鹿児島県警による「家宅捜索(ガサ入れ)」の顛末|データ削除で問われる任意性

19日、鹿児島県議会の総務警察委員会が開かれ、野川明輝本部長ら県警幹部が県議らの質問に答えた。わかっていたこととはいえ、辻褄合わせの虚偽答弁ばかり。同日まで本サイトが3回連続で報じたクリーニング店の女性に対する霧島署員によるストーカー事件については、被害相談時の「苦情・相談等事案処理票」を消去したことや、犯人の防犯カメラ映像を隠滅したことを認めようとせず、苦しい言い訳を繰り返す格好となった。

一方、2021年秋に起きた鹿児島県医師会の男性職員を被疑者とする強制性交事件については、告訴状を「受け渋った」という表現で、ハンターが批判してきた「門前払い」を認めている。やはり、強制性交事件の初動は間違いだったということだ。

腐敗組織の「闇」は底なしだが、問題になったハンターへの家宅捜索(ガサ入れ)の状況について問い合わせが続いていることから、改めて詳細を報じておきたい。

■家宅捜索(ガサ入れ)の状況

県議会でも質疑が交わされたハンターへの家宅捜索(ガサ入れ)。実際は次のような状況だった。

鹿児島県警がガサ入れに来たのは4月8日。朝8時半頃、玄関のインターホンが鳴らされ、ドアを開けると「鹿児島県警です」と告げられた。「わかってますよね」とお定まりの一言を発した警察官がいたが、「わかるわけなかろう」と返し、2月に鹿児島県警本部に出向いて以来の事を思い出しながら、“上がるな”と怒鳴りつけた。

そもそも捜査の原因となった「告訴・告発事件処理簿一覧表」については、今年2月に県警本部を訪れ、公表・謝罪と引きかえに現物を提供しようと申し出た経緯がある。それを拒否しておきながら、いきなりガサ入れというのは筋が通らない。二度ほど“上がるな”と言った記憶がある。

「上がりますよ。ガサ状がでてますから」と勝手に室内に入って来る複数の警察官。室内でガサ状を読み上げようとしたので「子供じゃないんだから、見せてもらう」と閲読を求めたが、県警側はこれを無視した。やむなく左手に持っていた携帯で弁護士に連絡をとろうとした瞬間、その手を押さえられる形で強引に携帯を取り上げられた。

強く抗議したところ、「あなたの身につけているものも、押収していいことになっています」と事後通告。乱暴さに呆れる中、ガサ入れが始まった。この後、ガサ入れが終わるまでの間、本来示されるべき「差し押さえるべきもの」についての説明は一切受けていない。この捜査手法は違法ではないのか。

昼過ぎ、現場責任者の警部が「ところで昼食の時間ですが」と言う。しかし、「はい、食事にしましょう」というシチュエーションではない。結局、昼食抜きで1時過ぎまでガサ入れに立ち会うことになった。警察署内での取調べでこれをやったら、問題になるはずだ。

度々報じられているが、筆者は「捜索差押許可状」を手に取るどころか、きちんと見せられてもいない。前述したように、許可状に添付されていたはずの「差し押さえるべきもの」のリストも見ていない。県警はガサ状を「示した」と強弁しているが、どのような内容なのか知らされていないのだから、論評のしようがない。記憶に残っているのは、チラリと見えた「地方公務員法違反」と被疑者の氏名だけ。県警は、一体何を「示した」というのか?

結局、この日押収されたのはパソコン本体(*下の写真)、新・旧のスマホ、取材ノート、「告訴・告発事件処理簿一覧表」数枚のコピーなど計12点だった。

ちなみに、「告訴・告発事件処理簿一覧表」の現物は、ハンターの事務所にはなかった。事前にしかるべきところに預けていたのだが、県警は「任意で提出してもらえるか聞いてもらいたい」と言う。適当にあしらっていたが、被疑者告知を受けてから完全黙秘に転じたため、“聞くかどうかも含めて答えられない”と返事している。県警は、処理簿一覧表の現物を確認しないまま、容疑者逮捕に走ったということだ。本田尚志前生活安全部長を守秘義務違反で逮捕したケースでも、県警は内部告発文書の現物を手に入れていない。

■「刑事企画課だより」削除には不同意だった

県警がこれまでに行った会見や県議会質疑における説明で承服できないのは、ハンターへのガサ入れで押収したパソコンのデータを削除した際のことを述べたくだりだ。

福岡県警南警察署に部屋を借りてパソコンやスマホのデータを移し終えた県警は、ガサ入れ翌日の4月9日、パソコンとスマホを含む数点の押収物を還付に来た。パソコンを立ち上げるよう求められたので、つながるかどうかの確認だろうと思ったが、県警側は「この中に告訴告発事件処理簿一覧表のデータがいくつも残っていました。流出すると大変なことになるので削除しますが、よろしいですね」と言う。現物は別の場所にあるためデータは必要ない。処理簿一覧表の削除には同意した。

その後、「同意」の証拠を残すためだろう、削除する処理簿一覧表のデータを画面に出すたび、横に立たせた筆者との写真を撮影。30分以上、その作業が続いた。

この場面のことについて、県警が勝手にデータを削除したかのような一部報道があったが、処理簿一覧表については「同意」を与えている。ただし、この際、県議会答弁で県警側が述べた「データ削除は任意」だという説明は、これっぽっちも受けていない。任意であると知っていれば、当然断った。

確認を怠った自分を恥じるしかないが、筆者はパソコンにあった処理簿一覧表のデータ削除について、裁判所の許可状が出ているものとばかり思い込んでいた。県警が同意を求めたのは形だけ。有無を言わせず削除するというやり方に、許可状があると思い込んだ筆者がバカだったというしかない。

最大の問題は、警察にとって不都合な文書――特に再審請求や国賠訴訟で、警察組織にとってプラスにならない文書――の廃棄などを促した「刑事企画課だより」の画像を削除したことだ。削除対象は処理簿一覧表だけだと考えていた筆者は、「それは消してはダメだろう」と抵抗した。警察側は「いや、これは内部文書です」。筆者は「いやいや、それは誰でも見れるんじゃないか。もらうこともできるはずだ」。結局、「内部文書です」と言い張る県警側は、間髪入れず刑事企画課だよりの画像を削除してしまった。この顛末だけは、間違いなく県警の違法行為だと考えている。

そもそも、問題の「刑事企画課だより」は地方公務委員法違反事件の逮捕容疑にもなっていない。逮捕容疑の対象となっている「ブツ」は、ある個人の犯歴情報と処理簿一覧表。県警に、刑事企画課だよりを削除する権限はないはずだ。県警に対しては、改めて謝罪と原状回復を要求しておきたい。もちろん、データ削除が「任意」であることの説明を怠ったことも、謝罪するのが筋だろう。

19日に開かれた鹿児島県議会総務警察委員会での県警側答弁については、詳細を確認した上で反論を試みたい。もちろん、腐敗組織の「嘘」を暴くためだ。証明する手立ては、いくらでもある。

ニュースサイト「ハンター」 中願寺純則

 

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