任期満了に伴って行われた鹿児島県知事選挙は、新人で元九州経済産業局長の塩田康一氏(54)が、現職で自民・公明推薦の三反園訓氏(62)を破って初当選を決めた。投開票が行われた12日の夜、各陣営の選挙事務所を駆けずり回ったハンターの記者が、記録した現場の様子を振り返った。
■塩田康一候補の事務所
午後8時にKYT(鹿児島読売テレビ)が先行して当確を報じたため、8時過ぎには支持者と各社報道陣が集結。下の写真は午後9時ごろの様子。
事務所に集まった人の中には、県内有力企業の役員クラスの姿がちらほら。取材した時間帯には国会議員や市議、県議などの議員の姿は見当たらなかった。
離れた位置から見た塩田康一選挙事務所。通行人の妨げにならないように、事務所スタッフが歩道整理に声をからす。
周辺に散らばった報道各社の記者たちは、NHKの当確報道を確認するため、スマホと睨めっこしていた。
NHKは民放の当確で万歳三唱が起きても撮影せず、自社で当確を打ってから動き出す。そのせいで2度の万歳を余儀なくされるケースが多く、選挙慣れしている陣営はNHKの報道を待つことが多い。この日も、塩田陣営はNHKの当確をじっと待っていた。
テレビやネットの情報で開票速報を見守る中、一部民放では塩田氏に当確を打ったものの鹿児島市以外の開票が終わった段階では三反園氏が約2万票のリード。塩田氏の選挙事務所内では当確を疑う声さえ出始めていた。
しかし、午後10時30分ごろ、ようやくNHKが当確を報じると一気に沸き上がり、拍手と笑顔が。泣き崩れて喜ぶ選挙事務所のスタッフの前に午後10時50分、塩田氏が姿を現した。
報道陣に囲まれながら、笑顔を見せて登場する塩田康一氏(中央やや左の青いマスク)。
そのまま用意された壇上に真剣な顔で上がって挨拶を済まし、アナウンサーの取材に答えていた。
■三反園訓候補の事務所
天文館に位置する鹿児島市大黒町の三反園訓候補の選挙事務所。午後10時過ぎの様子。
出口調査で接戦を報じられていたため、多くの報道陣が集まっていた。投票が締め切られる午後8時頃まで多くの支持者が集まっていたが、10時には用意された席に空席が目立つ状況となっていた。
重い雰囲気に包まれる三反園務所――。壁を覆い尽くした大物議員の「祈 必勝」や業界団体からの推薦状が、かえって重苦しい雰囲気を演出していた。
■伊藤祐一郎候補の事務所
午後9時過ぎごろの事務所前の様子。この時間帯には3位ということが分かっていたため、集まった支持者は言葉少な。取材したある支持者は「実績や実力は伊藤さんがナンバーワン。しかし、今の県民は新しい時代に期待しているということでしょう」と肩を落とした。
選挙事務所の1階は取材のスペース。敗戦の弁を取材するための準備が進む。
マイクの前に立った伊藤氏は、「不徳の致すところ」と敗北を認め、支持者や支援をした人たちへの感謝を伝えた。さばさばした表情から、むしろ爽やかささえ感じる伊藤氏の態度だった。
■青木隆子候補の事務所
大通りから小さな筋に入ってすぐに位置する青木隆子候補者の選挙事務所。事務所の外はほとんど人がいない状態で、外からでも落選のムードが伝わっていた。
事務所内は鹿児島での知名度がある候補者だけに報道陣も数社。しかし、支援者の話声はほとんどなく、報道陣が塩田陣営や三反園陣営の様子を気にする会話が室内に響くほどだった。
■横山ふみ子候補の事務所
共産党が支援し、反原発派が擁立した横山ふみ子候補者。敗戦が決定的になると、事務所内では選挙戦を振り返りながら一番の目的である脱原発に向けての意思疎通を行っていた。戦いきった充実感からか、どこか明るく前向きな雰囲気を伺うことができた。
■有川博幸候補の事務所
有川候補の選挙事務所は、三反園氏の事務所の目と鼻の先。報道陣で賑わう三反園陣営に比べ、静かな雰囲気の中、若い支持者が目立った。大学教授を務めていただけあって選挙演説への評価が高かったものの、全体的に今一つだった印象。敗戦が決定的になると、有川候補者がみずから支持者一人ひとりに「私の力不足。ごめんなさい。」と悲しそうな笑顔で手を握っていた。
昨年12月に出馬を表明し、最も長く選挙戦を戦った有川氏。健闘を称えたい。