弁護士議員が秘書給与詐取|自民党・広瀬めぐみ氏の暑い夏

「これから大きな騒ぎになる。頭が痛い。あの人、本当に弁護士だったのか」と愚痴っているのは、ある自民党幹部。7月30日、東京地検特捜部は参院岩手県選挙区選出の広瀬めぐみ参院議員(捜索後、自民党離党)の自宅、議員会館事務所などの強制捜査に着手した。国から公設第2秘書の給与をだまし取ったを詐欺の疑いだ。

◆   ◆   ◆

昨年7月、広瀬氏は自民党女性局のフランス研修に参加。パリのエッフェル塔前で、観光気分の写真をSNSで投稿し、松川るい参院議員とともに大炎上した。

今年2月には、赤いベンツで男性とホテル出入りするツーショット写真を週刊新潮に撮られ再炎上。広瀬氏は不倫を認めて、謝罪していた。

特捜部の捜査対象となった広瀬氏の犯行は公金詐欺。公設第1秘書であるM氏の妻を2022年12月から23年8月まで公設第2秘書に採用。まったく勤務実態がないにもかかわらず、国から秘書給与を入金させ、M氏を通じて、上納させて騙し取るという手口だ。金額は約400万円とされており、週刊新潮は、一連の記事で広瀬氏の詐欺疑惑も指摘していた。

「週刊新潮で赤ベンツ不倫を暴露された時は、なんとか乗り切ったが、秘書給与の詐取はいずれ問題になるだろうと見ていた。支持率の低空飛行が固定化しつつある岸田政権が広瀬氏を切ればさらに批判が強くなり、詐欺も認めた形になる。辞任させれば補選になるので、嵐が過ぎ去るのを待つしかない」(前出・自民党幹部)

M氏は岩手県遠野市で不動産会社を経営し、妻は手伝いをしている。地元商工会の役員にも名を連ねており、広瀬氏の地元後援者は次のように話す。

「Mは地元で広く名前が知られている人物。広瀬さんの公設第一秘書になってからは、不動産業と掛け持ちで忙しそうにしていた。そのうち不動産会社をずっと切り盛りしていた奥さんも秘書になったと聞き、夫婦2人で大丈夫なのかと疑問の声があがっていた。広瀬さんは以前からあまり地元に戻らず、エッフェル塔炎上に赤ベンツスキャンダルで、ますます選挙区から遠のいていた。地元は完全に秘書任せでM氏の負担も大きく、大変そうでしたね」

東京地検特捜部は、週刊新潮の報道後に刑事告発を受け捜査に乗り出していたようで、広瀬氏の秘書経験者が次々に呼び出しをう受けていたという。

「広瀬さんの秘書経験者や事務所に出入りしていた関係者なら、M氏の妻が『幽霊秘書』であることは百も承知でした。広瀬さんは週刊新潮に書かれてからアピールするためか、M氏の妻に車の運転手をさせるなど取り繕っていた。だが、特捜部から事情聴取を受けると、M氏も妻も、名義貸しの『幽霊秘書』であることや、広瀬さんの指示で秘書給与を上納させられていたことを自供したそうです。名義貸しの提案は広瀬さんで、給与はM氏が現金で広瀬さんに手渡していたと聞いている」(前出の地元後援者)

弁護士でもある広瀬氏も、身辺が騒がしくなりそうなことはわかっていたはず。それでも広瀬氏は、「もう次の参議院選挙には出馬しない」、「弁護士の方が稼げる」、「参議院議員になって叩かれるばかりだ」などと大好きな酒をあおっては愚痴るばかりだったという。

これまで国会議員による秘書給与の詐欺事件は何度も問題になってきた。2002年、現在は立憲民主党の辻元清美参議院議員が公設秘書に勤務実態がない人物を起用。月に5万円の「名義貸し」への報酬を支払い、1,880万円もの秘書給与を詐欺した容疑で逮捕・起訴され、有罪判決が確定している。

2004年には、佐藤観樹元国家公安委員長も約1,700万円の秘書給与をだまし取ったことが発覚し、実刑判決となっている。

自民党のベテラン秘書は、こう話す。
「辻元さんの事件までは、秘書給与を懐に入れる議員が与野党を問わずかなりいた。手口は簡単で、知り合いに声をかけて公設秘書にし、いくばくかの名義代を払って差し引いた分を全額現金でもらうというもの。また、公設秘書として勤務実態があっても『月に10万円寄付してくれ』などと条件をつけて採用するケースもあった。広瀬氏の場合はM氏を公設第一秘書で雇うというのが名義代のようなものだったのかもしれない。議員報酬は年間約2,400万円もあり、そこに領収書不要の月額100万円の調査研究広報滞在費(旧・文通費)が加わる。本当に議員活動していれば、秘書給与に手を付けるなんて必要はありません。つまりは飲み代、遊び代がほしいだけ。広瀬氏をみていればよくわかりますよね。週刊新潮に出るまで不倫は知らなかったが、本当によく夜の街で顔を見ていた」

週刊新潮で報じられた直後、広瀬氏は自身のホームページで《平日は主として遠野市に在住してリモートワークで支援者の方々のリスト作成・更新作業や祝文作成などをし、土日は盛岡に在住して、上記のような作業のほか、盛岡事務所で事務作業をしたり、私の駅などへの送迎をしてもらったりしました》、《公設第二秘書としてしっかり勤務実態があったことに間違いありません》と反論していた。しかし、当事者のM氏までもが「幽霊秘書」を認めている模様で、広瀬氏にとっては、厳しい現実が待ち受けていると言えそうだ。

「辻元氏の1,880万円と比較すれば400万円というのは低い金額に見える。しかし、原資は国民の税金であり、悪質性は同じ。おまけに広瀬は弁護士でもあり、秘書給与の詐取が犯罪になることは、当然わかっていた。税金でまかなわれる公設秘書の給与を懐に入れながら、申告もしていないはず。いわば裏金作りであり、非難は免れない。公設第一秘書の妻を第二秘書にでっち上げたというのは、ある意味、口封じ的なもので非常に悪質だ」(事情を知る関係者の話)

強制捜査後、自民党を慌てて離党した広瀬氏だが、議員バッジはそのままだ。Xデーを待つ暑い夏になった。

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