被害告発から1年を経てなお解決を見ない北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で7日午後、地元議員が改めて北海道庁の動きの鈍さを指摘、問題への主体的な対応を求めた。
学院では9月初旬の時点で一部の後期授業が開講しており、議会では休学中の学生などへの情報提供の不充分さも浮き彫りになった。
◇ ◇ ◇
同日招集の道議会保健福祉委員会で質問に臨んだのは、ほぼ毎回この問題を追及し続けている同委の平出陽子議員(民主、函館市)。「事実調査の進捗がまったくわからない」と切り出した同議員は、パワハラ問題を受けて道が設置した第三者委員会による被害調査について、道の担当課がホームページ内で公表している議事録がほぼ白紙となっていることを指摘(下の画像参照)、「道民の知る権利を阻害している」と指弾した。道はこれに「今後は調査件数などの具体的な情報も公表していきたい」と答弁、調査の進捗については「現在は個々の事案の事実確認にあたっているほか、教職員へ追加の聴き取り調査を予定しているところ」と明かした。
告発のあった江差看護学院では昨年度末、複数の学生が教員のパワハラを苦に休学を届け出た。休学者の中には10月の後期授業開講時に復学を考えていた人が複数いるが、一部の授業については9月上旬から後期授業が始まっている。
当事者がこれを知ったのは開講直前の8月中旬のことで、突然の対応に途惑った保護者の要望を受け、道は急遽「リモート受講」による単位取得を認めることにしたという。7日の議会では、平出議員がこうした不充分な情報提供に苦言を呈することになる。
「後期授業を受けたいと希望する学生たちには、きちんと情報が伝わっているのでしょうか。『何度も問い合わせをして、やっとオンライン授業に参加できることになった』という話も聴きました。これでは、問い合わせをしない学生には情報が伝わらないのではないか。『学生に対し、救済方法を考えております』と答弁している割にはお粗末ではないかと思うんです」
指摘を受けた道は「事前の丁寧な情報提供に努める」と答弁、可能な限り学生の意向に沿った学習環境の確保に努めるとした。ただ、この時点ですでに9月第1週を過ぎており、議員指摘の通り救済策としては「お粗末」と言わざるを得ない。
10月からの授業も開講目前となり、残る僅かな時間でパワハラ認定、救済策確定、及び教員の処分が可能なのか、道にはスピード感のある対応が求められるところだが、問題解決の目途は未だに立っていない。平出議員は7日の議会質問を次のように締め括った。
「学生や保護者に言われないと、道は動きません。議員に質問されないと、道は動きません。だから私は、しつこく質問するんです。以上」
江差看護学院のパワハラ問題で複数の保護者から道への匿名告発があったのは、昨年9月のこと。問題はなお解決を見ないまま、2年目に突入する。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |
*「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」公式サイト⇒https://esashi-seijo.main.jp/