芦屋市・疑惑のプロポーザル(6)|「障害者雇用状況報告書」と「13点差」の意味

 兵庫県芦屋市が令和6年に実施した「芦屋市道路公園施設包括管理業務」の業者選定プロポーザルは、いったん従来型の採点方法で評価点を算出しながら、最終結果を導く段階になって別の方法を採用、その結果選定に応募して落選したA事業者と選ばれたB事業者の間の点差は「5点差」から「13点差」へと広がっていた。どちらの計算方法でも結果は同じになる形だが、実はその「13点差」がなければ結果は逆になっていた。疑惑の扉が開きかけている。

■障がい者の人数「1」に疑義

 市がプロポーザル参加事業体に提出を義務付けた「障害者雇用状況報告書」を、「添付資料と3点セットで提出した」と断言するA事業体。確かに、提出した際の担当職員とのやり取りもきちんと記録に残されていた。

 一方、市側は「報告書は提出されていないと認識している。それに代わる書類をもって評価した」と曖昧な言葉を繰り返すばかり。受け取ったものを捨てていれば公文書毀棄に問われかねないが、この点を含む本件プロポーザルに関する芦屋市の運用過程はデタラメ過ぎて呆れるしかない。

・隠されていたA、B両事業体の提案内容を採点した際の「2次評価シート」。

・「公文書毀棄」を指摘したとたん、唐突に開示された手書きの採点文書(個票)。

・いつ、だれが変更したのか分からない採点方法。

・相手が提出した際の記録まで残しているというのに、「提出されていないと認識」などというあやふやな形での否定。

 これまで報じてきた通り、ハンターの情報公開請求によって市側の不可解な動きが次々と明らかになるという異常な事態だ。

 自分たちにとって都合の悪い事実が表面化するたび、不合理な言い訳に終始する芦屋市。裏には隠された「真相」があるはずだ。そう睨んだハンターが取材を進める中、プロポーザルの選考過程を不当としてA事業体が市を訴えた裁判で、ある文書の記載内容が大きな争点となっていることが分かった。それが記されているのは、プロポーザルでトータル「516点」を得て業務を受託したB事業体提出の「障害者雇用状況報告書」である。

 問題となるのは、芦屋市が定めた“企業評価”の大きな対象項目「企業能力」「地域貢献度」「社会性」のうちの「社会性」。その中で最も高い点数である12点が配されたのが『障がい者雇用状況』だ。市が同項目で評価条件として求めたのは、従業員40人以上の事業主がハローワークに報告する義務を負う「障害者雇用状況報告書」だった。

 A事業体の報告書は報じてきた通り“行方不明”となっているが、B事業体は提出しており、それによって「12点」を得ている。ただし、ハンターの開示請求に対して市は、《法人に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利利益、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため》という理由で、下の画像の通り肝心な部分を黒塗りにしていた。

 次の画像は報告書のひな型の抜粋部分だが、“肝心な部分”を赤い印で示す。報告すべき事項の中の、「重度身体障害者の数」という欄である。

 前述したように、芦屋市はB事業体の障害者雇用状況報告書の該当箇所(印の箇所)を黒塗り非開示にしている。しかし、複数の関係者の話から、そこに記されている数字が「1」であることが分かった。つまり、B事業体を構成するいずれかの業者が、重度の障がい者1人を「雇用」しているということだ。事実なら満点の「12点」が得られる。

 A事業体が市に契約差止を求めた訴訟で争点に浮上しているのは、B事業体が「雇用」している障がい者が、本当にいるのかどうかという点。「雇用」されているはずの従業員が、プロポーザルに応募した時点では雇用されていなかったとすればどうなるだろう?実際、訴訟ではB事業体の提出した障害者雇用状況報告書の中の「重度身体障害者の数」=「1」に疑義が呈されているのだ。簡単に説明するとこうだ。

 まず、参考例としてA事業体が市に提出した「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書及び雇用保険被保険者証」を示す。

 「確認(受理) 通知年月日」は令和6年10月17日となっている。「確認(受理) 通知年月日」とは、雇用保険の適用を申請した日のことだ。

 一方、B事業体が裁判で証拠として提出した当該雇用従業員のものとされる雇用保険被保険者資格取得等確認通知書及び雇用保険被保険者証の「確認(受理) 通知年月日」は、“令和6年10月30日”になっているのだという。

 プロポーザル参加事業体の提案書提出期限は“同年10月28日”。当該従業員がそれ以前から働いていたとしても、10月28日の段階では「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」に雇用人数「1」と記すことはできなかったはず。雇用しているとされていた「1人」が実際にはいなかったとすれば、評価項目の中の『障がい者雇用状況』における「12点」は「0点」になる。するとB事業体の評価点はトータル「516点」から「504点」になる計算だ。

 ここで当初は存在を隠されていた「2次評価シート」による採点結果を思い出してもらいたい。従来型の採点方法で算出したA、B両事業体の得点はA事業体が「510点」でB事業体は「515点」。5点差しかない。障がい者雇用の項目でB事業体が「0点」だった場合、B事業体の得点は503点にしかならず、当初使われた2次評価シートの総合点算出方法なら逆に「7点差」でA事業体が選ばれていたということになる。

 ところが今回のプロポーザルで急遽採用した総合点の算出方法なら、仮にB事業体の『障がい者雇用状況』が0点だったとしてもA事業体は「503点」。わずか1点差ながら「504点」のB事業体に軍配が上がる。

 一連の経緯を振り返ると、2次評価シートにおける評価総合点算出方法でA事業体が1位となるところを、なんとか言い訳の立つ別の算出方法をひねり出してB事業体を勝たせた――そうした見立てが成り立つ展開と言えるだろう。それを証明するかのような不適切な事実が、まだいくつもある。(以下、次稿)

(中願寺純則)

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