鹿児島県が港湾土木業者(マリコン)の団体「鹿児島県港湾漁港建設協会」と結んだ災害協定は、同団体加盟社に対する便宜供与の道具だ。背景にあるのは協会と県との癒着。県は今年4月から、県政史に残る大型談合事件を起こした業者集団に対し、総合評価方式で行われる公共工事の入札で有利になるよう取り計らっていた。
ズブズブの関係は、県と協会の“人事”に関するつながりからも明らかだ。ハンターの取材で、県港湾漁港建設協会の事務局長やマリコンの役員に県職員OBが天下っていることが分かった。
■協会事務局長は県幹部OB
これまでの配信記事で報じてきた通り、鹿児島県港湾漁港建設協会に加盟しているマリコン21社は、2009年に発覚した「マリコン談合事件」で処分を受けた会社だ。県はそうした前歴を持つ業者の団体と「災害協定」を結び、今年4月からは総合評価方式で入札を行う公共事業の評価点を上げていた。
協会に加盟していない業者に評価点で大きく差をつけることになるため、災害協定を道具にした県からマリコン団体への便宜供与ではないかとみられている。
背景にあるのは県と協会の“ズブズブ”の関係。ハンターの取材で、2018年に県土木部参事を最後に退職した幹部OBが、協会の事務局長に天下っていることが明らかになった。港湾土木を所管する県港湾空港課も、協会の事務局長が県幹部OBであることを認めている。県職員の天下り先団体に、災害協定をうまく使って発注工事を事実上独占させようとした可能性が否定できない状況だ。
■マリコン役員にも土木部系OB
取材の過程で、退職した県職員のマリコン各社への天下りが常態化していることも明らかになってきた。例えばAランクの業者なら、元北薩振興局長が県建設技術センター理事長を経て副社長(役員登記はなし)として植村組に、元北薩振興局部長はやはり建設技術センター理事長を経て副社長として米盛建設に、元土木部次長も建設技術センター理事長を経て渡辺組の副社長に天下っていた。南生建設には元県工事監査監が、森山(清)組には土木部元係長が、それぞれ幹部社員として再就職している。
土木部系の県職OBが建設業者に天下りしているケースは他にも確認されており、まさに「ズブズブ」。官製談合を招きかねない構図が、鹿児島県政を腐らせている可能性が高い。ある県関係者は、港湾土木を牛耳る業者や役人を「港湾マフィア」と呼んで、厳しく批判する。
「2010年に県政を揺るがした談合事件ではマリコンだけに注目が集まったが、その頃から裏にこうした天下りの実態があったはずだ。事件後に、業者への天下りを禁止しておくべきだった。10年経ってほとぼりが冷めたとでも思っているのか、港湾マフィアが好き放題にやっている。災害協定を結んだ港湾漁港建設協会の加盟社だけが、総合評価で大きく加点されるというのは明らかな便宜供与だろう。談合を助長する愚かな策であり、県民に対する背信行為とも言える。わざわざ総合評価のガイドラインを見直したのは、誰の指示によるものだったのか――。しっかりと検証すべきだ」
■疑惑の「0.6点」
県関係者が指摘した「ガイドラインの見直し」によって、今年4月から総合評価方式で入札については、港湾漁港建設協会の加盟社だけが「0.6点」の加点を得ることができるようになった。同じ港湾土木業者でも、協会に加盟していない業者は0.6点がもらえない。
実はこの「0.6点」が、総合評価方式の入札では極めて大きな意味を持つ。入札金額や技術点などで並んでも、協会員だけが持つ「0.6点」が協会非加盟業者をはじき出すからだ。
では、総合評価のガイドライン見直しがどのような意味を持つのか――?そのカラクリについては、次週からのシリーズ配信記事で詳しく報じていく。