自民党安倍派「裏金議員」たちの見苦しい言い訳

自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金事件で、自民党は今月2日から、関係議員へのヒアリング調査を開始した。森山裕総務会長、小渕優子選対委員長、渡海紀三朗政調会長が中心になり、弁護士が同席して裏金議員約90人から聴取するという。岸田文雄首相は、自民党の国会議員全員に対してアンケートも行い、実態解明と透明性をアピールしたいとしているが……。

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東京地検特捜部が立件した国会議員はわずか3人。逮捕は1人だけだ。国政の場における真相解明が求められているのは言うまでもないが、政治とカネの問題を起こして「ドリル」の異名を付けられた小渕氏がヒアリングをやるというから呆れるしかない。安倍派に所属していた衆議院議員が、こう話す。
「とうてい解明できないでしょう。誰も本当のことはしゃべらない。岸田総理が『やっている感』を出したいだけ。あれほど低迷していた支持率が1月1日に能登半島地震が起きて、岸田首相が防災服姿で記者会見すると数ポイントだがアップした。それと同じことを狙っているのでしょう。事情聴取を行うメンバーの中で信用できるのは森山先生だけでしょう」

これまで「岸田政権を真ん中で支える」と言ってきた安倍派にいた議員が、岸田批判を展開する状況になったということだ。

安倍派は1月31日に政治資金収支報告書を訂正したが、それによって同派に所属してきた議員の9割超が裏金を受け取っていたことが判明。改めて闇の深さを印象付けた。

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個別の事案も酷いとしか言いようがない。昨年夏の「フランス研修」で顰蹙を買った“エッフェル姉さん”こと松川るい参議院議員は204万円の裏金。丸川珠代元五輪相は822万円、山谷えり子元国家公安委員長は2,403万円、橋本聖子元五輪相は2,057万円、杉田水脈衆議院議員は1,564万円、太田房江参議院議員が214万円と、名前が出ていなかった議員も高額の裏金を受け取っていたことが明らかとなった。

松川氏は昨年12月、裏金疑惑について聞かれ「やましいことはまったくない」と潔白を主張。しかし、政治資金収支報告書の訂正が発覚すると、「私は知らなかった」「派閥の幹部が責任をとるべき」と筋違いの抗弁に終始した。

その松川氏が、新たに設置された「自民党政治刷新本部」のメンバーとして名前を連ねているのは、ブラックジョーク以外の何ものでもあるまい。

ハンターは、松川氏が今月22日に開催された政治刷新本部の会議で発言した録音を入手したが、その中で同氏は「国会議員は金の使いすぎとか言われますから、全面的に改革すべきです。あとから振り返った時に、大きな政治改革の1ページになったと振り返られるようにつながっていけたらと思います。ありがとうございます」と述べていた。

この時点で、204万円の裏金の存在は分かっていたはず。前出の安倍派議員が呆れ顔に突き放す。
「大きな政治改革の1ページなんて、よく言えましたよね。松川さんは、『やましいことはない』と宣言して政治刷新本部のメンバー入りしていたんですよ。ウソつきですね。松川さんは」(前出・安倍派の衆議院議員)

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旧統一教会との深い関係が疑問視される山谷氏は2,403万円もの裏金について、「本来は記載すべきものであったとのことであり、深く反省している」「秘書が管理していた」とまるで他人事。

山谷氏を巡っては、これまで何度も旧統一教会との関係が報じられてきた。無派閥のある自民党議員は、次のように批判する。
「山谷さんは全国の警察を監督する国家公安委員長の経験者ですよ。裏金もらって『反省している』で済むのなら、警察はいらないでしょう。ヒアリングでは、山谷氏に旧統一教会にパーティー券を買ってもらっていたのか否かもキチンと聞いてほしい。1枚でも買ってもらっていたらアウトですが、いずれにせよ議員辞職すべきです」

政治資金規正法違反の疑いで逮捕された池田佳隆被告をはじめ、萩生田光一衆議院議員、北村経夫参議院議員など旧統一教会との関係が深い議員は多数いる。旧統一教会からのパーティー券購入代金についても、隠されていないか徹底調査すべきだろう。

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人権意識が欠如しているとしか思えない杉田水脈氏は昨年、アイヌ文化振興事業の関係者が補助金を受けていることについて「公金チューチュー」と誹謗中傷し問題になった。しかし、自身が裏金1,564万円を得ていたことがばれ、SNS上では「裏金チューチュー」などと大炎上。その杉田氏は5年前、X(旧ツイッター)に《私は生活保護の不正受給などを厳しく追及しています。それを阻止するのは誰か?共産党系の労働組合がここでも出てきます》と投稿していた。ご自身の「不正受給」の責任は取らないのか?

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太田氏には大阪府知事時代、政治とカネの問題で3期目の出馬を断念した過去がある。2003年から07年にかけて、中小企業経営者らでつくる「関西企業経営懇談会」のパーティーに合計11回出席し、「講師謝礼」として約970万円を受け取っていたのだ。太田氏は府議会で「私の講演と意見交換の全体に対する対価と認識しております」「これまでに受け取った講演料は、知事退職後大阪府に寄附をいたします」などと火消しに走ったが、参加企業の会社経営者は記者の前で「講師謝礼って、誰も太田のおばさんの話なんて聞きたくない。だから15分か20分しかしゃべらせない。まあ、関西財界が大酒飲みで知られる太田知事の酒代を寄付してやったということ。1回につき100万円ほどやから、でかい金額や」と“裏金支出”を認めていた。参加企業の中には、大阪府の公共工事入札参加資格業者が含まれていた。

また、自身の政治資金パーティーで大阪府の職員に有給休暇をとらせ手伝いをさせていたことや、東京に設立した政治団体「太田房江を支える東京の会」の所在地を親族宅として、政治資金から家賃を支出していたことも明らかになっている。

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自民党が本気で事情聴取を行うというなら、外部の有識者による「第三者委員会」を設置すべきだろう。始まったばかりのヒアリングには弁護士も加わるとしているが、どのような権限を付与されているのかまったく不明だ。

「岸田首相は、とにかく早くやれと指示していた。内容より『やっている感』にこだわっている」(岸田派の国会議員)。

国民を欺いているのは疑惑まみれとなった安倍派の議員だけではない。一番のワルは、岸田首相なのではないか?

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