「裏金に反感が強いのは予想していた。だが、ここまで反発があるとは」――言葉少なに話すのは、東京24区から無所属で出馬している萩生田光一氏の陣営スタッフ。報道各社の情勢調査では、裏金議員も対象。各社の数字を拾ってみると、萩生田氏の議席獲得に黄信号が灯っていることが分かる。

萩生田氏だけでなく、裏金議員たちには極めて厳しい選挙戦となっている。

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東京24区には、無所属の萩生田氏の他、立憲民主党の有田芳生氏、国民民主党の浦川祐輔氏、日本維新の会の佐藤由美氏、参政党の与倉さゆり氏、無所属の畑尻文夫氏と6人が乱立し、激しい選挙戦が展開されている。

自民党が行ったとされるの10月11日から13日にかけての調査では萩生田氏が有田氏に10ポイントの差をつけていたが、毎日新聞の直近の調査では逆に有田氏が1ポイントリード。共同の数字は有田氏50ポイントに対し萩生田氏は28ポイントいう驚くべき結果となっている。萩生田氏にとっては過去の選挙のような「楽勝ムード」ではない。

非公認であるにもかかわらず、高市早苗前経済安全保障担当大臣や安倍晋三元首相の昭恵夫人が応援に入り、イメージアップを図ろうとしているが、情勢は極めて厳しい。

「萩生田圧勝というムードではない。もちろん不記載問題への反省はあるが、主に訴えているのは国際情勢や教育、景気対策。ただ、どうしても裏金議員が何を言っているのかと有権者に受け止められがちだ。なんとか、大物の応援でしのいでいる感じ」(前出・萩生田氏の陣営スタッフ)

一方、立憲の有田氏は、「2,728万円もの裏金を机の引き出しに入れていた萩生田光一さんがいる。霊感商法の統一教会とベッタリの萩生田さんは、二つを兼ね備えている。加計学園の問題を加えると、3つの問題ということになる。だから私は八王子市で立ったのです。裏金作りの政治をやめさせましょう」と訴える。

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東京7区は、裏金議員・丸川珠代元五輪相の地元だ。参議院から衆議院にくら替えして初の選挙となるが、同氏の支援者は「楽に勝てるというのが当初の党本部の見方。それが裏金問題の逆風がすさまじく、厳しい戦いになっている」と顔を曇らせる。

松尾明弘(立憲)氏、小野泰輔(維新)氏、石川友梨香氏(参政)の4人が出馬したが、情勢調査では、立憲民主党の元職・松尾氏が丸川氏を3ポイントほど上回っている。

「丸川氏は参議院が長く、業界団体周りの選挙だった。衆議院の小選挙区は地域のお祭り、運動会、敬老会をはしごする、いわゆる“どぶ板”。それに慣れておらず『こんなにやるの』と本音を漏らしていたこともある」(前出の丸川氏支援者)

丸川氏は過去5年間で裏金822万円。「超過の裏金は個人口座で管理していた」とメディアの取材に答えていたが、神戸学院大学の上脇博之教授は「丸川氏の裏金を調べると、中抜きして政治家個人の裏金になっていたのではないかという疑いが生じる。そうなれば税金がかかるのではと思い、公開質問状を送付している。裏金問題は終わっていない」という見解を述べている。

埼玉9区から立候補している丸川氏の夫・大塚拓氏も裏金議員。夫婦ともども、苦しい選挙戦だ。

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東京11区は、安倍派の幹部でもあった元政調会長の下村博文氏の地盤。裏金事件ですでに党員資格停止1年の処分が下っている同氏の他、阿久津幸彦氏(立憲)、伊波政昇氏(共産)、大豆生田実氏(維新)の4人が争う。

情勢調査では、阿久津氏が6ポイントリード。前週は28ポイントの横並びだったが、公示後、下村氏が阿久津氏に離される展開となっている。

「裏金で処分されて以降、下村氏はずっと地元に張り付いてお詫び行脚にまわっていた。直接話せた有権者の理解は得られているが、都市部なので無党派層や政治には関心ないという人が少なくない。衆議院選挙なら60%ほどの投票率でしょうから『裏金議員』『旧統一教会』という理由で、相手陣営に票が流れてしまいかねない。それが今の調査結果の数字に出ている」(下村氏の後援会幹部)

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日を追うごとに強まる裏金議員への風当たり。ある自民党幹部は苦しそうにこう話す。

「情勢調査の数字を見ると、裏金議員がかなり苦しい戦いを強いられている。比例復活がないので小選挙区で勝つしかない。選挙戦全般をみても、自民単独で過半数をとれるかギリギリだ。非公認の裏金議員が当選すれば追加公認させて数を増やすしかない。そうやらないと、自民党が過半数を維持するのが難しい情勢だ。ただ、今すぐにそれを表ざたにすると、また叩かれ票が減る」

裏金議員に有権者の審判が下されるのは今月27日。少しでも政治を良くしたいという思いがあれば、投票書に足を運んで意思表示をすべきだろう。

 

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