【鹿児島県政の闇⑥】マリコン地場大手、災害協定加点「0.6点」で受注独占

鹿児島県は、今年度から一定額を超える工事の入札で採用されている総合評価方式のガイドラインを改定し、災害協定を締結した団体の加盟業者だけに与えていた加点を「0.4点」から「0.6点」に引き上げた。

同県の災害協定は締結にあたっての基準や要件がないという大ざっぱなものだが、港湾土木の分野では協定の相手が県内のマリコンを中心に組織された「鹿児島県港湾漁港建設協会」だけに限られているため、「0.2点」が極めて重い意味を持つ。

「0.4」でも一部業者による工事の独占や談合を招きかねない非常識な加点。それが「0.6」になるとどうなるのか――。

■加点「0.4」から「0.6」へ

前稿で説明した通り、鹿児島県の入札総合評価は「評価値」が最も高い業者が落札する仕組みだ。評価値は、以下の計算式にあてはめて算出する。

評価値=技術評価点÷入札価格×定数 =(標準点+加算点)÷入札価格×(定数:100,000,000)
評価値とは、入札に参加した者に対して標準点を与え、さらに各評価項目ごとの基準に従って評価した加算点を加え技術評価点を算出この技術評価点を入札価格で除した値のこと。標準点は、入札に参加した者全てに与えられるもので、調査基準価格以上の入札価格で応札した者には100点を、調査基準価格を下回る入札価格で応札した者には70点が与えられる】

評価項目ごとの基準に従って算出された加算点が、入札結果に大きな影響を与えることになるのも述べてきた通りである。子供でも分かる理屈なのだが、県はマリコン団体と災害協定を結んだ翌年、5千万円以上3億円未満の海上工事における入札総合評価のガイドラインを改定し、災害協定締結団体に「0.4点」を加点することを決める。翌令和元年度も、災害協定加点は「0.4」だった(下は同年度のガイドライン)。

そして今年度、県はガイドラインを再び改定し、災害協定の加点を「0.4」から「0.6」に引き上げる(下、参照)。

わずか「0.2点」の差だが、0.4が0.6になっただけで、入札の状況は大きく変わる。結論から述べれば、県と災害協定を結んでいる県港湾漁港建設協会の業者による独占的な受注体制がより強化され、「談合」を容易にするということだ。どういうことか、さらに詳しく検証してみたい。

■奪われた受注機会

協会加盟業者なら、今年度も変わらず評価の満点が「10点」。一方、協会非加盟業者の満点は10-0.6=「9.4点」となった。前年度まで「0.4」だった協会加盟業者と非加盟業者の差は「0.6」に広がっている。非加盟業者は、入札参加を決めた時点で、これだけのハンデを背負うわけだ。

この差が、施工能力や財務内容の違いによるものならまだしも、災害協定を結んでいる団体に加盟しているか、いないかで決まるというのだから不公平極まりない話だ。だが、「0.6」の持つ意味は、考えていた以上に重いと言わざるを得ない。

鹿児島県で年度内に工事を1件受注した業者は、次の入札の総合評価において「-0.5点」になる。つまり、すでに1件の工事を請負っている業者は、10点満点の加算点が9.5点になるということだ。前年度までは、この段階で非加盟業者の満点である「9.6点」が上回るため、協会非加盟業者が落札可能となるのは主要な協会加盟社が1件受注した後となっていた。

しかし、今年4月から災害協定の加点が「0.6」になったことで、協会非加盟業者の満点は「9.4」になっている。9.4では9.5を上回れず、結局、協会加盟業者が2件受注して「-1点」=9点になったところで、ようやく協会非加盟業者の満点「9.4」が上回るという格好だ。協会加盟業者が2件の工事をとって、それでも残りがあれば、どうにか受注のチャンスが巡ってくるというのが現状なのである。

県の発注工事といっても、それほど件数が多いわけではない。協会非加盟業者に仕事が回ってくる機会は、ほとんどないと言っても過言ではないだろう。

協会加盟社の中で自前の作業船を持ち、難しい工事を請負える能力を持つ県内の業者は10社に満たないという。そうした業者が、大きな契約金額の仕事を独占的に受注しているとの証言もあり、現在関係先での取材を続行中だ。

ある県の関係者によれば、鹿児島県の土木部系OBは県港湾漁港建設協会やマリコン各社に天下り、マリコン各社は県幹部OBの人脈を利用して営業力を強化してきたという(一部既報)。持ちつ持たれつの関係が、災害協定を悪用した総合評価の加点「0.6」につながった可能性は否定できない。

ここで改めて警鐘を鳴らしておくが、鹿児島県港湾漁港建設協会に加盟している県内業者は、大半が2009年に発覚したいわゆる「マリコン談合事件」で厳しい処分を受けた業者だ(下の表参照)。その業界団体と組んだ県の役人が再び談合を招きかねない状況を作ったのだとすれば、納税者である県民に対する最悪の背信行為に他ならない。

(以下、次稿)

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