「政権入りしたのに、維新の看板政策である大阪都構想がほぼ無理の状況だなんて、何のために連立を組んだのかって大阪の連中は怒り心頭です。もともと3回目はやらないということになっていたわけで、そこまで怒らなくてもいいんじゃないかと思うのですが……」と苦笑いしながら話すのは、大阪以外の選挙区で議席を得ている日本維新の会の国会議員だ。維新の内部にもかなりの温度差がある都構想だが、多額の税金を投じる住民投票で「否決」された場合、維新の代表を務める吉村洋文大阪府知事はどう責任をとるのだろう。
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維新の代表を務める吉村洋文大阪府知事は、高市早苗首相と会談。今国会で成立を目指す副首都法案について、原案の修正に応じることで合意した。維新の意向を踏まえてまとめられた「国家社会機能持続性確保施策及び副首都の整備に係る施策の推進に関する法律案要綱」という長ったらしい法律案が副首都法案の原案になる。
副首都についての議論は20年ほど前から国会でなされてきたのだが、高市首相が少数与党からの脱却を狙って維新との連立を決断。その際、維新が「12本の矢」として高市首相に出して合意した政策の中で「最優先」とされたのが副首都法案だった。だが、原案には大きな欠陥があった。付則に《大都市地域における特別区の設置に関する法律の一部改正特別区を設ける副首都の「都」への名称変更を可能とする》《特別区設置・名称変更について関連道府県の住民投票》という内容が記されていたのだ。
副首都法案が制定され大阪が副首都となった場合、大阪府を「大阪都」に変更する道筋ができる。そのために「特別区」を設置する際の住民投票を、大阪市だけではなく大阪府域に拡大して実施できるという内容だ。維新は、副首都法案に乗じて吉村知事自身が「3度目はない」としていた大阪都構想を実現させるという一挙両得を目論んだのだ(既報)。さすがに無理筋の話である。
「大阪市の廃止を決めるのに、大阪市の住民ではない大阪府の府民が入ってくるというのはどう考えてもおかしい。そもそも、大阪府が大阪都となることの意味がまったくわからない。大阪都になって急激に経済発展するという確証はなにもない」(大阪の自民党市議)
吉村知事は「住民投票を来年春の統一地方選に合わせて、大阪府域で実施」することを視野に副首都発言を繰り返してきた。住民投票は公職選挙法の範疇外。同法のもとで行われる地方選挙と、そうではない住民投票を同時に実施すると大混乱になることは誰の目にも明らかだが、吉村氏は意に介さなかった。
当然、自民党から猛反発が起きた。裏金議員の「親玉」でもある西村康稔選対委員長は、インターネット番組で「自民党はほとんどが反対。大阪都構想を(副首都法案という)政令に入れ込んで一体的にできるのかと憲法上の問題がある」と発言。珍しくまともな意見を述べた。
自民党は、大阪市の廃止と特別区設置の住民投票を大阪府域にまで広げる規定は、「住民自治」を定めた憲法第92条違反の可能性があると指摘。これは確かに的を射ている。
さすがに高市首相も、憲法問題まで持ち出されると抵抗できない。吉村知事との会談で「修正」を求めて合意。付則の条項は外されることになった。その後、維新では藤田文武代表ら幹部が所属の国会議員をすべて集めて会合を行った。
「いける言うとって、それがあかんってどういうことや」「最初の話とぜんぜん違うやないか」「大阪府でやらんと大阪都構想の住民投票は勝てない。負けたも同然」などという意見が噴出し、会議は紛糾した。前出の維新議員はこう話す。
「代表(吉村知事)は弁護士でもあり、党幹部もずっと『これで通る』と言い続けてきた。連立に入ったのは大阪都構想実現が一番の目的だった。それがダメになってしまい大阪の議員たちは怒髪天。一方で、私のような大阪以外の議員は憲法違反ならしょうがないよという雰囲気。濃淡があまりに違った」
もめた会合は、維新から唯一官邸入りしている遠藤敬総理大臣補佐官が「高市首相と吉村知事が話し合って決めたことだから」と必死で割って入り、ようやく終わったという。
「もともと、憲法違反との指摘があったんです。しかし維新は連立合意だとして譲らず、法案を無理やり通過させようとした。維新得意の『維新が行くからそこのけ』っていう大阪での戦法を国会でもやろうとしたが、さすがに無理だったということ。自民党の中には、憲法を無視する維新とはやってられないという声さえある。これを機に、維新の方から連立離脱を言い出してくれないかと期待している」(自民党関係者)
しかし維新の会議参加者によれば「連立離脱は誰も口にしなかった。やっぱり与党ってみんな気分がいいですからね」というのが実情。しばらくは連立に居座り続ける模様だ。原案が「修正」となって、大阪都構想の住民投票は大阪市のみでの実施がほぼ確実だ。過去2度の「敗北」や世論調査からも、都構想が否決されるのは必至。大阪都構想の住民投票にかかる費用は過去2度の例から約10億円とされており、さすがに3度目となれば大阪市民も呆れるだろう。それでも会見で「腹くくって勝負する」と吠えた吉村知事。結果が見えている住民投票に多額の税金を投じる意味があるとは思えないが……。















