北海道の警察署で7月中旬、現職警察官が誤って拳銃の実弾を発砲する事故が起きた。負傷者などはなく、被害は壁の破損で済んだものの、事故を知った北海道猟友会の現役ハンターは「銃を扱う感覚がおかしくなっているのではないか」と、地元警察の危機意識の不足に苦言を呈している。
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7月18日付の北海道警察の報道発表によると、実弾誤射事故があったのは北海道の空の玄関口・千歳市にある千歳警察署の庁舎2階廊下。17日午後8時19分ごろ、同署地域課の男性巡査部長(20歳代)が拳銃の点検中に誤って実弾1発を発射し、廊下の内壁を破損した。負傷者はいなかったという。事故に到る詳しい経緯を道警は発表していないが、複数の地元報道機関が伝えたところでは現場には巡査部長の上司が立ち会っており、銃の「点検」は上司の指示で行なわれていたという。週末の午後8時過ぎという時間帯に庁舎内で銃の点検をする必要があった背景などは、現時点でわかっていない。

地元報道を通じてこの誤射事件を知り「考えられない」と憤るのは、北海道猟友会砂川支部長の池上治男さん(77)。事故が発表通り「点検中」に起きたものだとしても「そもそも屋内で実弾を装填した銃を扱うこと自体、危機管理的にあり得ない」と指摘する。
「猟友会の会員が警察で銃の検査をする時とか、1発でも実弾が入っていたら即アウト、銃刀法違反です。自宅で保管する時も必ず『ガンロッカー』と『装弾ロッカー』は別々に置き、どちらも個別に施錠しておかなくてはならない。これを守らないと、やはり銃刀法の保管義務違反になります。ヒグマなどを駆除する現場で発砲を決断する時にしても、弾を装填するのは撃つ直前。弾を込めた銃を持ち歩くなんてもってのほかですよ。今回のように警察署内で、つまり屋内で装弾した銃を引き金に指をかけた状態で持っているなんて、ハンターなら絶対に考えられない。警察のいう『点検』が事実だとしても、屋内では模擬弾を用意するなり、いくらでも安全な方法があったはずです」
先述の通り、今回の事故では誤射の弾丸が警察署廊下の壁に被弾したとされる。池上さんはこれについても苦言を呈する。
「ハンターが猟銃を持つ時は、たとえ弾が入っていなくても銃口は上に向けておくのが常識です。たまに肩に担ぐクセのある者がいて、私は一度怒鳴りつけたことがあります。銃を担ぐと銃口が後ろに向く。もし後ろに人がいたら大問題です。飽くまで銃床は下、銃口は上。ところが今回、誤射の弾は警察署の壁に着弾したという。弾の入った銃を水平に持っていたことになり、これも絶対やっちゃいけないことです」
池上さんが地元自治体の要請でヒグマを駆除して警察・公安委員会に銃を取り上げられた事件については、本サイトなどがこれまで繰り返し伝えてきた通り。銃所持許可取り消し処分の撤回を求めて北海道を訴えた裁判は最高裁判所までもつれ込み、本年3月に池上さんの訴えを全面的に認める判決が確定した。公益性のある駆除行為が合法だったと認められるまでには8年という時間が費やされ(裁判提起からは7年)、この間各地で銃によるヒグマ駆除を自粛する動きが広がることになった。警察・公安委の誤った対応が結果としてヒグマ被害を拡げた可能性があるというわけだ。今回の誤射事件であきらかになった銃の扱い方も、一歩間違えば市民を危険に晒すことになりかねないと池上さんは指摘する。
「警察官が屋内で銃に弾を込め、引き金まで引いてしまう。そんな警察がハンターを取り締まってるなんて、おかしいことこの上ない。有害鳥獣の駆除を担うわれわれにはキツいことを言う一方、身内の雑な銃の扱いには甘い対応。警察がそんなことではやってらないと、ハンターはみんな思ってるはずですよ」
北海道警では今から4年あまり溯る2022年5月にも同様の誤射事件が発生。札幌市厚別区の高速道路交通警察隊庁舎で男性巡査部長(当時)が実弾1発を誤射し、会議室の内壁などを破損した。池上さんが指摘する通り、結果として当事者への処分は「身内に甘い」ものとなり、当該巡査部長は懲戒処分を免れて「警察本部長訓戒」に留まった。
これも本サイト既報の通り、裁判で完勝したはずの池上さんは問題の駆除に使われたライフル銃を検察に「廃棄」され、亡き知人の形見の1挺を永久に失うこととなった。この件をめぐって現在、代理人らが新たな国家賠償請求裁判の提起を検討中との情報が届いているところだが、現時点で提訴の有無は伝わっていない。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















