【福岡県議会問題】西日本新聞とTNCが扇動する「人民裁判」
この国で数々の冤罪を生んできたのは警察、検察、裁判所だが、責任の一端が報道機関にあることは疑う余地がない。時には、捜査当局と組んだ報道が「被害者」の人権や尊厳を脅かすことさえある。
1994年に長野県松本市で起きた松本サリン事件では、警察と大手メディアが第一通報者だった河野義行さんを犯人扱い。河野さんは深刻な報道被害を受けた。女子大生が殺害された1999年の桶川ストーカー事件では、デタラメな警察発表に乗ったマスコミが被害者を誹謗して事件の方向性を誤らせた。いずれのケースでも、証拠を持たずに警察や検察のリーク情報を鵜呑みにして騒ぎ立てた「メディアスクラム」が問題になった。
大手メディアは、なにかのきっかけで世間の注目が集まったとみるや、それまでの静観姿勢をかなぐり捨てて批判の対象を徹底的に叩く。全国注視となっている福岡県議会を巡る事案も、吉松源昭というカネで議長ポストを買った県会議員の「カツアゲ発言」で火が付き、それ以後は異常なほどの「個人攻撃」が続いている。水に落ちた犬は叩けとばかりに、普段はオールドメディアをばかにしているネット民まで攻撃に加わっているのだから始末に負えない。こうなると「人民裁判」である。扇動しているのは西日本新聞グループである。
■常軌を逸した西日本新聞の報道姿勢
人民裁判をリードしてきたのは西日本新聞と系列のローカル局「TNCテレビ西日本」だ。ターゲットになっているのは蔵内勇夫県議会議長で、両メディアの目的は、同氏の「辞任」に絞られた形となっている。
下は西日本新聞8月11日朝刊の紙面だが、繰り返し掲載されてきた過激な蔵内ネタで洗脳済みの読者は、この見出しだけで「蔵内氏は悪い人間」「県議会疑惑の元凶は議長」との思いを強くするはず。つまりは世論誘導。同紙には、公平性や人権を重くみる編集幹部がいないらしい。

蔵内氏について白黒をつけるつもりはない。同氏が、疑惑を持たれるような指示を行ったという証言はもちろん、現金受け取りの現場写真や音声データといった「クロ判定ができる証拠」を持ち合わせていないからだ。これはハンターだけでなく、すべてのメディアに共通しているはず。確たる証拠も持たず、証言だけに頼る報道が、幾多の人を傷つけてきたことは肝に銘じるべきだろう。
そうした中、17日に開かれた福岡県議会の臨時会は、前任者の辞職で空席となっていた副議長を選んだあと、金銭授受問題を調べる第三者委員会の設置を正式決定した。続いて行われる予定だった蔵内議長の辞職勧告決議案の採決は、自民党県議による採決中止を求める緊急動議が可決されたため見送られている。

西日本新聞をはじめ大手メディアは一斉に反発したが、前稿でも述べた通り、設置が予定される第三者委員会の検証過程をすっ飛ばして、いきなり蔵内氏を辞めさせろというのは間違いだ。何のための第三者委員会なのか?
そもそも、第三者委員会の設置を求める要望書を提出したのは吉松県議本人。その吉松氏が、県議会で第三者委員会の設置を正式決定するその日に、一足飛びに議長の辞職勧告決議案を提出するというのは理屈に合わない。日弁連のガイドラインに沿って選ばれた弁護士らが金銭授受疑惑を検証して結論を出す前に、蔵内氏を追い込まなければならない別の理由があったとしか思えない。
西日本新聞は、吉松氏が提出した議長の辞職勧告決議案に同調する姿勢だったが、採決中止を受けた同紙はさっそく自民党県議団に怒りの矛先を向けた。下は8月19日朝刊の紙面。「もう支援できない」などという一部の県民の声を盾に、決議中止に賛同した議員を痛烈に批判する内容となっている。第三者委員会が発足していない時点での辞職勧告決議に反対するのは当然なのに、意に沿わぬ行動を示した議員らを一方的に叩くという異常さだ。偏向報道の最たる例でもある。

