「こんなに増えるとは、びっくりだよ」と顔をほころばせるのは、自民党で唯一残った派閥「麻生派」(=志公会)所属の中堅議員だ。2月19日、衆議院選挙後はじめて麻生派が例会を開催。新たに18人もの入会が発表され総勢60人となった。党内最大の政治勢力である。
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昨年の自民党総裁選で、高市早苗首相誕生の原動力となった麻生太郎副総裁率いる麻生派。新たにメンバーに加わったのは、落選していた伊藤信太郎元環境相などの復帰組が4人、北神圭朗氏(元有志の会)阿部弘樹氏(元日本維新の会)ら他党、他会派から3人、残り11人は新人議員だ。
衆議院選挙前は過半数割れで苦しんでいた自民党にあって総裁選前後から議員会館でリクルートに動いていたのが麻生氏だった。トレードマークの帽子をかぶって“お供”と番記者を連れ、議員会館を動き回る麻生氏の姿が頻繁にみられていた。
総裁選直後、ハンターの記者が確認していたのは、北神氏との会談に臨んでいた麻生氏の姿。北神氏は、首班指名で高市首相の名前を書いていた。
同氏はかつて旧民主党の所属。内閣総理大臣補佐官も経験した「野党系」とみられていたがあっさり自民党入り。解散総選挙となり、自民の公認候補となった北神氏は地盤である京都4区から出馬、対立候補が共産党のみだったため圧勝した。
「北神氏が自民党入りするのは既定路線だった。京都4区から出馬したいという希望者はいたが、麻生先生がすでに党本部を押さえ込んでいた。もちろん北神さんのため。見えないところでしっかりと世話をするという、派閥ならではのサポートが18人という大量の入会者につながった」(前出の麻生派議員)
新たに入会した11人も、大半が麻生氏の息がかかった議員たちばかり。阿部氏は維新を離党後、麻生氏から直々に首班指名への投票や自民党入りの要請を受け、比例ブロック九州単独で出馬していた。
かつて、維新から衆議院選挙に出馬した経験がある金沢結衣氏は麻生氏の最側近である甘利明元幹事長の地盤、神奈川20区を継承。同じく元維新の衆議院議員だった河野正美氏も、麻生氏の後押しがあって比例九州ブロックでの再選を果たしている。
別の麻生派関係者によれば、まだ派閥入りには至っていないが「予備軍」も控えているという。
数が増えればトラブルの種も増える。伊藤元環境相は、初入閣した際に旧統一教会との関連があったことが判明。復活組の中山展宏元国交副大臣に至っては、旧統一教会問題との関連などから前回(2024年)総選挙で落選。従来の地盤である神奈川9区の支部長を解任されていたが、比例四国ブロック単独で出馬し、当選している。いずれも落選の可能性が高い比例の順番だったが「高市旋風」に救われた形だ。
自民党が一昨年の衆議院選挙で過半数割れした要因は「裏金」と「旧統一教会」の2つ。ある自民党の閣僚経験者は次のように危惧する。
「今回の衆議院選挙で勝ったのはいいが、裏金議員と旧統一教会関係の、まあ、いわゆるキズモノが復活している。裏金議員や旧統一教会との関係がある人物を、小選挙区から出さずに比例単独としていたが、ここまで大勝ちするとは高市総理も読めなかった。問題のある議員が増え過ぎたため、裏目に出る可能性は否定できない。スキャンダルで、ということ。今は高市人気の陰に隠れているが、ブラックな面がいつ露呈するかわからない」
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もう一つ問題がある。麻生氏の力が強大化し過ぎていることだ。毎回の総選挙で永田町の注目を集めるのは、麻生氏の出処進退。本当に出馬するのか、それとも後継者に譲るのか、誰もが気になるところだ。
衆議院の解散から投開票まで16日という史上最短の選挙戦だったことから麻生氏自身の出馬となったが、地元の有力後援者は次のように話す。
「この10年くらい、常に地元で懸案事項となってきたのが麻生先生の後継者問題。今は元気でも、いずれは後継者が必要になる時期がきます。史上最短の選挙となったので後継を考える暇すらなかったですが、今回も盤石の戦いで全国で一番目の当確。ただし、麻生先生の引退が視野に入っているのは事実。ご子息に地盤を譲ることになるでしょうが……」
麻生派内部でも「麻生会長の後継はどうなるのか?後に藩閥を託すのか」と先行きを心配する声が出ていたのは確かだ。だが、キングメーカーとして君臨する麻生氏のパワーはますます高まるばかり。前出の閣僚経験者が現状を次のように分析する。
「党内で高市総理にものが言えるのは、麻生副総裁くらいしかいない。高市さんは解散総選挙に踏み切ることを副総裁に相談していなかったらしいが、ご機嫌取りに何度も電話をしていたそうだ。選挙で勝ったが、麻生派が新人を何人も取り込んだことで、麻生先生の声が高市政権に与える影響はますます大きくなった。しばらく麻生先生の引退はないだろう。こうなると旧岸田派や旧茂木派などが、派閥復活を言い出しかねない。新たな派閥を結成しようという動きにもつながりかねない。とりわけ、裏金事件の舞台になった旧安倍派人数も多く、派閥復活の時期を虎視眈々と狙っているはず。高市総理自身に、旧安倍派の連中が『高市派をつくるべき』と進言しているとの情報さえある。国民を甘くみるといけないと思うがね」
自民党大勝の裏で「表の高市・裏の麻生」という支配構造が広がりつつある。














