立憲民主・松原仁衆院議員の離党を招いたのは・・・

早期の解散総選挙が現実味を帯びはじめた今月9日、立憲民主党の松原仁衆議院議員が離党会見を行った。「新しい選挙区、大田区と目黒区の新東京26区で活動したいので離党届を出しました」と沈痛な表情で話した松原氏。ベテラン政治家に、一体なにがあったのか――。

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松原氏は当選8回、民主党政権時代は国家公安委員長として入閣し、その後は国対委員長などを務めるなど豊富なキャリアを誇る。明らかに人材不足の立憲民主党で、なぜ松原氏は離党を決断したのか。

松原氏はこれまで東京3区から出馬、前回の衆議院選挙は自民党の石原宏高衆議院議員に競り勝って、小選挙区で当選した。

改正公職選挙法に伴う「10増10減」は次の衆議院選挙から適用されるが、新しい区割りでは、現在大田区と世田谷区にまたがる松原氏の「東京3区」が品川区中心の「新3区」となり、大田区と目黒区は「新東京26区」となる。当然、松原氏は東京26区からの出馬を目指していたのだが、そこに「横やり」が入った。

騒ぎの元は「手塚仁雄衆議院議員、東京都連幹事長ですよ」と話すのは立憲民主党の議員。手塚氏が、松原氏の新東京26区への転出をさまたげたのだという。

手塚氏は現在、東京5区選出だ。現在の東京5区は目黒区と世田谷区の一部。区割りの変更で、手塚氏は世田谷区のみの新東京5区から出馬、これまでの地盤である目黒区の一部は、新東京26区に編入される。そこに手を挙げたのが現職の松原氏だった。別の立憲民主党議員が顔を曇らせる。「手塚氏はそれが気に入らない。蓮舫さんの衆院転出話もあったが、松原氏阻止に向けて裏で画策をはじめたんですよ」

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松原氏は記者会見で離党に至る経緯をこのように話している。
「4月の末には東京都連の常任幹事会で26区の公認候補にしてくれと話しました。その時は、海江田さん(副議長)、末松衆議院議員が『松原さんが26区で本人希望。競合いないのなら許すべきだ』と訴えてくれたのですが認められなかった」
「私も立憲民主党で競合する相手がいないのですから、現職なら当然、認められるべきだと思います」

こうした松原氏の訴えを阻んだのが手塚氏だった。「手塚さんは目黒区を地盤の一つとして戦ってきた。松原氏とは仲が悪いので地盤を譲りたくない。できれば自分の息がかかった人間を東京26区から出したい。つまり、自分の都合で松原さんを追い出したんです。手塚さんは幹事長の威光をひけらかし、『今の東京3区は、新東京3区とも重なるからそちらから出ればいい』と松原氏の意に沿わない主張ばかりを続けてきました。松原さんには同情します」(立憲民主党の東京都連幹部)

松原氏は記者会見で、「無所属となりますが、会派は立憲民主党で続けたい」とも語った。だが、松原氏ほどの実績があれば、「維新や都民ファーストの会、参政党など他から誘いもあるだろう」と松原氏の支援者は強気だ。

日本維新の会の馬場伸幸代表は「公募される方が誰であっても審査対象になります」と松原氏が公募した場合は、検討する意向を示した。解散総選挙になれば、小池百合子知事の意向で、都民ファーストの会も候補者擁立を目指す方針だという。松原氏は、2017年に小池知事が「希望の党」を結成して国政に打って出た際の結党メンバーの一人で、小選挙区では敗れたが、比例復活当選しその後は同党の役員にも名を連ねた。前出の松原氏の支援者は次のように話す。
「比例復活を考えれば、維新から出馬すれば確実にとれるだろう。都民ファーストの会も東京に絞って戦えば、松原を小選挙区で当選させることは可能。左寄りの立憲民主党の中にあって右寄りの松原。政策的には維新でも都民ファーストの会でも折り合うのではないか」

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一方、立憲民主党の中では同情論がさらに広がる。岡田克也幹事長は当初、「残念なこと。離党届はお預かりする。その取扱いは執行役員会で協議する」と述べるにとどまった。この段階ではまだ離党を認めていなかったが、その後本人の意向を確認して、正式受理となっている。

手塚氏が中心になってトラブルを巻き起こすのは、今回だけではない。鳩山由紀夫元首相と近い手塚氏は、民主党の党首選の折、かなり危ないことをやろうとしたという。
「接戦になって鳩山氏が勝てるのか心配になった手塚は、ばらまきが必要だとカネを配って歩こうとした。党の選挙とはいえ、票をカネで買なんて非常識。それでも手塚は『公職選挙法は関係ない』とうそぶき、ばらまきを決行しようとしていたのは有名な話だ」(旧民主党のベテラン議員)

2021年の衆議院選挙で、東京8区には立憲民主党の吉田はるみ衆議院議員を擁立することが決まっていた。だが、そこにれいわ新選組の山本太郎参議院議員も出馬表明し、野党統一候補を誰にするかで大混乱した。この時のことを、前出のベテラン議員が振り返る。
「吉田氏で決まっていたのに、手塚が山本太郎を引っ張ってきた。手塚は山本太郎に恩を売って、8区から出す代わりに自分の選挙を応援してほしかった。吉田氏のことは、参議院選挙で処遇するから(8区から)手を引かせると勝手に絵を描いた。しかし、吉田氏サイドの猛反発で、おじゃんになった」

維新の勢いに押され、党勢が傾いている立憲民主党。現職議員を追い出すという「無謀な候補者選び」がまかり通るようでは、野党第一党の座を守ることはできまい。

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