吉川・西川、鶏卵マネーで汚染された元農相らに迫るXデー

桜を見る会の「前夜祭」を巡る疑惑で、近く安倍晋三前首相の事情聴取に踏み切るとみられる東京地検特捜部。最強の捜査組織が手掛けるもう一つの「政治案件」が、吉川貴盛元農林水産大臣の贈収賄事件だ。

■疑惑まみれの吉川元農相

吉川氏は、2018年から19年までの農相在任期間に、養鶏大手「アキタフーズ」(本社・広島県福山市)の秋田善祺元代表から、3回にわたって現金500万円を受け取っていた疑いが持たれている。

吉川氏はその見返りとして、家畜をストレスのない飼育環境で育てることを進める「アニマルウェルフェア」の国内基準を甘くするように、農相として便宜を図ったというものだ。

突然浮上した疑惑に吉川氏が所属する二階派の幹部は、こう不満をぶちまける。
「吉川さんには、これまでカネの噂が何度も出た。大臣になったのも派閥のおかがでしょう。その恩返しもせずに、大臣在任中にとんでもないことをしてくれた」

18年10月、吉川氏の農相記者会見の時だった。ある報道機関の記者から、次のような質問が出た。
「一部の報道でですね、北海道洞爺湖町のソーラーパネルをめぐる補助金の詐取事件がありまして、そこで口利きをしたその中の議員というのが、公判に出たんですけど、この議員というのが吉川大臣だというふうな声も上がっているのですが?」

一瞬たじろいだ吉川氏は、「否定も肯定もというか、全くそういった事実は私は承知をいたしておりませんので」と答えるのが精一杯だった。

この事件は、ソーラーパネルの施設を設置するにあたって日本政策金融公庫から融資7億2千万円、北海道から補助金5,960万円を得た札幌市の太陽光発電会社の行為が、詐欺ではないかと問われたもの。事件化の後、当該企業には有罪判決が確定している。融資と補助金に絡んで、吉川氏の口利きが浮上したのだ。事件の関係者はこう振り返る。
「裁判では詐欺が問われたので、吉川氏に関与についての詳細なことは出ませんでした。しかし、会社側は取り調べで何度も吉川氏にカネを渡したのかと聞かれています。その会社は、日本政策金融公庫と北海道に口利きしてもらうため、吉川氏の事務所に行って陳情し、大きな金額を(吉川氏側に)渡したというのが真相です。間違いありません」

今回の疑惑は、今年7月に公職選挙法違反で逮捕された元法相の河井克行被告と妻で参院議員の河井案里被告の捜査の中から派生した案件。アキタフーズの実質的な創業者である秋田元代表は、養鶏業界の「政治担当」として知られ、政財界に幅広い人脈を有しているとされる。アニマルウェルフェアの問題では、日本養鶏協会の「特別顧問」という肩書もあった。

日本養鶏協会幹部の話。
「元代表は、アニマルウェルフェア問題で動いてくれていたのは事実。2か月くらい前から元代表が大臣にカネを渡したという噂があった。今、協会幹部は検察から事情聴取されている。噂は本当だったと感じる。大臣にカネを渡すなんてびっくり仰天。協会はそんなことを頼んでいない。ただ、元代表は、政治には精通しているので、独自の考えだったのではないか」

吉川氏逮捕の「Xデー」は年内という声が高まっている。

■西川元農相も捜査対象に

国会閉会中の永田町が騒がしくなった8日、西川公也元農林水産大臣が、内閣官房参与を辞任した。吉川氏と西川氏はともに、アキタフーズ所有のクルーザーで今年7月、接待を受けた“お仲間”。西川氏は、吉川氏以上の鶏卵マネーを受け取っていた疑いが持たれており、東京地検特捜部が捜査しているという情報もある。

前出の二階派幹部は、今後の見通しを次のようによむ。
「吉川さんは北海道の選出だが、じつのところ農水族の大物というほどの実力はない。札幌市内が選挙区だからね。入閣できたのは派閥の力と、当時は官房長官だった菅首相と同期でとても親しいから。吉川氏は党の役職を辞任して入院しているそうだが、逮捕となればそんな程度では済まされないだろう。同じ大臣経験者の西川氏も(立件)となれば、なおさら。バッジを外して政界引退だ。カネを渡したアキタフーズ側の記録が残っている上、その会社の元代表が贈賄について認めているというのでは、残念ながら吉川さんに逃げ道はない。新型コロナ対策でもたついており、菅政権の支持率がじわじわと下がっている。安倍前首相の桜疑惑に加え、吉川氏の鶏卵マネー疑惑まではじければ、ますます厳しい政権運営になるんじゃないか。困ったものだ」

昨年12月には衆院議員の秋元司被告、そして今年7月に河井夫妻と、立て続けに所属議員が逮捕された自民党。これが政権政党とは情けない限りだ。

(山本吉文)

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