福岡県議会の金銭授受疑惑に火をつけたカツアゲ発言の吉松源昭福岡県議会議員が、「裏金1,000万円」の新証拠だとする銀行通帳のコピーを第三者委員会に提出し、会見で報道陣に公表した。おかしな話だが、報道各社は吉松氏の説明をそのまま報じただけで、この件の違法性には一切触れていない。そもそも、通帳のコピーと吉松氏の主張は「政治資金規正法違反(不記載)」を自認したも同然の内容。さらにこのコピーは、過去に同氏が公表した「借用証書」との整合性が問われかねない「証拠品」となっている。

■「不記載」の可能性
結論から述べるが、吉松氏の資金処理方法は、政治資金規正法上の「不記載」に該当する可能性がある。
報道各社に対して吉松氏が示した預金通帳のコピーと同氏の説明を総合すれば、“令和元年10月11日に知人から借用した1,000万円が、知人の会社から「自由民主党福岡県粕屋郡第一支部」の口座に振り込まれ、同月15日に引き出した。個人で借りたカネだが、自民支部への入金は知人が間違って振り込んだものであるため、当該年の政治資金収支報告書には記載しなかった”というストーリーになっている。なぜ個人への貸付金が、政党支部の口座に振り込まれたのか判然としないが、新聞各紙の報道の中では、読売新聞9月30日朝刊の記事が一番詳しい。

*読売新聞9月30日朝刊の紙面より
仮に“誤って振り込まれた”という話が事実だとしても、入金と出金の事実が銀行口座の通帳に記録として残った以上、会計帳簿と政治資金収支報告書には、政治資金規正法が定める規定に従って、一連のカネの動きを記載しなければならない。しかし、吉松氏も認めている通り、同年の収支報告書には、該当するカネの動きが記載されていない。県公報(*下の画像)で確認したが、自民党福岡県粕屋郡第一支部が福岡県選挙管理委員会に提出した令和元年の収支報告書には1,000万円という企業からの寄附も借入の記載もなかったことが分かる。

政治資金規正法は、1月1日から12月31日までに発生したすべての収入と支出を会計帳簿に記載、それを一定のルールに従って政治資金収支報告書に転記し、所管する選挙管理委員会に提出するよう義務付けている。「誤って入金されたから報告しなかった」という言い訳が通用するとは思えない。この点について福岡県選挙管理委員会は、一般論と断った上で「政党支部や政治団体の口座に入金されたのであれば、間違いであったとしてもいったん収入として計上し、その支出先も記載しなければならない」としている。
そもそも、「誤って入金されたから報告しなかった」などという吉松氏の言い訳が通れば、違法な献金を隠す道を容認することになる。もちろん、そんなことが許されるはずはない。報道各社の記事を見る限り、通帳の入出金状況ばかりを報じているが、それが政治資金規正法上、どのような会計処理を必要とするのかについての検討は尽くされていない。違法行為の可能性があることに気付かなかったのか、あるいは分かっていて吉松氏の主張を受け入れたのか――いずれであるにせよ、持ち上げたカツアゲヒーローのブラックな面には、触れないでおこうということなのかもしれない。
■問われる「借用証書」との整合性
吉松氏は、今年7月に西日本新聞とTNCテレビ西日本のインタビューに答えて正副議長就任に絡む金銭授受疑惑を告発した際、1,000万円の原資について「知人から借り入れた」と説明。500万円2枚の「借用証書」を公表した(*下の画像参照)。

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吉松氏は、TNCに対して「10月11日に1,000万円を二つに分けて500万円ずつ借りた」と証言した模様だが、口座には1,000万円が一括して振り込まれている。なぜ500万円2枚の借用書になったのか謎だ。500万円2本の借用証書と、一括1,000万円の銀行振込がどのような関係なのか、第三者委員会での調査を待つ必要がある。
「『知人の会社』が誤って自民支部の口座に振り込んだ」という吉松氏の説明にもクエスチョンマークが付く。貸主側は自民支部の口座を知っていたということになるが、1,000万円もの大金を、振込先も確認もせずに送金するものだろうか?この点についても、今後の調査結果をみるしかない。
ちなみに、通帳のコピーにある(213)について確認したところ、これは地場銀行の県庁内支店の店番を示す数字。吉松氏が1,000万円をおろしたのは県庁内にある銀行の支店だった可能性がある。
吉松氏は15日に現金を用意して県議団の部屋のロッカーに保管したと話している。すごい金銭感覚だ。しかも、「探しまして、やっと出てきた」という新証拠はA4判の1枚紙。通帳の現物がないのに、1,000万円の記載部分だけをコピーして残していたという話も、にわかには信じがたい。実はこれこそが通帳コピーに関する最大の謎なのだが、報道各社の記者たちがその点を厳しく追及した形跡は見当たらない。元議長への忖度を問題視してきた大手メディアの記者たちが、カツアゲ発言の吉松氏に忖度している格好。滑稽というしかない。
(中願寺純則)















