新型コロナウイルスの経済対策のひとつ、持続化給付金。その給付金事業を一手に担っている「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」(以下、サ協)が大きな社会問題となっている。
給付金の事務作業を国から769億円で落札。そこから20億円を差し引いて、受注額の97%に当たる749億円で大手広告代理店「電通」に再委託していたというもの。そこからまた人材サービス大手パソナなどに再々委託していたというのだから、どれだけ“中抜き”されていたのか分からない状況だ。
■実態は電通、パソナ、トランス・コスモス
サ協の登記がある東京都中央区の事務所を国会議員が訪ねててみると、給付金業務で忙しいはずの協議会職員は不在。電話も連絡がつかないという。
この不可解な団体を設立したのは、給付金業務で甘い汁を吸っている電通やパソナ、IT関連事業のトランス・コスモスなど3社。これまで、サ協は、2016年に経済産業所が創設した「おもてなし規格認証」の認証機関事業など、判明しているだけで9つの同省関連事業を落札している。
今回、持続化給付金の事務作業落札にあたって、サ協が経産省に提出した資料がある(下参照)。それによると、持続化給付金の事業が公示される前の4月6日にhttps://www.jizokuka-kyufu.jp/というURLを取得していることがわかった。
知りたい情報にすぐアクセス可能なTOPページを構築するとして、<ドメインは jizokuka-kyufu.jp を確保済み>と記されているのだ。
さらに資料には、持続化給付金の事務作業を電通に再委託することが明記されており、そこから再々委託する外注先として電通ライブ、電通テック、電通国際サービス、電通デジタル電通東日本、電通クリエーティブフォースといった電通関連会社が並ぶ。
図々しいことに、給付金申請の審査業務にはパソナ、コールセンター業務はトランス・コスモスが担う構図まで記されている。
電通はこれまで同じ3社(電通・パソナ・トランス・コスモス)の構成で、創業促進補助事業、小規模事業者活性化補助金事業、商店街まちづくり事業中心市街地活性化事業などの仕事を、経産省外局の中小企業庁から請け負っている。その仕組みについて、現役のある経産省職員はこう話す。
「電通の名前が全面に出ていい時は、そのまま受ける。だが、今回の持続化給付金のように、電通の名前が出るとまずいという時は、サービスデザイン推進協議会の名前を使う。
すでに報道されていますが、サービスデザイン推進協議会は電話すらつながらない、組織としては幽霊のような存在。電通のための、トンネル会社として思われても仕方がない」
事実、先の資料にはこんな記載がある。持続化給付金の振込作業について<※民間企業名(日系・外資系問わず)での(不自然な)振込ではなく、社団名での振込が可能>と経産省にアピールしている。
電通で振り込むと不自然で、不審がられるというのだ。電通自らが、サービスデザイン推進協議会が「トンネル会社」となることを認めたようなものだ。
6月8日、サービスデザイン推進協議会と電通の記者会見でも「受け取った人が電通の名義で入金があると、疑問に感じる」と述べている。
その発言については、梶山経産相も国会で同様の答弁をしている。そのために電通が直接、事業を請け負わず、サービスデザイン推進協議会に20億円の「名義料」を払ったことになるのか?
サービスデザイン推進協議会は、2016年に設立してから、法令で決められている決算報告を一度もしていなかったことも判明。サービスデザイン推進協議会は記者会見で、認めて陳謝している。
先の資料には持続化給付金は<2兆円超える「給付金」を200万社に迅速に払い出すことができる唯一無二の社団>と記されている。
電話はつながらず、決算報告はしないサービスデザイン推進協議会。裏では経産省、中小企業庁とガッチリとタッグを組み、税金で大儲けを企む。どこが「唯一無二」なのか、あきれるばかりだ。
(山本吉文)