お膝元、新広島4区で「爆弾」抱えた岸田首相

ウクライナへの電撃訪問に続き、5月には広島サミットという大舞台に臨む岸田文雄首相。支持率も下げ止まり政権維持への道に光が差したかのように見えるが、肝心のおひざ元である広島が炎上している。

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公職選挙法の改正に伴い、次期衆院選から実施される「10増10減」。岸田首相の選挙区は現在の広島1区で、区割り見直しの対象外だが、県全体では1減となり、小選挙区が6から5に。現在の広島4区と5区が一つになるような区割りになることが決まっている。

昨年12月に自民党が未定だった選挙区の支部長を発表した際、保留となっていた新広島4区については、先月14日になってようやく寺田稔前総務相の就任が固まった。支部長の座を争った新谷正義衆議院議員は比例中国ブロックに転出する。

寺田氏は、東京大学法学部から財務省に進み、その後政界に転身。義理の祖父が池田勇人元首相というサラブレッドだ。しかし、政治資金収支報告書の不備など「政治とカネ」の問題で総務相を「更迭」されていた。

寺田氏は岸田派で新谷氏は茂木派。総裁と幹事長の派閥が激突する中で決まった支部長人事について、ある自民党幹部が苦笑いしながらこう話す。
「プライドの高さでは天下一品の寺田と、家業が日本でも有数の医療法人という新谷。どちらも譲らず、茂木(敏充)幹事長も決めることができなかった。最後に、岸田首相に持ち込まれ、寺田に決まった。これまで決断力に乏しかった岸田首相にとっては、決これがウクライナ訪問に次ぐ2度目の“ご決断”ということだ」

広島は、これまで何度も何度も報じてきたように、河井克行・案里夫妻の大型買収事件が記憶に新しい。寺田氏の「政治とカネ」の問題も根深いものがあり、すでに市民団体などから、政治資金規正法の虚偽記載罪等で東京地検特捜部に刑事告発されている

その内容も、寺田氏の政治団体が妻に対して巨額な家賃を支払ったり、すでに亡くなった人を会計責任者として政治資金収支報告書に記載するなど、とんでもない内容だ。寺田氏の妻は池田元首相の孫にあたる。

「妻の方に支払った家賃は12年間で3,200万円あまりと高額で期間も長い。時効の関係で3年分しか告発対象にはできないそうですが、酷すぎる話です。収支報告書に記載されていた会計責任者は、2019年にお亡くなりなっているのに虚偽記載を続けていました。また、『会計責任者ではない』と断言している地元の有権者を勝手に記載しており、寺田氏自身が事実関係を十分に把握したうえでの虚偽記載ではないのかと疑われています。河井夫妻の事件があったばかりだというのに、自身の政治資金処理を点検さえしていない。週刊文春に報じられるまで知らん顔だったということです」――告発した市民団体の関係者がそう話すように、寺田氏に対する地元の有権者の感情は極めて悪いという。

政治資金収支報告書の問題では、河井夫妻以外にも昨年12月には薗浦健太郎元首相補佐官も政治資金収支報告書に開催した政治資金パーティの収入を記載しなかったことが明らかになり、東京地検特捜部が略式起訴し議員辞職を余儀なくされた。
菅原一秀元経産相も、選挙区で香典を持参するなど「買収」で議員バッジを失った。菅原氏の場合、1度は不起訴になったが検察審査会で「起訴相当」と議決され罰金刑がくだされている。寺田氏も、首筋が寒い状況なのだ。ある地元の関係者は、次のように解説する。
「自民党県連は確かに寺田を公認するよう党本部に上申した。それは岸田首相のメンツを慮っただけだ。現場の意見としては、『寺田氏をぜひに』というわけではなかった。河井夫妻の次に、また問題児の寺田氏。統一地方選を前にして支援者からも厳しい指摘を受けるし、恥ずかしい。正直、寺田氏が支部長になったからといって、そんな楽には戦えない。2009年の政権交代選挙では、旧民主党候補に負けて比例復活もできなかったほど寺田は選挙が弱い」

この地元関係者の話を聞いた大臣経験者は、肯きながらこう話した。
「確かに、岸田総理もかなり頭を痛めたようです。新谷さんも、寺田さんが総務相のままなら、すんなりと了承したでしょう。しかし、スキャンダルにまみれた寺田さんに支部長の座をとられては大変とスイッチが入った。寺田さんもそれを知って岸田首相に泣きついた。新谷さんは、茂木幹事長だけではなく麻生(太郎)副総裁や二階(俊博)元幹事長らにも支援を求めるなど水面下で激しい暗闘となった。ポスト岸田を狙う茂木幹事長にはある意味チャンスだったが、広島県連が寺田氏を推しており、新谷に固執すると思わぬ反撃をくらいかねないので、最後は岸田総理に任せるしかなかった。新谷周辺からはかなり恨まれており、『頼りにならない派閥の親分だ』と愚痴られている。しかし、寺田さんは刑事告発を受けているので、総理にとっては爆弾を抱え込んだかたちだ」

選から漏れた新谷氏は、マスコミなどのインタビューで「コスタリカ方式だ。次の次の衆議院選挙は私が小選挙区から」と述べている。一方、岸田首相や茂木氏らからは、それを裏付けるような話は一切出ていない。

「最後は岸田総理と茂木幹事長が話をつけ、2人を直接呼んだそうだ。そこでコスタリカ方式を認めたかどうかは謎。新谷さんも地元で面目がないので、そう言わざるを得なかったのかもしれない。本当に地元の意見を聞いた結果なら、支部長は新谷だったはずという声も根強い。いずれにしても、この問題は尾を引くよ」(前出の大臣経験者)

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