自民党の圧勝で終わった衆議院選挙では、福岡県内11選挙区のうち福岡9区 を除く10選挙区で自民党が勝利した。いずれの選挙区も自民党公認候補が大差をつけて勝利したのだが、公示を2日後に控えた1月25日、北九州市内で買収を疑わせるような会合が開かれていた。
■会費2,000円で約4,000円のプラン
「買収されたと思われたくなかったので参加しなかった。会費より高い金額の料理を出すというんだから、危ないに決まっていた」――そう語るのは、福岡10区内に住むある男性。 手にしているのは《自民党衆議院福岡第十選挙区支部 支部長 吉村はるか 2026 新春の集いのご案内》と記されたチラシだ。

吉村悠氏は、先の衆院選で中道の城井崇氏らを破り初当選を果たした前途有為な新人代議士。チラシの内容は、1月25日正午から北九州市小倉北区のカラオケ店Aで、「新春の集い」と称して会費2,000円で飲食付きの会合が開かれるという案内だ。吉村氏の資金管理団体「吉村はるか後援会」が主催する会合だが、政治資金規正法上の「政治資金パーティー」であることを示す記載はない。
前出の男性がこう話す。
「1月に、ある神社でとんど焼きの神事がありました。そこには、地元の国会議員や県会議員も来ていて住民と交流していた。とんど焼きが終わった時に吉村さんがやってきた。そばに彼の支援者がいたのか、吉村さんは皆の前で、自民党10区の支部長だと挨拶。解散総選挙になるという報道が出た直後だったので、神事に乗じて選挙を意識させる挨拶はいかがなものかと思った。しばらくその場にいて住民同士で話をしていた時に吉村さんから配られたのがこのチラシです。そして吉村さんは、『3,500円か4,000円はする料理を2,000円で食べることができますから、ぜひ来て下さい』と言ったのです。こりゃ危ないと思いました。もちろん参加しませんでした」
カラオケ店Aは地元で有名な店だ。1階には大きなフロアがあり、そこではパーティーなどが開催できるという。男性も、何度か利用したことがあり、バイキング形式にドリンクがついて1人3,500~4,000円程度のプランがあったことを覚えていた。それが2,000円でいいと聞けば、喜んで行くか、危ないと感じて参加を控えるかのどちらかだ。
カラオケ店Aについてインターネットで検索すると、男性の言葉通り、40人以上なら税別4,000円弱でバイキング形式の食事と飲み放題のプランがあることが確認できた。
では実際の「新春の集い」はどのような様子だったのか?じつは吉村氏自身が、新春の集いで気勢を上げる写真と文章をSNS上に投稿していた。(*下は吉村氏のインスタグラム投稿。赤い書き込みはハンター編集部)

《正午からは、小倉北区内で、新春の集いを開きました。もともと予定していた新年の催しでしたが、急な解散となり、やはり「やっときたね」「頑張ってね」との声を多数いただいたところです。門司区、小倉北区、小倉南区の福岡10区だけでなく、200人を超える支持者の方々に参加していただきました》などと記され、会場の画像もアップロードされている。ご丁寧に《27日は公示》《出陣式は11時から堺町公園》《総決起大会は2月3日午後6時から》などと選挙期間中の予定まで事前予告していた。
出陣式や公示後の総決起大会(*法的には個人演説会)は選挙運動の一環。吉村氏がSNS上に投稿した文章の記述には「事前運動」の疑いがある。
カラオケ店Aのプランが1人3,800円(税別)とする。これに対し、吉村氏側が徴収した会費は2,000円。つまり1,800円プラス消費税の差額を吉村氏側が負担した可能性がある。当然、「差額買収」の疑いが浮上する。
「差額買収」で知られるのは、安倍晋三元首相と小渕優子氏。安倍氏は、自身が総理の座にいた2015年から2019年の春に開催された「桜を見る会」とその前夜祭に地元の有権者らを招待。東京の高級ホテルで開催された前夜祭は一人5千円を会費としており、差額分を安倍氏側が負担していた。安倍氏側の負担額は5年間で800万円以上。政治資金規正法違反で刑事告発され、安倍氏の公設第一秘書、配川博之氏が略式起訴され有罪が確定している。
一方、小渕氏の事件はこうだ。2010年と2011年に行われた東京の明治座での観劇会で、小渕氏側が参加者から徴収した会費は合計で約740万円。しかし、明治座には3,300万円あまりを支払っていたことからその差額である約2,600万円が問題となった。東京地検特捜部は、小渕氏の元秘書らを政治資金規正法違反で起訴。この件でも有罪が確定している。
小渕氏の事務所が強制捜査に備えて証拠となるパソコンのハードディスクをドリルで破壊したことが判明し、以後、小渕氏に「ドリル優子」という不名誉なニックネームがつけられたことは周知の通りだ。
■吉村氏側は差額買収を完全否定
吉村氏の場合も構図は同じ。それどころか、前述したように選挙運動の告知までやっている。吉村氏側はどう考えるのか――?
「吉村はるか後援会」の事務所に連絡し、同団体の会計責任者に話を聞いたところ、差額買収との指摘を完全否定。買収疑惑や事前運動との指摘について、次のように説明している。
・会費は2,000円で間違いない。食事に飲み放題を付けて4,000円ほどのプラン。
・ただし、150人分しか頼んでいなかったので、参加者全員に食事は行き渡っていなかった。足りなかったということ。
・2,000円分に満たない食事や飲み物しか出ていないのだから差額買収にはならない。
・出陣式や総決起大会などの予告については、今後十分気を付ける。
この説明についての評価は読者の判断に委ねるが、実際に新春の集いに参加した人は、次のように話している。
「吉村さんの新春の集いには毎年行ってます。料理は4,000円くらいのコースで、それが2,000円なので得した感じ。今年は早めに会場に行きました。食事とビールなどは十分堪能できました。確かに、後から来た人はあまり食べ物はなかったかもしれないね。買収とか考えなかったけど、選挙がすぐだと分かっていたから、派手に飲食していいのかなとは思いましたね」















