北海道・根室市とその近郊で70年あまりにわたって親しまれていた地方紙『根室新聞』(2021年休刊)の後継紙を標榜していた日刊紙『ネムロニュース』(25年廃刊)の版元で不当労働行為があったとして、同行為を審査する北海道労働委員会が6月24日、被害を告発した労働組合員らの訴えを認める救済命令を出した。
同日午前に命令書の写しを受け取った労組関係者は「申し立てから命令までには長い時間を要したが、訴えが認められたことには感謝する」と話している。一方、日刊紙を発行していたネムロニュース社(根室市、鎌田宏之社長)は当初から事実上ほぼすべての組合対応を拒んでおり、命令書交付の場にも姿を現わさなかった。
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道労働委が公表した命令書(⇒こちら)などによると、救済を申し立てた労働組合員2人は記者としてネムロ社に採用され、日刊紙創刊前から取材・編集作業に携わっていたが、労働環境の改善を求めて労組を結成した直後に記者職から外され、さらには不当に解雇(本採用拒否)された。またこの間、会社は労組が求める団体交渉に応じようとしなかったという。
これらの対応が不当労働行為にあたるとして労組が救済を申し立てたのは、配置転換直後の2022年7月のこと。およそ4年を経て得られた今回の命令で労働委は、同配置転換と解雇とをいずれも無効として労組の2人をもとの記者職へ復帰させるよう会社側へ命じ、併せて不当解雇後の22年9月以降に支払われるはずだった賃金の支払いを命じた。また改めて会社の組合活動への支配介入を禁じ、さらに今回の不当労働行為の認定事実を紙に記して労組に手渡すよう命令した。団体交渉拒否は救済命令の対象とならなかった。
ネムロニュース社は2021年10月設立。根室市内に本社を構える風力発電関連企業CEF(⇒こちら)が、同年3月に休刊した地方紙『根室新聞』の後継紙発行を目指して立ち上げた。当初は地元で70年以上親しまれていた旧紙名をそのまま引き継ぐ予定だったが、のちに方針を変更して紙名・社名ともにネムロニュースとし、22年3月に日刊紙を創刊。創刊時点で同編集部には記者が3人いたが、紙面づくりの中心となっていたのはのちに労組を結成することになる2人だった。1人は道内の地方紙出身で、もう1人は民間企業の広報職経験者。2記者は創刊準備期からほぼ無休で業務に就き、3月の創刊を挿んで5月末まで適正な休暇を取得できなかったという。当時は深夜帯などの時間外労働が日常的に発生していたが、会社が明示していた時間外勤務手当などが支払われることもなかった。
こうした事態の改善を求め、2人はほかの社員からも賛同を得て労働環境の改善と未払い賃金の精算を社へ要求。これに社が応じなかったため、創刊3カ月後の22年6月に労組結成に踏み切った。すると社はその翌日、組合員2人を記者職から解く辞令を交付し、新たに「トイレ掃除」と「倉庫整理」を業務とする職への配置換えを強行。以降、2人は紙面づくりに関わることができなくなり、同年8月に解雇を言い渡されるに到った。前後して道労働委へ救済を申し立てることになったのは、これまで述べてきた通り。受理した道労委はその後、25年1月のネムロニュース廃刊を挿み、計20回に及ぶ手続き(調査、審問)を重ねて今回の結論を導くこととなった。
5年越しに叶った救済命令を受け、命令書の写しを受け取った労組共同委員長の男性(64)は「申し立てから命令まで1,453日。労委が目標とする180日から大幅に長引いたことはたいへん残念」としつつ、「申し立てが法に基づきほぼ認められたことに感謝する」と話した。男性らは救済申し立てと並行して不当人事の無効確認を求める民事裁判も提起しており、こちらは25年3月までに会社側全面敗訴の判決が確定したが、被告のネムロ社は1年以上を経た今日も裁判所の命令(配置転換と解雇の無効、及び未払い賃金の支払い)を履行していない。同社はネムロ紙廃刊と前後して会社の解散を検討するとしていたが、法人としては休眠状態ながらも現在も存続しており、労組委員長の男性は同社に対し「労働委命令に基づく復職、未払い賃金の支払い等を改めて要求する」としている。
ネムロ社をめぐる労使間トラブルではこのほか、労組側が昨年11月に労働基準法違反などで同社を刑事告訴しており、現在釧路労働基準監督署が「特別司法警察員」として事件を捜査中。情報によれば、同署は今回の労働委命令を受けて近くネムロ社の代表らを任意聴取する動きがあるという。告訴事件は労基署の捜査の結果次第では検察官送致され、一般の刑事事件と同じように検察の処分に到る可能性がある。
今回の労働委命令についての取材に、ネムロ社の母体となったCEFは「すでにネムロニュースとは関係がなくなったのでコメントする立場にない」と、またネムロ社の代理人を務める弁護士は「命令を確認しておらず、対応できる状況にない」としている。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















