大麻取締法違反の容疑で警視庁に逮捕された伊勢谷友介容疑者が代表を務める会社が、岡山県真庭市から公共事業を請け負っていることが関係者への取材でわかった。市民に「SDGs」(持続可能な開発目標)を普及・啓発する業務で、受注は18年から3年連続。今年度は7月に契約したばかりで、捜査の進展により契約が見直される可能性もある。人気俳優の逮捕が、様々な形で波紋を広げている。
■事業家として活躍
日本中が驚いた人気俳優の逮捕。芸能人の薬物事件が頻発しており、“またか”といった感じだが、伊勢谷容疑者の活躍を支えてきたファンの落胆は計り知れない。
ただ、伊勢谷容疑者の場合、他の芸能人とは少し状況が違う。俳優業に加え、事業家として別の顔を持つからだ。彼は、社会問題の解決とビジネスを両立させる、いわゆる「ソーシャルビジネス」を全国で展開する企業「株式会社リバースプロジェクト」の代表取締役でもある。
同社は2009年に設立され、「人類が地球に生き残るための活動」を目的とし、衣食住における社会問題の解決に取り組んできた。
再資源化を可能とする素材を元に、企業イメージに沿った制服をプロデュースする「全日本制服委員会」で大手企業の雇用制服を手掛けたり、大手家具メーカーとタイアップして、買い取った中古家具に所属デザイナーが付加価値を加え再商品化するなど活動の幅は広い。
町おこしや地域再生にも取り組み、全国各地を講演して回るほか、昨年4月には東京に開設された高校「Loochs(ルークス)高等学院」の発起人となり学院長を務めている。教育者としての顔も持っていたということだ。
リバースプロジェクト設立から10年。これまでの実績を高く評価する自治体が出てくるのは当然だ。同社は、2018年から公共事業にも参入するようになる。
■困惑する真庭市
「SDGs」という言葉が流行りだす以前から、社会問題の解決を目指し動き出していたため、岡山県真庭市の 「SDGs 未来杜市真庭普及啓発(未来を担う人づくり)業務委託」のプロポーザル(企画競争)に参加。見事勝ち抜き、受託したのを皮切りに3年続けて同事業を受託している。市によると、イベントやワークショップの開催を通じて、主に若者にSDGsの考え方を知ってもらう人材育成業務で、年契約高は約500万円だという。
伊勢谷容疑者の逮捕を受け困惑している模様で、今後の対応について市の担当者は「(今年度の)契約はしたが、企画調整中でまだ業務が始まっていない。報道で事件を知ったばかりで、今後については現段階では何もコメントできない」と話している。
真庭市の他にも、伊勢谷容疑者の影響力に注目し、地域再生に力を貸してほしいと手を挙げる自治体や首長は少なくなかったはずだ。今年4月に全国最年少女性市長となった内藤佐和子市長もその一人で、選挙前の立候補予定者公開討論会では、リバースプロジェクトの名前を挙げ同社とのコラボで地域を活性化させたいと力説していたことが分かっている。
数々の有名作品に出演する人気俳優でありながら、未来の教育や環境までも見据えた事業家でもあった伊勢谷容疑者――。ファンはもちろん、事業関係者にも大きな落胆と迷惑を与えることが容易に想像できたはずだが……。
(東城洋平)