補選3敗、注目される岸田総理の決断

4月28日に投開票が行われた衆議院補欠選挙は、3つの選挙区で立憲民主党が勝利。自民党は3連敗という結果になった。岸田文雄政権にとっては大打撃。政局は混迷の度を増している。

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唯一、自民党が公認候補を擁立した島根1区は、小選挙区制がスタートして以来、故細田博之元衆議院議長がずっと勝ち続けてきた選挙区だった。しかし、今回は午後8時に亀井亜紀子氏(立)に早々と「当確」が打たれ、錦織功政氏(自)は2万5千票もの差がつけられる惨敗となった。

裏金事件を巡り旧安倍派の塩谷立座長、世耕弘成参院会長に離党勧告という大ナタを振るい、自身については「処分はない、国民が判断する」と発言した岸田首相。解散近しを匂わせた格好となっていたが、旧安倍派の衆議院議員は安堵の表情でこう話す。

「今回の補選の結果なら、さすがに早期の解散総選挙は思いとどまるはず。今やったら、政権交代につながりかねない。島根1区でここまで酷い負け方ではね……。自民党VS立憲民主党の1対1の構図になると、ヤバイことが岸田首相もよくわかったはずだ」

これに対し、逆の見方をするのは岸田派の国会議員。岸田首相が派閥解散を決めた際も、林芳正官房長官や麻生太郎副総裁に事前の相談なかったことから「解散総選挙、総理はいきなり決めるんじゃないでしょうか」という。

確かに、岸田首相は解散総選挙を前提としたような政党ポスターを議員に配布(既報)。4月24日には、《実感をあなたに。数字で見る経済再生》という政策ビラも発表しているのだ。さらに、年に4回支給される「支部政党交付金」については、7月に支給される分を6月に前倒しして支給する通知を出している。交付金は1回200万円だが、夏は氷代として300万円を追加して合計500万円になるという。「会期末(6月)に解散総選挙か」との噂が信ぴょう性を帯びてくる。

自民党の幹部はこう話す。

「政策ビラを見れば、選挙になっても演説には困らない。そして、カネも支部政党交付金の前倒しで、ある程度の見込みは立つ。派閥が解消された今、ますます官邸主導が進む。カネと政策という面からすると、解散総選挙のタイミングはそろっている。あとは岸田首相がどう決断するかにかかっている」

衆議院補欠選挙の結果を受けて、立憲民主党の泉健太代表は「早期の解散を求めていきたい」とコメントを発した。同党幹部は「泉さんが代表になって、初めて国政選挙で勝った。今後は、通常国会で内閣不信任案を出すタイミングが最大の焦点になってくる。日本維新の会の馬場伸幸代表も、補選敗北を受けた記者会見で不信任が出れば賛成する意向。共産党は当然のごとく立憲民主党と歩調を合わせるだろうし、国民民主党も裏金事件が尾を引いている自民党と一緒にはやれないはず」と自信を見せる。

内閣不信任を逆手にとって、岸田首相が解散総選挙に打って出るという見方が自民党内ではある。同党の大臣経験者は次のように予想する。

「安倍派や二階派の連中は、岸田総理の厳しい処分にかなり恨みを持っている。勝手な解散など許さないだろう。それなら、総理自身の手で解散するのではなく、内閣不信任案に対抗するという理由で解散総選挙に踏み切る可能性は十分ある」

補欠選挙3連敗の責任は、いまのところ誰もとっていない。そこで岸田首相は、茂木敏充幹事長の責任追及に踏み切るのではないかとみられる。永田町では、茂木幹事長を更迭し、国民的人気が高い小泉進次郎氏の起用するのではないかとの観測さえ出ている。

「今回の島根1区でも、入ってほしいとリクエストがきたのは小泉さんと石破茂元幹事長など限られた人たちだけ。小泉さんや石破さんは、どちらかといえば岸田政権と距離を置いてきた実力者。いずれかを幹事長などの要職に取り込めば、政権運営にもプラスになる。小泉純一郎元総理が安倍晋三元首相を幹事長に抜擢したことが、その後の安倍長期政権につながった過去もある。それはある意味、これまで岸田政権を支えてきた、麻生派、茂木派からの乗り換えを意味する。岸田首相も、茂木幹事長の『次期総理は自分だ』という振る舞いにイライラしており、党内のこともあまり相談せずに決めているのが実情で、かなりの溝がある。ばっさりやるんじゃないか」(前出の大臣経験者)

このままいけば、9月自民党総裁選では立候補すら危ぶまれる岸田首相。どのような決断をするのだろうか?

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