「陳述書」「睡眠とってない」―― お粗末すぎる高市答弁

中傷動画にサナエトークンと、スキャンダル噴出で窮地に立つ高市早苗首相。疑惑の追及に加えて、衆議院の定数削減、副首都法案、皇室典範改正など難題が立ちふさがる中、自民党・旧安倍派の議員が「やらかしてしまったな」と嘆いた。

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国会審議で、中道改革連合の後藤祐一衆院議員に問題となっているサナエトークンの企画者・松井健氏らとの関係を質された高市首相は、「何カ月も外交、安全保障、経済対策、成長戦略と、歯を食いしばって働き続けてまいりました。これからもそういたします」などとお涙頂戴話に終始。さらに、「30年以上衆院議員を務め、総裁選にも回立候補した。他の候補を中傷したり批判することはせず、ひたすら自分の政策を訴え続けてまいりました。第三者に他人を誹謗したり中傷したりする行為を依頼したことはない」と質問にない中傷動画の件まで否定した。

その後、ようやくサナエトークンに触れた首相は「サナエトークンは(疑惑が発覚した)3月2日までその言葉を聞いたこともない」とした上で「近日中に奈良の秘書の陳述書と、暗号資産などに関する記述などどこにもない相手企業から送られてきた提案書、これを予算委員会の理事会に提出させてください。それをもって答弁とさせていただきたい」と述べたのである。相手企業とは松井氏側のことを指す。前出の議員がやらかしたと嘆くのは、その際の「陳述書」発言である。

高市首相は、問題になっている木下剛志秘書の陳述書を国会に出すことで、野党から要求されている参考人招致などの疑惑追及にフタをするつもりだったのだろう。国会では、専門家などの法的な見解や意見を求める時、陳述書が提出された例はある。しかし、陳述書を出して疑惑の追及を終わらせたなどという話は聞いたことがないし、戦後の政治史における前例もないはずだ。

陳述書という言葉が頻繁に飛び交うのは、裁判所の法廷だ。民事訴訟では、証人に予定される人物は、まず裁判所に陳述書を提出する。裁判所が証人として直接話を聞くべきだと判断した場合にだけ、法廷での証言となる。そのための参考となるものが、陳述書。その内容が証言なしで事実認定されるわけではない。

それを高市首相は1通の陳述書だけで、サナエトークンや中傷動画など一連の疑惑に終止符を打とうというのだから国会軽視も甚だしい。そもそも、陳述書で話が済むのなら国会質疑は必要なくなる。

高市首相によれば、「近く」木下秘書が陳述書を国会に提出するのだという。だが、それは木下秘書の言い分だけを一方的に書いたもの。これまで、週刊文春や週刊現代、共同通信が先行して報道してきた疑惑と食い違う内容になることは目にみえている。

「裁判においての陳述書は、『公開の法廷でこのような話をします』という概要をまとめたもの。おそらく、木下秘書の主張が書かれた陳述書の内容が過去のマスコミ報道などと違いすぎるとして『国会で証言させろ』となるでしょう。要するに、陳述書を出した場合、疑惑に終止符を打つどころか、反対に木下秘書の国会証言が不可欠となる可能性が高くなるということ。高市首相に『陳述書』について諌言できる側近はいなかったということでしょう」(前出の自民党議員)

ただ、首相官邸は陳述書どころではない状況だという。ゴールデンウイークに外遊した高市首相が情報漏れを知り、帰国時にブチ切れたという情報が関係者の間に駆け巡った。官邸の関係者が声を潜めてこう話す。

「総理の支持率の高さから『官高党低』となっており、党より官邸の力の方が強い。そのせいで、いまの官邸は総理のいうがまま。風通しも悪い。抑え役もいません。外遊中の様々な情報が表に出たりするのは仕方がないことですが、官邸の人間が流しているとは限らない。総理はSNSなどで悪口を書かれることを非常に気にしており、ナーバスになっている。誰かが“陳述書”をアドバイスしたのでしょうが、マイナスにしかなっていない」

高市首相は「内閣広報官 @PressSec_JPというアカウントをXに開設。外遊に絡んでブチ切れたという情報についても《根拠なき「噂」や「伝聞」が独り歩きすることは、広報官としては「ナーバス」にならざるを得ず、事実に基づいて「火消し」させていただきます》と反論している。だが、サナエトークンと中傷動画疑惑は、Xで発信した程度で消えるものではない。

高市氏は、陳述書絡みで「ほとんど睡眠もとっていません」とも発言しているが、同じような場面を想起した人は少なくなかったはずだ。

1995年、雪印乳業(現在は雪印メグミルク)の製品によって集団食中毒が発生。記者から追及された当時の同社トップは「わたしは寝ていないんだよ」と捨て台詞を吐いて批判にさらされ、辞任に追い込まれた。別の自民党関係者が懸念を口にする。

「陳述書もお粗末だが、『睡眠とってない』もやばい。歴史は繰り返されるというが、あまり低レベルな発言ばかりだと、高市降ろしなんてことになりかねない」

高市氏を巡る疑惑の追及は止まらない。定数削減、副首都法案、皇室典範改正などの成立に手こずるようなら、7月17日で閉じられる予定となっている国会の会期も延長すべきという話が野党だけではなく、与党からも出はじめた。前出の旧安倍派議員が次のように指摘する。

「陳述書を出したとしても、週刊誌報道や野党追及と大きく食い違うはず。それなら木下秘書だけではなく、高市総理自身も参考人か証人として主張を披露し、スッキリさせるべきだ」

国会は、コロナ禍で外出制限される中でも開会して論戦を交わした。対面で主張を戦わせ、国民の負託にこたえていく場だからだ。高市首相は「陳述書を提出して、国会での御質問に対応しないという趣旨ではありません」と軌道修正したが、炎上は止まる気配さえない。

木下秘書の陳述書が出れば、次の展開が待っている。

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