前半戦苦戦で巻き返し図る日本維新の会

衆議院選挙の公示で政権選択をかけた戦いがスタート。報道各社は前半戦の情勢調査結果を報じはじめた。注目されるのが大阪。2021年の岸田政権発足時、自民党が全国的には堅調な中、大阪では19ある選挙区を日本維新の会が席巻。自民党や立憲民主党は1つも保議席が取れず、惨敗に終わった。

しかし、今回は昨年夏に自民党が「大阪刷新本部」を設立。そのせいか、自民党が維新を相手に追い上げつつある。維新の巻き返しがなるかどうか――。

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特筆されるのは、維新の代表・馬場伸幸氏の17区。ある調査結果によれば、自民党の元職、岡下昌平氏が善戦し12ポイント差だ。前週までは馬場氏と互角の数字だった。維新の関係者が声を潜めてこう話す。

「馬場さんは代表就任後、地元の堺市にほとんどいません。今回の選挙でも全国行脚です。また、週刊文春に地元の社会福祉法人を巡る疑惑を報じる記事が出たのもマイナスでした。維新は自民党の政治とカネ、裏金問題を徹底的に叩いています。だが、地元では馬場さんも同じというわけです」

10月15日、維新の共同代表、大阪府の吉村洋文知事が大阪16区に乗り込んだ。17区は16区と同じ堺市が選挙区で、馬場氏の“苦戦”を承知で堺東駅前バスターミナルで訴えた。堺市では「維新の聖地」と呼ばれるほど、大型選挙では定番として使われてきた場所。しかし、大阪府警のものものしい警戒態勢もあってか、集まる人はわずかだった。

「前はここでやると鈴なりに人が集まり『吉村知事!』と大きな歓声が沸いた。しかし、維新の支持が落ちるのと比例するように人も減っている」と維新の堺市議がぼやく。

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12区は、藤田文武維新幹事長のの地盤だ。最新の調査で13ポイント差をつけているが、その前の数字は藤田氏が自民党の北川晋平氏に1ポイント勝っているだけだった。

「藤田さんは当選2回で、幹事長になって忙しいのか、地元で姿を見ることはほとんどなくなった。事務所にも、秘書らが詰めている気配はない。どこかの選挙区に手伝いに出ているということでしょう。維新にとっては楽な選挙戦じゃないと感じます」(藤田氏の支援者)

寝屋川市の自民党市議は「北川さんは2回藤田に負けているので背水の陣。今回は、過去の教訓もあってどぶ板に徹している。維新の空中戦と同じ土俵では勝てないと判断している。それと党本部が立ち上げた刷新本部も大阪に注力してくれており、プラスになっている。前のようなぼろ負け、午後8時当確はないはずだ」と自信を見せる。

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大阪4区は、ハンターで何度も問題を指摘している自民党の中山泰秀氏に対して、維新は前職の美延映夫氏が受けて立つ。情勢調査では、5ポイントほど中山氏が優勢。だが、中山氏は900万円を超す裏金で処分を受けている身。元職なので「裏金支部長」だ。

大阪4区の繁華街で、マイクを握っている中山氏にハンター記者が遭遇した。同氏は「日本の外交戦略、台湾海峡では危機が」、「景気が上昇し、株やっている人で損したというのはまわりにない」、「今後、教育に力を入れます」などと語る中山氏。しかし彼は、裏金問題に加え、逮捕された大阪の医療法人理事長から、多額の寄附を受け取るなど「政治とカネ」についてとかく問題がある人物だ。当然、有権者からの反応は冷たく「株やって損した人いないっておかしいな話や。全員儲かるなら、みんなが投資する」、「裏金が教育のこと語るって、空気読めてない」と厳しい批判の声が上がる。

美延氏は当選2回の前職。維新の大阪市議は「2回勝っているが、維新の風が吹いていた時の楽な選挙。ここは中山一族が鉄壁を誇っていた地域で、風が前ほど吹いていないのは厳しい」と話す。

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連立与党として自民党と組む公明党。しかし、大阪だけは違っていた。これまで、公明党は維新との「抱き合わせ販売」という戦法だった。維新の看板「大阪都構想」の住民投票で「賛成」を売り付け、衆議院選挙では公明党の選挙区には候補を出さないというお約束で、議席を確保してきた。つまり自公連立に対して、大阪では裏で「維公」という構図。しかし今回、維新は公明党の4選挙区で候補者をぶつけてきた。

その中で公明が優勢なのが大阪16区。公明党の参議院議員4期のキャリアがある山本香苗氏が維新の元堺市議・黒田征樹氏を3ポイントリードする展開だ。公明党の幹部が次のように解説する。

「兵庫県も含めると公明党は近畿で6の選挙区がある。維新がすべて取るという予想が大半だ。しかし、こちらは政権与党だし1つくらは勝ちたい。大阪16区がもっとも勝負になるとして、ここに支援を集中させている」

大阪全体を見ると、2区、7区、8区で自民候補が維新よりも優勢になっている。維新は急遽、候補者を決めた9区以外で、比例重複立候補をとりやめ選挙区一本に絞る、退路を断った戦いだ。吉村知事は「負けたのに比例で復活はおかしい。みんな腹をくくっているはず」と自信を見せる。しかし、前半戦の情勢調査をみるとまさかの苦戦。維新所属の参議院議員は、危機感をあらわにこう話している。

「大阪で3つ4つ落とせばそれが全国に波及する。維新全体で10以上議席を落とせば、党内政局になる。馬場代表の退陣論が浮上するでしょう。全国的にも低調で、選挙後の方が怖い」

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