久留米市長選出馬意向の県議会副議長に「無責任」「政治資金詐欺」の厳しい批判

 「議会軽視」「有権者無視」「政治資金詐欺」――この議員は、そうした県民の声にどう反論するのだろうか?

 来年1月に予定される久留米市長選挙に、福岡県議会議員の十中大雅氏が出馬する意向であることが、地元紙などで報じられた。十中氏は現職の副議長、しかも今年6月末に就任したばかりでその職をまともに務めたのは9月議会の1カ月間だけというから無責任とのそしりは免れまい。しかも、つい1か月前には副議長就任をネタにカネ集めまでやっていたというのだから、呆れた御仁と言う他ない。

■ひと月前に「副議長就任祝賀会」でカネ集め

 下は、十中氏のホームページにある経歴。何かに驚いたような表情で両手をあげているのが、ご本人だ。議員秘書から久留米市議、市議会議長、そして県議へと政治経歴を重ね、当選4回でようやく副議長の座を得た叩き上げだ。

 その十中氏は今年10月5日、福岡市内のホテルで「福岡県議会副議長就任祝賀会」という名称の政治資金パーティーを盛大に開き、カネ集めを行っていた。下の画像は、当日夜に別の福岡県議がフェイスブックに投稿した会場の写真である。

 服部誠太郎福岡県知事や日本獣医師会会長の蔵内勇夫県議など、県政財界の重要人物が駆けつけた副議長就任祝賀会の会費は、国会議員並みの20,000円。頼まれてパーティー券を買ったというある経済人は、呆れ顔でこう話す。
 「千万単位のカネがあつまったんじゃないのかな。コロナで密を避けた形だったけど、かなりの人数が参加していたよ。それが1カ月経つか経たんかのうちに今度は久留米市長選?まるで、政治資金詐欺じゃないか。任期途中で副議長を辞めるんなら、十中は集めたカネを返すべきだろう。(祝賀会の)発起人や来賓に対しても言い訳できる話じゃない。本当に市長選にでるのか疑問だけど、記事になったところをみると、新聞記者に出馬の意向と言ったんだろうね。軽率だし、無責任。市長の器ではないな」

 別の県政界関係者も、憤りを隠そうとしない。
 「ふざけた話だ。どうしても副議長になりたいと懇願しておいて、市長選に出るから辞めるというのだから筋が通らない。市長選の話はずいぶん前から出ていたから、十中は副議長就任の時に、自民党県議団からきちんと任期を勤め上げるのかどうかの確認をとられている。何が起きているのか知らないが、あまりに無責任。県議会や県民に対し、いかなる言い訳をしても済むような話ではない」

■渦中の十中氏を直撃してみると・・・

 県議会副議長の職を放り出して市長選に出るという十中氏の姿勢をどう思うか久留米市民に取材してみたが、評価する声は皆無。厳しい批判や疑問の声ばかりだった。副議長就任祝賀会のパーティー券を買ったという複数の企業経営者は、前出の経済人同様、全員が「詐欺」という言葉を用いて十中氏を非難する始末だ。

 こうした事態になるのは十中氏自身も分かっていたはず。では、なぜ唐突に市長選出馬を思い立ったのか――?11日午後、ハンターの記者がリモートで十中氏を直撃した。以下、やり取りの概要である。

記者:新聞報道で久留米市長選に出馬する意向を示したとあるが、間違いないか?
十中:いやいや、まだ議員をしとりますし、辞職もしとりませんし、新聞の方が早合点じゃないけども、そういうとられかたををしていますけども、私はまず自民の身をきちんと処置してしか、正式に言えないと思っている。

記者:ということは、そのあたりが解決すれば、出馬する意向を持っているということか?
十中:そういうことですね。

記者:確認だが、副議長就任は今年の6月末?
十中:6月22日です。

記者:9月議会は9月10日から10月14日までの約1か月。副議長として働いたのは、実質1カ月ということでいいか?
十中:だから、5カ月目になりますね。今月で。

記者:副議長として議会運営にあたったのは約1カ月ということでいいか?
十中:はい。

記者:10月5日に副議長就任祝賀会という政治資金パーティーを開いていたが、会費はいくらだったか記憶しているか?
十中:2万円です。

記者:パーティー券を買ったという複数の人が、“政治資金詐欺だ”と怒っているが、そうした人たちにはどう説明するのか?
十中:そういうお叱りは、当然だと思います。

記者:そうまでして市長になって、何をしたいのか?
十中:そういうことを具体的に言えるような立場ではないと……。

記者:立場ではないが、新聞が先走った?
十中:はい。自分の言い方も悪かったのかもしれません。

記者:しかし、議会関係者の承認が得られれば、市長選には出る?
十中:まあ、副議長になる時には、皆さんからご推挙をいただいているわけですから……。

記者:副議長に就任する際、議長を助け任期を全うするといった内容の誓約文書を書いていないか?
十中:……。

記者:書いたかどうか?
十中:議長には書いていません。

記者:一筆書いたかどうか?
十中:いや、それはもう……。はい。

記者:書いた、と?
十中:はい。

記者:それでもう一度聞く。新聞が先走ったが、議会関係の処理が済めば出馬する意向はあるということでいいか?
十中:はい。

 十中副議長が、議会関係者に相談しないまま、新聞記者に「出馬の意思あり」と口走ったのは確かだ。いまになって慌てている様子が感じ取れる。この方が市長として適任かどうかを決めるのは久留米市民だが、地域の将来について語る言葉もないまま、県議会まで巻き込む騒ぎを起こした責任は決して軽くはなかろう。

 久留米市長選を巡っては、自民党福岡県連会長を務めている原口剣生県議会議員の弟で元久留米市議会議長の原口新五氏が一昨日の10日に出馬表明。二人の兄にあたる原口和人氏も市議であることから、「同族支配」を懸念する声が上がる状況となっている。その久留米に、また一つ騒ぎの種が加わりそうだ。

 

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