないようにYさんの手首をつかみ、押さえ付けてきたことを詳しく証言している。明らかに「暴行」であり、警察官は「それは暴行にあたります」と教える立場にあるはずだ。事件を矮小化しようとしていたさつま署の思惑が透けて見える。
さつま署作成の聴取結果は、年月日や医療施設の名称など基本的な事実を何か所も間違えており、不正確極まりないもの。被害者に寄り添おうという意識がなかった証左と言えるだろう。
■事情聴取はたった1回、2回目に被害申告取下げを強要
被害申告から1年9か月も経った2015年12月8日、さつま署はYさんを呼び出し、同署中山交番において調書を作成する。下がその際の「呼出簿」である。午前11時から午後4時20分まで5時間以上事情聴取を行っていたことがわかる。
この最初の呼び出しから2か月半経った2月18日、さつま署は午後2時から約1時間ほどの間に「証拠がない」「捜査できない」などと宣告し、Yさんに被害申告の取下げを強要する。前回呼び出されており、この日で二度目だったはずだが、《これまでの呼び出し回数》は「0」と記されている。いい加減なものだ。
咎めだてする必要のない小さな間違いなのかもしれないが、一事が万事だ。さつま署のやる気のなさが事実をねじ曲げ、さらなる虚偽報告につながっていく。
■「虚偽」の証明
下は2015年12月9日に、前日8日に行ったYさんへの聴取結果を記した「本部長指揮事件・報告事件報告書」に添付された文書の一部分。『事件の概要』には、《無理やりキスをされたり太股や臀部を触られるわいせつな行為をされたが、必死に抵抗したのでそれ以上の行為はされなかった》と記されている。
だが、Yさんが訴えたはずの「下着に手を入れられ陰部を触られた」との証言は出てこず、さらには「抵抗できないように手首をつかみ、押さえつけられた」という暴行の実態や、「隙を見て車から降りて逃げた」という切迫した状況だったことも抜け落ちていた。意図的に事件化を避けたとみられてもおかしくあるまい。
酷いのは、《当時着用していた服装は既に廃棄している》という記述だ。これはまったくの虚偽。Yさんは、「下着は捨ててしまったが、デニムのスカートとニットのベストは残っていて保管している」と具体的に話していた。実際、デニムのスカートとニットのベストは現在も残っており、後年、Yさんは県公安委員会への苦情申し立てを行った際に下の写真を県公安委員会に証拠として提出していた。(*写真のぼかし加工はハンター編集部)
県警は昨年8月になって「捜査」せざるを得なくなるのだが、このスカートとニットのベストを「証拠品」として押収している(*下の「押収品目録交付書」参照)。さつま署がYさんに被害申告の取下げを強要した折の「証拠がない」は嘘。本部長指揮事件・報告事件報告書の《当時着用していた服装は既に廃棄している》も嘘だったということだ。事実を歪めて捜査拒否を正当化する姿勢には呆れるしかない。
さつま署による虚偽報告はこれだけに留まらない。Yさんが言ってもいないことや、承知した覚えのないことが記された別の文書が存在しており、その結果Yさんが立件を見送るというさつま署の言い分を認めた形になっていた。(以下、次稿)
(中願寺純則)