■政治テロ
カツアゲ発言、第三者委員会の設置要望、そして議長辞任勧告決議案――。吉松氏がパフォーマンスを行うたび、そこには西日本新聞とTNCの記者が待ち構えているという。示し合わせた共同作業にしか見えないが、これだけ続けば、政治テロ的な報道だと言わざるを得なくなる。
吉松氏は、自民党員でありながら党の公認候補がいる福岡4区に無所属で出馬するという反党行為に走り、党から離れた。吉松氏にとって、県政界の重鎮であり、事実上自民党県議団を束ねる存在とみられてきた蔵内氏は「最大の政敵」だ。一連の“パフォーマンス”が、蔵内氏追い落としを図るための動きだとすれば、吉松氏と共同歩調をとる西日本新聞やTNCは、政治的な思惑をも共有していることになる。やはり偏向報道ということだ。
最近の西日本新聞は、県議会関連の記事の大半に蔵内氏の写真を掲載し、いわゆる「印象操作」を繰り返してきた。LINEで友だち登録している読者にアンケートを行い、カツアゲ発言を行った県議の信用性を問うという「お手盛り調査」までやっている(既報)。これには西日本新聞の社内からも、「やり過ぎじゃないか」という声が上がっていると聞く。やり過ぎというより、過剰なまでの個人攻撃は明らかな人権侵害。殺人事件の犯人についてでさえ、ここまで叩かれた特集記事は見たことがない。

■ワンヘルスを宣伝していたTNC
18日の臨時会前後から、中堅や若手の県議らによる現状批判のコメントが増えはじめた。要は“蔵内氏さえ辞めてくれれば事は収まる”という意識の裏返しだ。来年の統一地方選挙を睨んでのことだろう。だが、「ちょっと待て」と言いたい。
海外出張の際の旅費や部課長会によるパーティー券購入などの問題を最初に取り上げたのは西日本新聞だ。しかし、本来県政全般を監視する機能を果たすべきは県議会議員。「何も知らなかった」では済まされない。黙認してきたというのが本当のところだろう。今になって、すべてを蔵内氏に押し付けて悪者扱いというのは虫が良すぎるというものだ。恥を知れと言いたい。
地元メディアも、決して正義の味方とは言えない。批判の対象になっている「ワンヘルス」を散々持ち上げてきたのは新聞やテレビ。特集を組んでワンヘルスを宣伝してきたテレビ局もある。それが、今になって蔵内氏とワンヘルスを徹底攻撃しているTNCだ。同局は2024年9月から情報番組「CUBE」の中でワンヘルスの特集コーナーを設けて4回にわたり放送、もちろん批判ではなく事業を宣伝する内容だった。このテレビ局も恥知らずなのだ。
■西日本新聞に問う
改めて西日本新聞に問いたい。
・福岡県議会に浮上している海外旅行の旅費や金銭授受に関する問題のすべてが、蔵内氏の指示によるものだという証拠があるのか?
・疑惑の段階で、特定の個人に全責任を負わせるような過剰な報道が認められるのか?
・県議会問題の中の蔵内氏に関する貴紙の多くの記事は、冤罪を助長してきた大手メディアの姿勢に通底しているのではないか?
・設置が決まった第三者委員会で蔵内氏に責任はなかったという結論が出た場合、西日本新聞はどう責任をとるのか?
・吉松氏の政治資金疑惑に触れようともしないのはなぜか?
・吉松氏が2,000万円を支払ったという話が事実なら、それは単なる賄賂ではないのか?
・西日本新聞やTNCが金銭疑惑追及の根拠にしてきたカツアゲ発言の吉松源昭県議だが、自信を持って正義の人と言えるのか?
県議会特集を「新聞協会賞」に応募した西日本新聞だが、受賞しても部数が増えるわけではなさそうだ。10年前に70万部あった同紙の販売部数は、毎月数千部ペースで減り続け、昨年12月の段階で半分以下の約32万7,000部。今年に入ってもこの傾向は変わらず、現在は31万部台に落ち込んでいるという。理由を探すのは簡単。面白くないからだ。連日続く県議会ネタに、辟易している読者は筆者だけではないようで、ハンターには「西日本新聞は蔵内氏に恨みがあるんですかね?」「西日本新聞が吉松氏の政治資金問題を扱わないのは、やはり自分たちにとって都合が悪いからでしょうか?」「県議会の話はもうたくさん。他に報じなければならない話がたくさんあるはずです」といった声が寄せられ始めている。

ポピュリズムに走って人民裁判を煽る西日本新聞だが、平気で嘘をつくし、約束も守らない会社であることも付言しておきたい。いずれ同紙の正体を詳しく報じることになる。
(中願寺純則)















