検察審査会「郵送不可」に根拠規定なし|開示のルール、なお不透明

検察の不起訴処分の適正性を検証する第三者機関が公文書の「郵送開示」を拒んでいる問題で(既報)、郵送対応を認めない旨の決まりや慣行などが存在していないことがわかった。関係者はかねてから「とくに『郵送不可』の定めがあるわけではない」と話していたが、筆者の情報公開請求により改めてその事実が確認された。ルールなき権利制限は今も続いており、筆者は本年、開示が決まった公文書の一部について閲覧・謄写を諦めざるを得なくなった。

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上記既報の通り、根拠規定を欠いたまま公文書の郵送開示を拒み続けているのは、検察の不起訴処分の是非を審査する検察審査会。全国に165カ所ある検審は行政庁の情報公開法に縛られない第三者機関だが、同じように同法の埒外にいる裁判所などと同様、独自の情報公開制度(検察審査会行政文書開示)を持っている(⇒こちら)。

国民はこのルールに基づいて検審が持つ公文書の開示を求めることができるが、検審はこの対応で、ほかの公的機関が採用している開示実施方法を認めていない。即ち、冒頭から繰り返し述べている「郵送開示」。文字通り、文書開示を請求した国民が対象文書の写し(コピー)を郵便で入手する手続きだ。

国や地方自治体などの行政庁はもちろんのこと、裁判所や検察庁、地方議会、広域事務組合などで何の問題もなく利用できるこの手続きが、なぜか検察審査会でのみ認められない異常事態。この不条理な慣行により、たとえば沖縄県在住者が札幌の検察審査会の公文書のコピーを入手する場合、短くない時間と小さくない交通費・宿泊費を負担して沖縄と北海道とを往復しなくてはならないのだ。しかもこの時、平日に仕事を持つ人が土・日・祝日を利用して現地の検審を訪ねることはできない。

開示の実施は月曜から金曜まで、かつ午前9時から午後4時までと定められているためだ。当然の権利を行使するために、場合によっては仕事を休まなくてはならなくなる人がいるわけだ。こうした「情報の地域格差」は何に由来するのか。

結論を述べると、郵送不可の根拠となるルールは存在しない。筆者はこれまで、北海道内の複数の検審とのやり取りで「郵送してはならないという決まりがあるのか」と問い合わせる機会を得たが、いずれの検審からも「そういう決まりはない」との回答が返されている。

そこで、実際にそのような決まりが「ない」という事実を確認するため、地元の札幌検察審査会に公文書の開示を請求してみた。求めたのは『検察審査会行政文書の開示に際し、郵送による開示対象文書の写しの交付ができない旨の決まりないし慣行が明記されている文書』。5月13日付の請求を受理した札幌検審は1カ月後の6月11日付で不開示決定に到り、筆者に書面で同決定を通知してきた。請求文書不開示の理由は、「作成又は取得をしていない」。つまり、郵送不可を定める公文書は存在していないという結論だった。(*下が不開示決定通知書)

ルールが存在しないにもかかわらず、国民の権利を頑なに制限し続ける第三者機関。不可解な慣行は、この一点のみに留まらない。

先行記事でも伝えたが、各地の検審へ赴いて開示対象文書のコピーを求めると、検審の事務所に複合機が設置されているにもかかわらず、それらは使用不可とされ、地元裁判所のコピー機を使うよう促される。この理由を尋ねると、返されるのは「検察審査会では現金を扱うことができない」なる回答。それに対して「郵送不可なのは現金を扱えないゆえか」と問いを重ねると「必ずしもそういうわけではない」との答えが返ってくる。もはや不条理を通り越して不気味な趣きだが、これが改善される兆しは今のところまったくないのが現実だ。

使用するコピー機によっては紙幣の利用に対応していないことがあり、その場で両替を求めても「現金を扱えない」との理由で対応を拒まれる。このため、請求人は近隣の小売店を訪ねて低額の商品を買い求めるなどで紙幣を両替し、しかる後に再び検審を訪ねてコピーに臨む、という手間が必要になる。先述の通りコピー機は裁判所内に設けられているが、利用料金の領収証を発行する主体は各地の弁護士会。地域によっては、検審から数km離れた地区にある弁護士会の事務所を訪ねて領収証を請求しなくてはならなくなる。

これらすべての不条理は、郵送開示を認めた瞬間にたちまち解消される筈だ。しかし、繰り返しになるが本邦の検察審査会がそれを検討する兆しは今のところない。

これも既報の通り、筆者は本年2月、取材拠点の北海道内にある9カ所の検察審査会に公文書開示を請求し、昨年1年間に議決のあった審査事件に係る文書すべての開示を求めた。これを受けた9検審のうち7検審が(札幌、小樽、室蘭、函館、旭川、釧路、帯広)5月上旬までに文書の一部開示を決定、翌6月上旬までに各庁の庁舎内で閲覧・謄写を認めると通知してきた。そう、文書の開示期限は僅か1カ月間なのだ。筆者は翌月上旬までに札幌、小樽、釧路、及び室蘭の各検審を訪ねて対象文書のコピーを入手できたが、残る帯広、函館、及び旭川の3庁は期限内の訪問が叶わなかった。このうち帯広検審は特別に期限の延長を認めることになり、現在日程の調整中だが、函館と旭川ではそのような対応の検討に到らず、文書の入手を断念せざるを得ない状況となっている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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