福岡県那珂川市議会(髙原隆則議長)が、新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に市民の議会傍聴を今年の3月議会から中止していることが分かった。各委員会だけでなく、本会議の傍聴まで認めておらず、市民の知る権利や市政に関わる機会が奪われたたままだ。
周辺自治体では、「3密」を避けるため席数を制限するなどの対策はしているが、傍聴自体はきちんと認めており、那珂川市の対応が際立つ格好となっている。
■那珂川市だけが傍聴禁止
市民が市政を知る機会のひとつに、議会の傍聴がある。一般的に議会は、議案が最終的に議決される「本会議」と、効率的かつ専門的に審査や調査を行う「委員会」があり、本会議は傍聴席のある広々とした議場、委員会はスペースが限られる委員会室で行われる。
原則として、だれでも本会議や委員会の傍聴が可能で、希望者は受付簿に氏名や住所を記入して傍聴券を受け取り、傍聴席に座ることができる。市民にとっては、当然の権利だ。
ハンターの記者が那珂川市議会のある委員会を傍聴するため、事務局に問い合わせをしたところ、職員から返ってきたのは「傍聴お断り」の回答。理由は新型コロナウイルスの感染拡大防止のためで、議会運営委員会での検討を経て、決定したのだという。
今年の3月議会から本会議・委員会ともに同じ措置を取っており、当面、9月議会までは市民の傍聴を認めていない。
「委員会の内容を知る方法ないか」と食い下がってみたが、「議事録は作成されるが、公表は最短で1か月かかる」と議会事務局。つまり、那珂川市では現在、議会に関する情報を市民がタイムリーに知るすべはない。
周辺自治体の議会関係者に話を聞いてみたが、一様に「傍聴お断りなど、あり得ない」との反応。取材結果を結まとめたのが、下の表だ。
いずれの自治体も、新型コロナ対策で「3密」を避けるため席数を制限しているものの、傍聴自体は認めている。認めなければ、市民の知る権利を奪うことになると認識しているからだ。那珂川市の議会は、民主主義の主役が誰なのか、忘れているのではないだろうか。
ちなみに、那珂川市議会では議員の委員会傍聴は認めており、3密回避のための「傍聴お断り理論」が破綻していることを付け加えておきたい。
(東城洋平)