福岡市市民局防災・危機管理部が今年2月に業者選定を実施した「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備業務委託」に、計画当初から受注企業を決め込んだ業者選定だったのではないかという疑いが浮上した。
市への情報公開請求で入手した文書によれば、同業務の概要を定めるための「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備基本計画検討業務」(以下、基本計画)の業者選定段階から、疑念を持たれかねない動きになっていたことが分かっている。
■基本設計875万円が150万円に
前稿で示した通り、事業を所管する市民局防災・危機管理部防災推進課は昨年4月、まず、基本計画の策定を民間企業に委託するため「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備基本計画検討業務」の業者選定に着手し、2社を選んで、委託業務の積算をするための“参考見積り”を提出するよう求めていた。
基本設計の参考見積りを提出したのは『NECネッツエスアイ株式会社 九州支店』と『一般財団法人 高度映像情報センター』の2社。NECネッツアイは875万円とはじき、高度映像情報センターは700万円と見積もっていた。(以下、金額はすべて税抜き)
おかしくなるのはここから。NECネッツエスアイは、自社が875万円と積算した基本設計の仕事を、受注企業をを決める「見積り合せ」で150万円という金額を提示する(*下の画像参照。クリックして拡大)。一方の高度映像情報センターの見積金額が748万円で、同センターが参考見積り段階ではじいた700万円より48万円高くなっているのとは対照的だ。
自社の当初見積もりの2割にも満たない金額での受注は、明らかなダンピング。利益を度外視した目的が何であるかは、子供でも分かる。NECネッツエスアイの狙いは、事業費3億3,904万7,000円(上限額。税込)の「災害対策本部機能(ICT設備等)拡充整備業務委託」を確実に受注することだったと見るのが普通だろう。
最低価格が定められていないこの基本設計業務では、当然ながら一番安い金額を示した業者が選ばれる。市は昨年5月、NECネッツエスアイと基本設計の業務委託契約を結ぶ。つまり、市側はこの段階で、本体業務の受注者がNECネッツエスアイになるであろうことを、十分に予想できていたはずなのだ。さらに踏み込むなら、“市と業者のなれ合い”という、最悪の想定が疑われかねない状況だったということになる。そして事態は、最悪の想定に沿って進む。
(つづく)